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2009年6月

6月30日の世界の昔話 バラ色の泉の水

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 6月の世界昔話

6月30日の世界の昔話

バラ色の泉の水

バラ色の泉の水
フランスの昔話 → フランスの国情報

 むかしむかし、コルシカ島(→イタリア半島の西方にあるフランス領の島で、ナポレオンの出生地として有名)に、王さまのようなくらしをしている父親と三人の息子がいました。
 りっぱなお城に住み、大変なお金持ちで、めしつかいもたくさんいました。
 三人の息子は元気がよく、父親思いでしたので、お城はいつも笑い声がたえず、島の人たちはみんなとてもうらやましがっていました。
 けれどもある日のこと、突然、父親が目を悪くして、何も見えなくなってしまったのです。
 息子たちはあわてて島中のお医者さまをよんで見てもらいましたが、どのお医者さまにも原因がわからず、なおすことができません。
 そこで、島で一番えらいと言われている博士(はかせ)をよびました。
 博士は父親の目を見て、しずかに言いました。
「バラ色の泉の水があれば、すぐになおります」
 息子たちはすぐにお城を出て、バラ色の泉を探す旅に出ました。
 三人はやがて、三本に分かれている道につきました。
 一番上の兄さんは、一番広い道を進んで行きました。
 すると、とちゅうに子どもをつれた、まずしいみなりの女の人が立っていて、声をかけてきたのです。
「どこへ行くのですか?」
 一番上の兄さんは、女の人の姿を一目見ると、
「お前になんぞに、答える必要はない」
と、いい、先へ進んで行きました。
 広い道は、バラ色の泉に続いていました。
 一番上の兄さんは、おどりあがって喜びました。
 そして、ビンにバラ色の泉の水をくもうとしたそのとき、大きなヘビとライオンが草むらから飛び出してきて、一番上の兄さんを食べてしまったのです。
 二番目の兄さんは、細い道を行きました。
 途中でやっぱり、子どもを連れた女の人に声をかけられましたが、二番目の兄さんは返事もせずに通りすぎました。
 細い道も、バラ色の泉に続いていました。
 ですが泉についたとたん、二番目の兄さんも大きなヘビとライオンに食べられてしまいました。
 三番目の息子は、グネグネとまがりくねった道を歩いて行きました。
 この道にも、子どもを連れた女の人が立っていて、声をかけてきました。
「どこへ行くんですか?」
 三番目の息子は立ちどまって、女の人に話しました。
「はい、目を悪くした父のために、バラ色の泉を探しています。バラ色の泉の水を目につけるとなおるそうなのです」
 女の人は、ほほえんでうなずきました。
 そして、ロウを三番目の息子の手ににぎらせて、やさしく言ったのです。
「気をつけてお行きなさい。バラ色の泉についたら、いろいろな化物があなたをおそうでしょう。でもそのときには、このロウを少しずつちぎって投げるのです。きっとあなたは助かりますから。それから、目をなおすだけなら、バラ色の泉の水を、ほんの一滴つけてあげれば良いでしょう。バラ色の泉の水は、一滴でも死んだ人を生き返らせるくらい力のある生命の水なのですよ」
「よくわかりました。ありがとうございます」
 三番目の息子はていねいにお礼を言って、まがりくねった道をいそぎました。
 まがりくねった道も、バラ色の泉に続いていました。
 三番目の息子は喜び、さっそくビンに水をいれました。
 けれど、ビンにふたをしてふりむいたそのとき、大きなヘビやライオン、ツノのある化物、悪魔(あくま)などが次々とおそいかかってきたのです。
 三番目の息子はポケットからロウを取り出し、ちぎっては化物に投げつけました。
 化物はロウにさわったとたん、
「フギャーー!」
と、さけんで消えてしまったのです。
 三番目の息子は、こうしてバラ色の泉の水のはいったビンをかかえてお城にもどりました。
「おとうさま、ただいま」
 三番目の息子が父親の寝室(しんしつ)にはいると、ベッドのまわりに集まっていためしつかいたちが、わあっと泣き出しました。
 父親は息子たちの帰りを待ちながら、たった今、死んでしまったのです。
 三番目の息子は父親のそばへ行き、バラ色の泉の水をビンから一滴、手の平にとると、そっと父親の目につけてやりました。
「う、・・・ううーん」
 死んだはずの父親が、小さな声を出して、ゆっくりと起きあがったのです。
「ご主人さまが生き返った!」
 めしつかいたちのかなしみの涙は、たちまち喜びの涙になりました。
 三番目の息子は、父親にこれまでのことを話しました。
 目が見えるようになった父親は、まぶしそうに三番目の息子を見つめて、うなずきながら言いました。
「ありがとう。ビンに残ったバラ色の泉の水で、島の人たちを助けてあげなさい」
 三番目の息子は、それから島の人がどんなにひどい病気にかかっても、このバラ色の泉の水で助けてあげました。
 しかし、三番目の息子がおじいさんになり、重い病気になったときには、もう、バラ色の泉の水は残っていませんでした。
 でも、三番目の息子は、
「とても幸せな一生だった」
と、しずかに言うと、天国へ旅だったのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → みその日
きょうの誕生花 → びようやなぎ(ヒペリカム)
きょうの誕生日 → 1975年 ラルフ・シューマッハー(F1レーサー)


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6月29日の世界の昔話 白いウマ

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6月29日の世界の昔話

白いウマ

白いウマ
ハンガリーの昔話 → ハンガリーの国情報

 むかしむかし、あるところに、たいへん貧乏(びんぼう)な人がすんでいました。
 もっているものといえば、たった一頭の白いウマだけです。
 毎日、そのウマを粉ひき小屋ではたらかせて、やっと、くらしをたてていました。
 白いウマは、くる日もくる日も、おもい臼(うす)をまわして、粉をひきつづけました。
 ウマはおとなしく、せっせとはたらきつづけましたが、そのうちに、しごとがいやになりました。
 それというのも、よその家ではたらいているウマは、みんな二頭でくみになって臼をひいているのに、じぶんだけはいつも一人ではたらいているのです。
 ある日、白いウマは主人にききました。
「ご主人さま。わけをおきかせください。よそのうちのウマはみんな二頭づれなのに、どうしてわたしにはなかまがいないのですか。わたしはもう、ヘトヘトにつかれてしまいました」
 すると、主人はこたえました。
「そのわけはかんたんだ。わしが貧乏で、おまえのほかにはウマどころか、イヌ一ぴき、いや、ムシ一ぴきもっていないからだよ」
 すると、白いウマはいいました。
「それでは、しばらくわたしにひまをくださいませんか。じぶんで仲間をみつけてまいります」
 こうして白いウマは、仲間をさがす旅にでました。
 なん日もかかって歩いていくと、キツネの穴がありました。
 白いウマは、いいことを思いつきました、
(そうだ。この穴の入り口にねころんで、死んだふりをしてみよう)
 その穴には、母ギツネが三びきの子ギツネとすんでいました。
 いちばん小さい子ギツネが外へ出ようとしたら、なにか白いものが入り口をふさいでいます。
 子ギツネは、それを雪がふっているのだと思いこんで、母ギツネのところへしらせにいきました。
「たいへんだよ、お母さん。外に出られなくなってしまったよ。大雪がふっているんだ」
「大雪ですって! いまは夏じゃないの」
 母ギツネは、ビックリしました。
 そこで、まん中の子ギツネをよんでいいました。
「おまえ、見にいってごらん。おまえはにいさんなんだから、どういうことなのか、よくしらべてくるのですよ」
 まん中の子ギツネが、見にいきました。
 弟のいうとおり、入り口は白い大きなものでふさがっていました。
 まん中の子ギツネは、母ギツネのところへかえっていいました。
「お母さん、ほんとに出られないよ。やっぱり大雪がふっていた」
「そんなことがありますか。夏だっていうのに!」
 母ギツネは、いちばん上の子ギツネにいいつけました。
「こんどは、おまえがいっておいで。おまえは一番年上なんだし、弟たちより世の中を知っているんだから、まちがいのないようによくしらべてくるのですよ」
 一番上の子ギツネが見にいきました。
 けれどもこたえは、やっぱりおなじでした。
「お母さん。やっぱり雪がふっているんだよ。白いものしか見えないもの」
「ほんとうに、おまえたちはしょうがない。まっておいで。お母さんが見てくるから」
 母ギツネは、穴の入り口へいってみました。
 入り口はまっ白でしたが、その白くて大きなものが大雪ではなくて白いウマだということが、母ギツネにはすぐにわかりました。
 なんとかしてウマをどけなくては、じゃまでこまります。
 母ギツネは、子ギツネたちをよびました。
「おまえたち、みんな出ておいで。さあ、てつだっておくれ」
 それから親子四ひきがかりで、力いっぱいおしたりひっぱったりしましたが、白いウマをどうしてもうごかすことができません。
 母ギツネはしばらくかんがえていましたが、いいことを思いつきました。
 そこで母ギツネは家のうら口から抜け出すと、オオカミのところへでかけていきました。
「オオカミさん、オオカミさん。すばらしいえものを手にいれましたよ。うちの穴までひっぱってきたんですけど、あんまり大きすぎて、中に入りませんの。どうでしょう。おたくの穴までいっしょにひっぱってきませんか。そうしてごちそうを、なかよく半分にわけましょう」
 オオカミは、思いがけないごちそうにありつけるときいて、たいそう喜びました。
 そして、そっと心の中でかんがえました。
(おれの穴にはこびこんだら、もうこっちのものだ。キツネになんかわけてやるものか)
 白いウマはあいかわらず死んだふりをして、たおれていました。
 大きな白いウマを見て、オオカミはすっかりかんがえこみました。
「キツネさん。いったいどうやったら、こいつをわたしの穴まではこべるだろう?」
 母ギツネは、こたえました。
「なんでもありませんわ。わたしはウマのしっぽとじぶんのしっぽをむすびあわせて、ひっぱってきたのですよ。そりゃ、らくなものでしたわ。こんどは、あなたにひっぱっていただきましょう。しっぽをむすびますからね。わけなくはこべてしまいますよ」
「そりゃ、うまいやりかただ。さあ、むすんでくれ」
 早くごちそうにありつきたくて、オオカミはウズウズしながらキツネにいいました。
 キツネはオオカミのしっぽを白いウマのしっぽに、それはそれはきつくむすびあわせました。
「さあ、オオカミさん。ひっぱってごらんなさい」
 力いっぱい、オオカミはひっぱりました。
 でも、ウマはびくともしません。
 しっぽがちぎれそうになるほどひっぱりましたが、それでもうごきません。
 オオカミは、ありったけの力をこめてひっぱろうとしました。
 そのとき、白いウマはいきなりはねおきて、そしてものすごいいきおいで走りだしました。
 白いウマは、しっぽのさきにオオカミをひきずったまま、ただのひとやすみもせず、走って走って走りつづけて、貧乏な主人のところへかえりつきました。
「ご主人さま、ごらんください。このとおり仲間をつれてまいりました」
 喜んだ主人は、すぐにオオカミを鉄砲(てっぽう)でうちころしました。
 そしてオオカミの皮を売って、たくさんのお金をもうけました。
 そのお金で、もう一頭のウマを買いました。
 こうして白いウマは、もう一人で重い臼をまわさなくてもよくなったのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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きょうの誕生日 → 1959年 引田天功(2代目・奇術師)

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6月28日の世界の昔話 ビンの中のお化け

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6月28日の世界の昔話

ビンの中のお化け

ビンの中のお化け
イギリスの昔話 → イギリスの国情報

 むかしむかし、ある町に、どこか暗い感じのする古い大きな家がありました。
 その家には、人間はだれもすんでいません。
 でも、お化けが一人、すんでいたのです。
「だれか、お化けを退治してくれる者はいないかね。お礼に、お金はうんとはずむのだが」
と、家主は、家のまえにはり紙をしたり、たのんだりしました。
 けれど、どんな力じまんも、本当にお化けを見ると体の力がぬけて、青い顔をしてにげてしまうのです。
 さて、この町にトミーという、かしこくて勇気のある若者がすんでいました。
 家主はトミーのうわさを聞いて、たのみにいきました。
「トミーさん、あなたのちえで、あの家のお化けをやっつけてください」
「いいですとも」
 トミーは、あっさりとひきうけました。
 あまりにもあっさりとひきうけたので、家主は心配になりました。
「本当に、だいじょうぶですか?」
「ええ、そのかわり、お酒とコップとあきビンを用意してください」
 その晩トミーは、お酒をチビチビ飲みながら、お化けの出るのをまちました。
 家の中はまっ暗で、月あかりがほんの少しあるだけです。
 カーン、カーン。
 時計が、十二時をうちました。
 するとどこからか、ヒューッと不気味な音がして、鼻のないまっ白の顔のおそろしいお化けがあらわれたのです。
「やあ、こんばんは」
と、トミーはいいました。
 するとお化けは、
「へんだな? たいていのやつはおれを見ると、あわててにげていってしまうのに」
「へんなのはきみじゃないか。この家は、まどもとびらもぜんぶカギがかけてあるんだぜ。それなのにどこから入ったんだい?」
「ウヒヒ、教えてやろうか?」
 お化けは、気味の悪い顔でわらいました。
「うん。そしたらお酒を飲ませてやるよ」
「ほんとうに、こわくないのかい?」
「ちっとも」
「本当かい? うれしいな。じつはおれは、カギあなから入ってきたんだよ」
「カギ穴だって? まさか、いくらお化けだって、あんなに小さなところから入ってこられるわけないじゃないか」
 トミーがわらうと、お化けはくやしそうにいいました。
「うそじゃない。本当だ!」
「ぜったいだね?」
「ぜったいだ!」
「じゃあ、この小さいビンの中にも入れるかい?」
 トミーは、テーブルの上のあきビンをさしていいました。
「入れるとも!」
「本当かな? お化けはうそつきだっていうからな」
「じゃあ、見ていろ!」
 するとお化けは、シュルシュルと小さくなると、ビンの中に入ってしまいました。
「いまだ!」
 トミーは急いでビンのフタをしめると、遠くヘほうりなげてしまいました。
 それっきりこの家には、お化けは出なくなりました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ニワトリの日
きょうの誕生花 → ざくろ
きょうの誕生日 → 1971年 藤原紀香(女優)


きょうの日本昔話 → イモころがし
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6月27日の世界の昔話 世界のはじまり

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6月27日の世界の昔話

世界のはじまり

世界のはじまり
チリの昔話 → チリの国情報

 むかしむかし、この世の中には山もなく、海もなく、人間も、鳥も、草も、なかったころのお話です。
 天には、かぞえきれないほどたくさんの神さまが、住んでいました。
 その神さまたちの中に、たった一人、ほかの神さまの何十ばいも、何百ばい、何千ばいも、何万ばいも大きなからだの、大神さまがいました。
 大神さまは、からだが大きいばかりでなく、ほかの神さまの何万ばいも、つよい力をもっていました。
 神さまたちがわるいことをしたり、大神さまのいうことを聞かなかったりすると、大神さまは、なん百人もの神さまをひとつかみにして、やっつけてしまうのです。
 大神さまにかなうものは、一人もいません。
 神さまたちは、いつも大神さまににらみつけられて、働かなくてはならなかったのです。
 そこである日、大神さまが雲(くも)をまくらにして昼寝をしているあいだに、神さまたちが集まって、そうだんをはじめました。
 一人の神さまが、立ちあがって、
「しょくん、われわれは、朝から晩まで大神のいうとおりに働いていなくてはならない。われわれには、ゆっくり遊んでいるひまもない。これでは、きゅうくつでたまらないではないか。どうだ、われわれが力をあわせれば、あの大きな大きな大神をやっつけることもできるだろう。大神さえやっつければ、われわれは、だれからもしかられずに遊んでいられるのだ。さあ、大神をやっつけようではないか」
と、いいました。
「そうだ、そうだ!」
「大神をやっつけよう!」
 おおぜいの神さまが、さんせいしました。
 けれども、中には、
「ぼくはいやだ。はんたいだ」
と、いう神さまもいました。
「おい、どうしてだ? きみは大神におさえつけられているほうがいいのか?」
「そうじゃない。大神さまの大きさと力のつよさを考えてみたまえ。ぼくたちがどんなにおおぜい集まっても、ぜったいにかなわないよ。大神さまは、どんなことだってできるのだから。大神さまとけんかしたら、どんなめにあうかわからないぞ。いまのままが、いちばんいいと思うよ」
 すると、あっちからもこっちからも、
「なるほど、そうだなあ。やっぱり戦うのはむりだ。ぼくはいやだ」
「ぼくもいやだ。このままでいいよ」
と、いう声が聞こえました。
「なんだいくじなし。大神がこわいのか。大神をやっつけよう」
「だめだ。大神さまに手をだすな!」
「やっつけるんだ!」
「おい、やめろ!」
 神さまたちはいつのまにか二つにわかれて、とっくみあいのけんかをはじめました。
 そのさわぎで、とうとう大神さまが、おきてしまいました。
 大神さまは、神さまたちのあらそいをジッと見まもりました。
 そんなこととはすこしも知らずに、神さまたちはむちゅうになって、けんかをつづけました。
 どうやら、「大神をやっつけろ!」と、いう神さまたちのほうがつよいようで、「大神さまに、手をだすな!」と、いっている神さまたちが、負けそうになりました。
 そこで大神さまは、のっそり立ちあがって、ドシン! ドシン! と、足をふみならしました。
 すると雲の下で、カミナリがゴロゴロなり、イナズマがピカピカと光りました。
「しようのない、やつらだな」
と、いいながら大神さまは、
「大神をやっつけろ!」
と、いっていた神さまたちを、ひとまとめにしてつかみました。
「ろくでもないことを考えるやつらは、こうしてくれよう」
と、いって、ペッペッと、つばをはきかけました。
 すると、つかまえられた神さまたちは、大神さまの手の中で、たちまちひとかたまりの石になってしまいました。
 大神さまは、その石を思いきりけとばしました。
 石はビューンと、とんで、空をつきやぶって地上におちました。
 おちた石は、こなごなにとびちって山になりました。
 ところが、山になった石のかけらの中のほうには、まだ生きている神さまがいました。
「おい、たすけてくれ。こんなところにとじこめたりして、まったくひどい大神さまだ!」
と、いって、神さまたちはまっかになっておこりました。
 そのいきおいで、山の中はにえくりかえりました。
 ゴーゴー、うなりをたてて、煙や、灰や、岩をはきだして、火山となりました。
 火山の中で、神さまたちはなおも、
「ああ、きゅうくつだ、きゅうくつだ」
と、わめいてもがきました。
 そのひょうしに、火山からまっ赤な火ばしらがあがり、それといっしょに神さまたちは、火山からふきあげられてしまいました。
 神さまたちは、高く高くまいあがって、空にとどきました。
 大神さまは、すぐに神さまを空にぬいつけて、星にしてしまいました。
 こうなっては、どんなにあばれても、空からはなれることはできません。
 神さまたちは、
「こんなことになるとわかっていたら、大神さまをやっつけようとするんじゃなかった」
と、いって、なみだをポロポロこぼしました。
 そのなみだがたまって、海ができました。
 さからう神さまたちをやっつけた大神さまは、一番下の息子をつかまえて、フッと息をかけました。
 すると、人間の男ができあがりました。
「ほら、地上を見てごらん。おまえはあそこでくらすんだよ」
 大神さまの息子は、ヒラヒラと地上におりていきました。
「一人では、かわいそうですわ」
と、大神さまのおくさんがいいました。
「心配しなくていい。もう一人つくってやるよ」
と、いって、大神さまはそばにいた、よい神さまをつまみあげて、息をふきかけました。
 こうして、女の人ができあがりました。
「おまえは男の人をさがして、二人でなかよくくらすんだよ」
 地上についた女の人は、ゴツゴツした岩だらけの地面を歩いて男の人をさがしました。
「おお、かわいそうに。足のうらが、さぞいたかろう」
 大神さまはこういって、地面に草をはやし、花のじゅうたんをひろげてやりました。
 女の人はたいそう喜んで、花をつむと、空中に花びらをまきちらしました。
 すると花びらは、美しい鳥やチョウや、いろいろなムシになって、女の人のまわりをとびまわりました。
 女の人は、ズンズンと歩いていきました。
 そのうちに、おなかがすいてきました。
「なにか、たべたいわ」
と、いって、女の人が立ちどまると、目のまえの草がグングンとのびて、大きな木になりました。
 木には、おいしそうな実がなっています。
 女の人は、それをとってたべました。
 元気がでると、また旅をつづけました。
 そしてようやく、男の人を見つけました。
 二人はひとめ見ただけで、好きになりました。
 そして手をとりあって、なかよくくらすようになりました。
 しばらくすると、
「あの二人は、どうしたろう」
と、いって、大神さまは天に穴をあけて、そうっと大きな頭をのぞかせました。
 大神さまの頭はキラキラ光って、地上をてらしました。
「まあ、ごらんなさい、あの光を」
と、いって、男の人と女の人は空を見あげました。
 二人はキラキラ光る丸いものに、太陽という名をつけました。
 大神さまのおくさんも、地上のことが知りたくて、たまらなくなりました。
 そこで、大神さまがのぞいていないときに、そっと穴から顔をだして地上を見ました。
「あのやさしい光を、見てごらん」
 男の人と女の人は、空を見あげていいました。
 そのやわらかい光に、月という名をつけました。
 こうして、大神さまのつくった二人の人間は、やがて子どもをうみ、太陽と月に見まもられて、たのしくくらしはじめたのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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きょうの誕生花 → びわ
きょうの誕生日 → 1980年 優香(タレント)


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6月26日の世界の昔話 おやゆび小僧

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6月26日の世界の昔話

おやゆび小僧

おやゆび小僧
グリム童話 →グリム童話の詳細

 むかしむかし、貧乏(びんぼう)な百姓(ひゃくしょう)がいました。
 ある晩のこと、百姓はおかみさんにいいました。
「わしらみたいに、ひとりも子どもがないのは、さびしいものだね。子どものいるうちじゃ、ワイワイとにぎやかなのに、うちはこんなにもひっそりしているんだもの」
「そうですね」
 おかみさんは、ため息をつきました。
「たったひとりでいいから、そして、いくら小さくっても、たとえ親指ぐらいでもかまわないから、子どもがいればいいのにね」
 そういったとき、どこからか星のついたつえを持った妖精(ようせい)があらわれてきて、二人にいいました。
「そのねがい、かなえてあげましょう」
 するとまもなく、おかみさんのおなかが少し大きくなって、子どもがひとり生まれました。
 とても元気で、かわいい子どもでしたが、ただ、背たけが親指ぐらいしかありません。
 けれど夫婦は妖精に、心から感謝しました。
 そして、その子を『おやゆび小僧』と名づけたのです。
 夫婦は、おいしいものをかかさず食べさせましたが、子どもはすこしも大きくならず、いつまでたっても生まれたときとおなじ大きさです。
 けれども、とてもかしこい子どもでした。
 ある日のこと、百姓が森へ木を切りにいくしたくをして、ふと、ひとりごとをいいました。
「だれか、あとから車をもってきてくれるものがあるといいんだがなあ」
 すると、おやゆび小僧がいいました。
「お父さん、車なら、ぼくがもっていってあげるよ」
 これをきくと、百姓はわらっていいました。
「どうして、そんなことができるんだね? おまえのようなチビじゃ、ウマのたづなもひけやしないよ」
「だいじょうぶだよ。お母さんがウマさえつないでくれれば、ぼくはウマの耳のなかに入って、道をおしえてやるよ」
「じゃ、ひとつやってみるかな」
 時間がくると、お母さんがウマを車につけて、おやゆび小僧をウマの耳に入れました。
 すると小僧は、ウマのいく道をどなりました。
「ほい! そら右だ! そら左だ!」
 すると、まるで名人がたづなをとっているように、ウマはすこしも道をまちがわずに森へむかいました。
 そこへ、よその国の人がふたりでやってきました。
 ひとりがいいました。
「ありゃ、なんだい? 車ひきがウマにどなっている声はきこえるけれど、すがたが見えないぞ」
 すると、もうひとりがいいました。
「こいつは、ただごとじゃないぜ。あの車についていって、どこでとまるか見てやろう」
 車はズンズンと森のなかへ入っていって、木が切りたおされているところへ、ちゃんとつきました。
 おやゆび小僧はお父さんのすがたを見つけると、よびかけました。
「お父さん、どうです。ちょんと車をもってきたよ。さあ、ぼくをおろして」
 お父さんは左の手でウマをおさえ、右の手でウマの耳から息子をだしてやりました。
 それを見ていたふたりの旅人は、あきれてものがいえません。
 そのうち、ひとりの男が、もうひとりの男にいいました。
「おい、あのチビを大きな町につれていって、金をとって見せものにしたらどうだろう。きっともうかるぞ」
「そうだな、あいつを買いに行こう」
 ふたりは、父親のところへいっていいました。
「その小さな人を売ってくれないか。わたしたちのところで、しあわせにしてあげるよ」
「とんでもない。これは、わしのだいじな子だ。世界じゅうの金をくれたって、売ることはできないよ」
 ところがおやゆび小僧は、お父さんの肩の上に立って、耳のなかにささやきました。
「お父さん、ぼくをこの人たちにうってください」
「しかし・・・」
「大丈夫。きっとまた、もどってきますよ」
 そこでお父さんは、大金と引きかえに、おやゆび小僧をふたりの男にわたしました。
「おまえは、どこにすわりたい?」
と、ふたりがたずねました。
「ああ、おじさんのぼうしのふちにのせておくれよ。そこなら、あっちこっち散歩ができるし、けしきも見られるもの。おっこちやしないよ」
 ふたりは、おやゆび小僧のいうとおりにしてやりました。
 こうして歩いていくうちに、夕方になりました。
 すると、小僧がいいました。
「ちょっとおろしておくれよ。ウンチがしたいから」
「いいから上でしな。鳥なんかも、よくその上におとすもんだ」
「だめだよ、そんなぎょうぎのわるいこと。さあ、はやくおろしておくれよ」
 そこで男は、小僧を道ばたの畑の上においてやりました。
 すると小僧は、しばらく土のかたまりのあいだを、あちこちとんだり、はいまわったりしてしましたが、そのうち野ネズミの穴を見つけて、いきなりそのなかにもぐりこんでしまいました。
「ごきげんよう、おじさんたち、ぼくにはかまわないで、うちへおかえんなさい」
 ふたりはかけよって、ネズミの穴にステッキをつっこんでみましたが、おやゆび小僧はドンドンと、おくへ入っていくし、そのうちあたりはくらくなるしで、ふたりの男はプンプンおこりながら帰ってしまいました。
 おやゆび小僧は、ふたりがいってしまうのを見届けると、地面の下からはいだしてきました。
「まっくらな畑を歩くのはあぶないな」
 おやゆび小僧は、カタツムリのカラをみつけました。
「ありがたいぞ。このなかで夜あかしすりゃ、あんしんだ」
 こういって、そのなかにもぐりこみました。
 それからほどなく、小僧がねようとすると、ふたりのドロボウがやってきました。
 そのうちのひとりが、こんなことをいいます。
「あの金持ちの坊さんのところから、金や銀をとってくる方法はないだろうか」
「ぼくがおしえてやろうか?」
と、おやゆび小僧がいいました。
「ありゃ、なんだ? だれかの声がしたぞ」
 ドロボウのひとりが、ビックリしていいました。
 おやゆび小僧は、またいいました。
「ぼくをつれておいでよ。そうしたら、手つだってあげるよ」
「? ・・・いったい、どこにいるんだい?」
「地面をさがして、声のするところに気をつけてごらんよ」
 こういわれて、ドロボウたちは、やっと小僧を見つけました。
「おい、チビすけ、どうやっておれたちの手つだいをするんだ?」
「いいかい、ぼくが坊さんのへやのなかに入りこんで、おじさんたちのほしいものを、もってきてあげるのさ」
「ようし、おまえの手なみをはいけんするとしよう」
 こうして三人は、坊さんの家へやってきました。
 おやゆび小僧は、へやのなかに入り込むと、すぐさま力いっぱいにどなりました。
「ここにあるもの! みんなほしいのかい!」
 ドロボウたちは、ビックリしていいました。
「たのむ、もっと小さな声にしてくれ。うちの人が目をさますじゃないか」
 けれど、おやゆび小僧はドロボウのいうことがわからなかったようなふりをして、またもやどなりました。
「なにがほしいのさ! ここにあるもの! みんなほしいのかい!」
 そのとき、となりのへやでねていた料理番の女が、その声に目を覚ましました。
 ドロボウたちは、すこしにげだしましたが、たちどまると、こう考えました。
(あのチビすけめ、おれたちをからかっているんだ)
 そこでふたりはもどってきて、おやゆび小僧にささやきました。
「なんでもいい。なにかもちだしてきてくれ」
 するとおやゆび小僧は、またしても、だせるだけの大声でどなりました。
「いいよ! なんでもやるよ! 手をなかへつっこんでおくれよ!」
 これをきいた料理番の女は、ベッドからとびだして、ころぶように部屋へ入ってきました。
「まずい、にげろ!」
 ドロボウたちは、にげだしました。
 部屋に入った女は、なんにも見えないので、あかりをつけにいきました。
 女があかりをもってくると、おやゆび小僧は見つからないように部屋をとびだして、納屋(なや→物置)のなかにかくれました。
 女は、すみからすみまでさがしましたが、なにも見つからず、またベッドにもどりました。
 おやゆび小僧は、ほし草のなかをあっちこっちはいまわって、今日の寝場所を見つけました。
 ここで夜のあけるまでやすんで、それから両親(りょうしん)のところへかえるつもりでした。
 ところが、それがとんだことになりました。
 夜がやっとあけるかあけないうちに、女がウシにえさをやりにきたのです。
 まずはじめにやってきたのは、納屋でした。
 そして、ほし草をひとかかえほどつかみました。
 ところがそれは、おやゆび小僧のねていたほし草だったのです。
 おやゆび小僧はグッスリねていたので、なにも知りません。
 目がさめたのは、なんとウシのお腹のなかだったのです。
 おやゆび小僧は、すぐに、じぶんがどんなところにいるのか気がつきました。
「このへやは、まどをつけることをわすれたな。お日さまもさしこまないし、あかりもつけてくれない。と、じょうだんをいっている場合じゃないな」
 おやゆび小僧は、ありったけの声をだしてさけびました。
「もう、えさはたくさんだよ! これ以上食べたら、ぼくはおしつぶされてしまうよ!」
 その声を聞いた女は、あわてて主人のところへとんでいきました。
「たいへんです、ご主人さま、ウシが口をききました」
「なんだと? おまえは、気でもちがったのか?」
 坊さんはこういいましたが、ともかくウシ小屋へいってみました。
 坊さんが小屋へ足をふみいれたとたんに、おやゆび小僧が、またどなりました。
「もう、えさはたくさんだよ。あたらしいえさはたくさんだよ」
 これには、さすがの坊さんもビックリ。
 そしてこれは、悪魔(あくま)がウシのからだにのりうつったのだと思って、ウシを殺すようにいいつけました。
 そこでウシは殺され、おやゆび小僧のかくれていた胃ぶくろは、すてられました。
 おやゆび小僧が、やっと外へ出ようとしたとたん、またまた大変なことになってしまいました。
 おなかのすいているオオカミがかけてきて、おやゆび小僧の入っていたウシの胃ぶくろを食べてしまったのです。
「ありゃあ、またお腹の中に入ってしまった。でも、オオカミはウシよりはかしこいはず、話がつうじるかもしれないぞ」
 おやゆび小僧は、おなかのなかからオオカミによびかけました。
「オオカミくん。すてきなごちそうがあるところを知っているんだけど」
「どこにあるんだい?」
「案内してあげるよ。うちのなかへは、ドブから入りこまなければならないんだけれど、いったんなかに入ったら、おかしでも、べーコンでも、ソーセージでも、なんでも食べたいほうだいだよ」
 こういって、おやゆび小僧はじぶんのうちに案内しました。
 オオカミはおやゆび小僧に案内されるまま、ドブから食べものをしまってある部屋に入っていき、思うぞんぶんに食べました。
 食べるだけ食べたオオカミは、家から出て行こうとしましたが、食べすぎておなかが大きくなったので、さっきとおなじ道だというのに、そこからでることができなくなりました。
 おやゆび小僧は、それをあてにしていたのです。
 さっそく、オオカミのおなかのなかで大さわぎをはじめ、力いっぱいにあばれました。
「しずかにしていろ。うちのものがおきてしまうじゃないか」
と、オオカミがいいましたが、
「なんだと、おまえばかり食べて。ぼくだってゆかいにやりたいよ」
 おやゆび小僧はこういって、力いっぱいにわめきたてました。
 そのため、さわぎをきいたお父さんとお母さんが部屋へかけつけて、すきまからのぞいてみました。
 すると、なかにオオカミのいるのが見えましたので、お父さんはオノを、お母さんは大ガマをもってきました。
 ふたりは部屋のなかに入ると、お父さんがお母さんにいいました。
「おまえはうしろにいなさい。わしがガツンとくらわせるから。それでも死ななかったら、おまえが切りつけて、あいつを八つざきにしてしまうんだ」
 おやゆび小僧は、お父さんの声をききつけてさけびました。
「お父さん! ぼく! ここにいるよ! オオカミのおなかのなかに! はいっているんだよ!」
 それを聞いたお父さんは、大よろこびです。
「ありがたいぞ。かわいいせがれが見つかったぞ」
 そしてお父さんは、オオカミをねらってオノをふりあげると、オオカミの脳天(のうてん)めがけてガツンとくらわせました。
 オオカミは、その場にたおれて死んでしまいました。
 それからふたりは、ナイフとはさみをさがしてきて、オオカミのからだを切りひらいて、おやゆび小僧をひっぱりだしました。
「ああ、おまえのために、どれほど心配したかしれないぞ」
と、お父さんがいいました。
「お父さん、ぼくだってずいぶん、ほうぼう歩きまわってきたよ。こうしてまた、きれいな空気がすえてうれしいよ」
「いったい、どこへいってたんだい?」
「お父さん、ぼくね、ネズミの穴のなかだの、ウシのおなかのなかだの、オオカミのおなかのなかだのにいたんだよ。そして、いまやっと、お父さんとお母さんのところへかえってきたのさ」
「こんどはもう、世界じゅうのお金をもらったって、二度とおまえを売りはしない」
 両親はこういって、かわいいおやゆび小僧をだきしめました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 雷記念日
きょうの誕生花 → グロリオーサ
きょうの誕生日 → 1928年 中松義郎(Dr.中松・発明家)

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きょうの世界昔話 → おやゆび小僧
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6月25日の世界の昔話 十三匹のハエ

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 6月の世界昔話

6月25日の世界の昔話

十三匹のハエ

十三匹のハエ
フランスの昔話 → フランスの国情報

♪音声配信

 むかしむかし、小さな村に機織り職人(はたおりしょくにん)がいました。
 おかみさんがよぶと、機織り職人の夫は、いつもねころんでいて、
「うーん、なんだ?」
と、ねぼけ声で返事をします。
 でも不思議なことに、客が明日までにおりあげてくれとたのむと、夫はいつのまにか、きちんとおって渡すのです。
 畑のことも、おかみさんには不思議でなりません。
 おかみさんが見ると、夫はいつも昼寝をしているのに、収穫(しゅうかく)のときが来ると、近所の家より十倍は多くブドウでも野菜でも持って帰って来るのです。
 そんなある日、夫はよその町へ用事で出かけることになりました。
 おかみさんは、そっと夫のあとをついて行きました。
 森の道に来ると、夫は大きな木の下で立ちどまり、ポケットから何かをとり出して、木の根もとに埋(う)めて行きました。
 夫の姿が見えなくなると、おかみさんはほってみました。
 埋めてあったのは、大きなクルミの実が一つだけです。
「なんだ、つまらない」
 おかみさんはそのクルミをすてようとしましたが、中から音がしたので耳元に近づけました。
 すると中からは、ブンブンとムシの羽の音がして、こんな声も聞こえます。
『仕事はどこだ。仕事をおくれ』
 おかみさんは首をかしげて、クルミを持って帰りました。
 そして扉(とびら)もまどもきっちりとしめ、クルミをわってみたのです。
 すると中からブンブンブンブンと、十三匹のハエが元気よく飛び出して来たのです。
 部屋中を飛びまわるハエがあまりにうるさいので、おかみさんはどなりました。
「ハエよ、クルミに戻れ!」
 するとハエたちはクルミの中にはいったので、おかみさんはまた森の道の木の下に埋めに行きました。
 しばらくして夫が町から帰ると、おかみさんは正直に、森の木の下からクルミをほり、十三匹のハエを見たことを話しました。
 すると夫はニコニコ笑いながら、こう言いました。
「いつか話そうと思っていたんだが、俺はいつも機織りの仕事も畑仕事も、十三匹のハエたちにやってもらっているのさ。十三匹の力は十三人分の力でな。どんなことでも、あっというまにやってくれる。お前も自分の仕事を十三匹のハエにやらせるといいよ」
 夫からクルミをもらうと、おかみさんは次の日からさっそく、十三匹のハエに掃除(そうじ)や洗濯(せんたく)をさせ、のんびりと昼寝をしようと思いました。
 でも、十三匹のハエはブンブンと、羽を鳴らしながら働くのでねむれやしません。
 仕事がすんで、クルミの中にはいっても、
『ブンブンブン、ブンブンブン。仕事はどこだ、仕事をおくれ』
と、そのうるさく言うのです。
 おかみさんは、もうがまんできずに夫に言いました。
「どんなに大変でも、あたしは前みたいにくらしたいよ」
「そうだな。俺もこのままじゃ、機織りの仕事を忘れちまうよ」
 夫はクルミから、十三匹のハエを出して言いました。
「さあ、どこへでも、好きな土地へ行くがいいよ」
 十三匹のハエは、声をそろえて答えます。
『ブンブンブン、ブンブンブン。それなら、これまで働いてきた給料(きゅうりょう)をおくれ』
 夫は、まどの外を指さしました。
 空には森へ飛んで行く、十三羽の鳥が見えます。
 十三匹のハエは、ブンブンと羽を鳴らしてまどから飛んで行くと、一羽ずつ鳥をつかまえて、そのままどこかへ飛んで行ってしまいました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 住宅デー
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6月24日の世界の昔話 お百姓と悪魔

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6月24日の世界の昔話

お百姓と悪魔

お百姓と悪魔
グリム童話 →グリム童話の詳細

♪音声配信

 むかしむかし、とってもかしこいお百姓(ひゃくしょう)が住んでいました。
 ある日のこと、お百姓はじぶんの畑のまんなかに、ひとかたまりの石炭がもえているのに気がつきました。
 ビックリしてそばヘいってみると、その石炭の火の上に、まっ黒な小さい悪魔(あくま)がすわっているではありませんか。
「おまえはきっと、宝物の上にすわっているんだろ?」
と、お百姓はいいました。
「そうとも。おまえが生まれてからまだ見たこともないほど、たくさんの金や銀の入った宝物の上にすわってるんだ」
「それじゃあ、その宝はわしの土地にあるんだから、わしのものだぞ」
と、お百姓が、いいました。
「ああ、いいとも。おまえにやるよ。もっとも、二年のあいだ、おまえの畑にできるものを半分だけおれにくれたらの話だがね」
 お百姓は、大きくうなづきました。
「よし、きまりだ。けれど、わけるときにけんかをしないように、土の上にできたものはおまえのもの。土の下にできたものはわしのものとしようじゃないか」
「よし、おれが土の上にできたものだな」
 悪魔はよろこんで、帰って行きました。
 ところが、かしこいお百姓は、畑にカブのタネをまきました。
 さて、いよいよとりいれのときになると、悪魔がやってきて、できたものをもらっていこうとしました。
 ところが、土の上にできたものをもらう悪魔のとりぶんは、しぼんで黄色くなった葉っぱばかりです。
「ちくしょう。こんどは、おまえが得をしたが」
と、悪魔はいいました。
「このつぎはそうはいかんぞ。土の上にできるものはおまえのもので、土の下にできるものはおれのものにしよう」
「いいとも。約束しよう」
 さて、次のタネをまく季節がくると、かしこいお百姓はカブをまかないでムギをまきました。
 そしてムギがみのったとき、お百姓は畑ヘいって、くきの根もとからムギをぜんぶかりとってしまいました。
 悪魔がきたときには、切りかぶしかありません。
 悪魔はプンプンおこりながら、どこかへいってしまいました。
「はっはっは。うまくいったわい」
 お百姓はそういって、畑にうまっている宝物をほりだし、大金持ちになりました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → UFOの日
きょうの誕生花 → すいせんのう
きょうの誕生日 → 1964年 野々村真(タレント)

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きょうの世界昔話 → お百姓と悪魔
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6月23日の世界の昔話 大きな家と小さな家

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6月23日の世界の昔話

大きな家と小さな家

大きな家と小さな家
グリム童話 →グリム童話の詳細

♪音声配信

 むかしむかし、神さまは旅の途中(とちゅう)で、二けんの家を見つけました。
 大きくて立派(りっぱ)な家と、小さくて古い家です。
 神さまは初めに、大きくてりっぱな方の家のドアをたたき、
「どうか、一晩とめてください」
と、たのみました。
 その家の主人は、ボロボロの服を着た旅人が、まさか神さまだとは思わずに、すぐにこう言いました。
「うちは、どの部屋もいっぱいでね。ほかへ行ってください」
 次に神さまは、となりの小さくて古い家の主人に同じ事をたのみました。
 すると今度の主人と、そのおかみさんは、
「どうぞ、中へ入ってお休みになって下さい」
と、言って、そまつだけれどこころのこもった食事を出してくれたのです。
 そしてその夜は、
「長旅でお疲れでしょう。わたしたちのベッドで寝てください」
と、言って、自分たちは床に寝ました。
 次の朝、神さまが言いました。
「もし、ねがいごとが三つかなうとしたら、何をねがいますか?」
「一つは、わたしと妻が二人で天国へいけること。二つは、それまでずっと元気ではたらけること。それだけです」
「では、三つ目の願いとして、この家を新しく大きくしてあげましょう」
 神さまは、三つの願いをかなえてあげました。
 それを知った大きな家の主人は急いでウマに乗り、神さまを追いかけました。
 そして、言ったのです。
「わたしだって、ほんとうはあなたをとめるつもりだったんだ。だからわたしにも、願い事をかなえてくれてもいいはず。さあ、願いをかなえてください」
と、むりに神さまにお願いのやくそくをしてもらい、男はいっしょうけんめい願い事を考えました。
 ところが、ウマがあんまりはねるので、イライラしてさけびました。
「せっかくいい願いを思いつきそうだったのに!! このばかウマめ!! 首でも取れてしまうがいい」
 するとウマの首が、本当にポトンと落ちてしまったのです。
 一つ目の願いが、かないました。
 ウマが死んでしまったので、男はウマのくらを背負って歩かなくてはなりません。
 そのうちに、だんだんはらが立ってきました。
「今ごろ、かみさんは家でのんびりしているに違いない。ちぇっ、あいつこそ、このおもいくらにずっとひっついてりゃいいんだ」
 すると男の背中から、くらが飛んでいきました。
 二つ目の願いも、かなえられたのです。
 男が家に帰ると、おかみさんはウマのくらに乗ったまま、おりられずにいました。
 男は最後の願いとして、世界中のお金が欲しいと思いましたが、おかみさんに、
「今すぐ、このくらからおろしておくれよ。はやく!!」
と、どなられて、しぶしぶくらからおりられるように願いました。
 三つの願いは、それで終わりになりました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 踏切の日
きょうの誕生花 → みやこわすれ
きょうの誕生日 → 1967年 南野陽子(女優)


きょうの日本昔話 → なぞかけあねさま
きょうの世界昔話 → 大きな家と小さな家
きょうの日本民話 → キツネの毒キノコ
きょうのイソップ童話 → ライオンとプロメテウスとゾウ
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6月22日の世界の昔話 三匹のクマ

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6月22日の世界の昔話

3匹のクマ

三匹のクマ
イギリスの昔話 → イギリスの国情報

♪音声配信

 むかしむかし、女の子が森で遊んでいると、遠くに家が見えたので行ってみました。
 その家は、三匹のクマの親子が住む家でした。
 トントントン。
 ドアをたたいてもへんじがないので、女の子はそっと中に入りました。
 台所のテーブルの上に、大きいおわんと、中くらいのおわんと、小さいおわんがありました。
 どのおわんにもスープが入っていたので、女の子は一口ずつのんでみました。
「小さなおわんのスープが、いちばんおいしいわ」
 おなかがすいていた女の子は、小さいおわんのスープを、すっかりのんでしまいました。
 居間(いま)には、イスが三つありました。
 大きいイスは高すぎます。
 中くらいのイスは、すわりごこちがよくありません。
 小さいイスは、女の子にピッタリです。
 ゆらして遊んでいたら、
 ドシン!
 イスがこわれて、女の子はしりもちをついてしまいました。
 となりのへやには、ベッドが三つありました。
 大きいベッドは広すぎるし、中くらいのべッドはかたすぎます。
「小さいベッドは、ちょうどいいわ」
 女の子は小さいベッドにもぐりこんで、ねむってしまいました。
 しばらくすると、三びきのクマが帰ってきました。
「おや、わしのスープをのんだのは、だれだ?」
「まあ、わたしのスープをのんだのは、だあれ?」
 お父さんグマとお母さんグマが、うなりました。
 ちびグマが、なき声でいいました。
「あーん、だれかが、ぼくのスープをのんじゃった!」
 居間に行くと、
「おや、わしのイスにすわったのは、だれだ?」
「まあ、わたしのイスにすわったのは、だあれ?」
 お父さんグマとお母さんグマが、うなりました。
 そして、ちびグマは、
「わーん、だれかが、ぼくのイスをこわしちゃったあ!」
と、なきだしました。
 三びきのクマは、となりのへやに行ってみました。
「おや、わしのベッドにねたのは、だれだ?」
「まあ、わたしのべッドにねたのは、だあれ?」
 お父さんグマとお母さんグマが、うなりました。
 ちびグマが、さけびました。
「見て! ぼくのベッドにだれかがいるよ」
 目をさました女の子は、ビックリ。
「きゃあああーっ!」
 あわててまどから、にげていきました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ボウリングの日
きょうの誕生花 → かんぞう(やぶかんぞう)
きょうの誕生日 → 1964年 阿部寛(俳優)

きょうの新作昔話 → アルキメデスの最後
きょうの日本昔話 → こんにゃくえんま
きょうの世界昔話 → 3匹のクマ
きょうの日本民話 → 大火事を知らせた男
きょうのイソップ童話 → ライオンとクマとキツネ
きょうの江戸小話 → おたばこいれ

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6月21日の世界の昔話 ほらふき男爵 ワニとライオン退治

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6月21日の世界の昔話

ほらふき男爵 ワニとライオン退治

ほらふき男爵 ワニとライオン退治
ビュルガーの童話 → ビュルガーの童話の詳細

♪音声配信

 わがはいは、ミュンヒハウゼン男爵(だんしゃく)。
 みんなからは「ほらふき男爵」とよばれておる。
 きょうは、南の島に行ったときの話をしよう。
 あの時は大変じゃった。
 なにしろ、キバをむいたライオンに追いつめられ、すぐ後ろでは大口を開けたワニがわがはいにかみつこうとしていたのだからな。
 絶体絶命(ぜったいぜつめい)とは、まさにこのことじゃ。
 さすがのわがはいも、このときは死を覚悟(かくご)した。
 そしてライオンが飛びかかってきたとき、思わずクラクラッと足がふらついて尻もちをついてしまった。
 だが、わがはいは無傷で助かったのじゃ。
 なんと、わがはいに飛びかかってきたライオンは、尻もちをついたわがはいを飛びこえて、反対側にいるワニの口に頭からスッポリと入ってしまったのじゃ。
 わがはいはすぐに起きあがると、ライオンの首を切り落としてライオンを退治した。
 そしてワニは、ライオンの頭がのどにつまってしまい、そのまま死んでしまったよ。
 では、また次の機会に、別の話をしてやろうな。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → スナックの日
きょうの誕生花 → さつき
きょうの誕生日 → 1963年 青山剛昌 (漫画家)


きょうの日本昔話 → 百目
きょうの世界昔話 → ほらふき男爵 ワニとライオン退治
きょうの日本民話 → ナマズを食べない村
きょうのイソップ童話 → 黒イタチ
きょうの江戸小話 → おいはぎかご

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6月20日の世界の昔話 ギルガメシュの冒険

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6月20日の世界の昔話

ギルガメシュのぼうけん

ギルガメシュの冒険
イラクの昔話 → イラクの国情報

♪音声配信

 むかしむかし、ある町の人たちは、いつもブツブツ言っていました。
「ギルガメシュ王は、じぶんかってなことばかりする」
「あれじゃ、みんなこまるよ」
 それをきいた天の神は、女神をよびました。
「ギルガメシュ王とたたかえる人間を一人つくりなさい。きっと町の人をすくってくれるだろう」
 女神は、すぐ土をこねてつくりました。
 からだじゅうに毛がはえていて、かみはながく、けもののかわをきています。
 名前を、エンキドウとつけました。
「エンキドウ、さあいけ」
 エンキドウは森へくると、けものたちとくらしました。
 いっしょに草をたべたり、小川に口をつっこんで水をのみました。
 ある日、森のけものが猟師(りょうし)のアミにかかりました。
「なんだ。だれもたすけられないのか」
 エンキドウは、アミをきってにがしてやりました。
 このようすを、猟師が木のかげでみていました。
「おそろしいけものがあらわれたぞ」
 猟師は青くなってとんでかえると、お父さんにはなしました。
「それはたいへんだ。すぐエレクの町へいって、王さまにしらせるんだ」
 しらせをきいたギルガメシュ王は、猟師にいいました。
「森へ娘をつれていってくれ。そうすれば、人間の国へくるだろう」
 猟師はいわれたとおりに、娘をつれて森につきました。
「おまえは、この小川のそばにいるのだよ。どこへもいってはならないよ」
 そういいつけて、猟師は家にかえりました。
 水をのみにきたエンキドウは、きれいな娘を見て、すぐに好きになりました。
「ぼくと結婚してください。きっとだいじにします」
 それからエンキドウは、娘といっしょにくらすようになりました。
 するとふしぎなことに、からだにはえていたながい毛がなくなりました。
 娘がエンキドウにいいました。
「あなたはもう、りっぱな人間になったのですよ。町へいきましょう」
「町へいって、どうするんだね」
「町には、神さまと人間のあいだに生まれた、ギルガメシュという王さまがいます。とてもいばって、町の人たちをくるしめているんです」
「よし。いって、その王をこらしめてやろう」
 二人は、町ヘつきました。
 すると、ふえやたいこの音がして、にぎやかな行列が近づいてきました。
「あれは、なんだ?」
 エンキドウがたずねると、娘が答えました。
「王さまの結婚式です」
「そうか、あれが王さまだな」
 いうがはやいか、エンキドウは飛び出していって王にくみつきました。
「ややっ! つよそうな男だ」
「王も、かなわないぞ」
 まわりのみんながさわぎだすなか、エンキドウと王は、はげしくたたかいました。
「王さま、あなたは町の人たちを苦しめているときく。ぼくが勝ったら、町の人を苦しめるのをやめるんだ!」
「よかろう」
 王もつよかったのですが、エンキドウにはかないません。
 王はとうとう、くみふせられてしまいました。
「エンキドウよ。お前の勝ちだ。約束は守ろう。そして、これからは友だちになろう」
 エンキドウにまけてから、ギルガメシュはやさしい王になりました。
 そして、二人は親友になったのです。
「エンキドウ、神の森にあるモミの木をきりたおして、みんなをおどろかそう」
 ぼうけんのすきな王が、いいだしました。
「でも、あの森には、おそろしい一つ目で火をふくフンババがいるんだ。けものたちとくらしていたとき、見たんだ」
「では、神さまにたすけてもらおう。そうすればやれる」
 神たちは、はんたいしました。
 でも、ギルガメシュのお母さんの天の女神が、太陽の神にたのんでくれました。
「さあ、いよいよ出発だ」
 ギルガメシュとエンキドウは、剣やオノをもってでかけました。
 ふつうの人なら、ひと月はかかる道のりですが、いさましい二人は、たった三日で森の入り口につきました。
「大きなとびらがしまっているぞ、エンキドウ」
 エンキドウはとびらをおして、すきまからのぞいてみました。
「中にフンババがいる。でてこないうちに、はいってつかまえよう」
 いったとたん、とびらがはねかえって、エンキドウの手をはさみました。
「いたたっ!」
 はさんだ手がいたくて、エンキドウはころがりました。
「かえろう。とてもフンババはやっつけられない」
「なんだ。それくらいのことでまいってどうするんだ。あそこがだめなら、森のおくでまちぶせよう」
 ギルガメシュは、さきにたってズンズンすすみます。
 エンキドウも、仕方なくついていきました。
 やがて、森のおくのモミの木の山につきました。
「このたかい山のてっぺんだな、神さまがあつまってそうだんするところは」
「それにしてもつかれた。ちょっとやすもう」
 木のかげにはいると、二人はそろってねむりだしました。
 朝になり目をさますと、二人は森のおくへはいりました。
「さあ、この大きなモミの木をきろう」
 ギルガメシュがオノをふるうと、モミの木はすごい音をたててたおれました。
 その音をききつけて、ひとつ目のフンババがとびだしてきたのです。
 フンババはキバをむきだして、火をふきながらちかづいてきます。
「ウヒャァ!」
 ギルガメシュは、こわくなって動けません。
 そのとき、太陽の神のこえがきこえました。
「ギルガメシュよ。おそれずにフンババの目にかぜをふきつけるのだ」
 ギルガメシュは、天にむかってたのみました。
「かぜの神さま、どうかかぜをおくってください」
 すると、みるみるつよいかぜがおこって、フンババがヨロヨロしてきました。
 目が、フンババの弱点だったのです。
「さあ、かくごしろ」
 ギルガメシュとエンキドウは、フンババのくびをバッサリときりおとしました。
「やった。うまくいったな」
 ギルガメシュとエンキドウは、血のついた手やかおを川であらいました。
「王さま、どうぞわたしのうちへおいでください」
 こえがしたのでふりむくと、うつくしい女の人がたっています。
「だれです? あなたは」
「この森の女神イシュルタです。宝石をちりばめた戦車をあげましょう」
「だまされるものか。あんたは人をだます、わるい女神だときいてるぞ」
「わたしのいうことをきかないんですって、ギルガメシュ。どんなことになるか、みていらっしゃい」
 おこった女神は、天のお城へのぼっていきました。
「おとうさま、ギルガメシュはなまいきなんです。あばれると大あらしと大じしんをおこすウシを、ギルガメシュのまえにはなしてください」
「いけないよ、そんなことは」
「いやです。きいてくださらないと、わたし、じごくのとびらをひらいて、死んだ人たちをはなちますよ」
 お父さんの神は、こまりました。
「しかたがない。だがウシをはなすと、七年も食べ物ができなくなるぞ」
「だいじょうぶです。人間の食べ物も、けものたちの食べ物も、たくさんありますわ」
「では、はなそう」
 みるまに大きなウシが、ギルガメシュとエンキドウにむかってとびだしました。
「えいっ」
 エンキドウはすばやくツノをつかんでおしとめると、ウシのくびに剣をつきさしました。
 それを知った女神が、二人にどなりました。
「ギルガメシュ、よくも天のウシをころしたわね。はやくウシをかえして」
「だめだ。これはもらってかえるよ」
「これからは、わるいかんがえはおこさないことだね。女神さん」
 ギルガメシュとエンキドウは、うちとったウシをかついで森をででいきました。
 二人は、エルクの町につきました。
「王さまたちが、天のウシをうちとってこられたぞ」
「かいぶつのフンババのあたまもあるぞ」
「王さま、ばんざーい」
「エンキドウ、ばんざーい」
 みんなはあつまってきて、二人をほめたたえました。
 ところがお城にかえってきてから、エンキドウはねむれなくなりました。
「ギルガメシュ、ヘんなゆめをみたんだ。神さまたちがぼくたち二人を殺そうとするゆめなんだ」
「どうしてだ?」
「神さまの森をあらしたし、天のウシをころしたからな。二人のうち、どっちかが死ななければならんと、おこっていた。そして死ぬのはぼくのほうだ」
「それなら、ぼくが死のう。エンキドウ」
 どっちも、親友をたすけたいとおもいました。
「うれしいが、ギルガメシュには、王さまとしての仕事がある。死ぬのは一人でいい」
 エンキドウは親友にほほえむと、そのまま死んでしまったのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 健康住宅の日
きょうの誕生花 → ちがや(べにちがや)
きょうの誕生日 → 1967年 ニコール・キッドマン (俳優)


きょうの日本昔話 → 十七毛ネコ
きょうの世界昔話 → ギルガメシュのぼうけん
きょうの日本民話 → ウサギを追っ払ったキツネ
きょうのイソップ童話 → 2匹のイヌ
きょうの江戸小話 → どうでも、しやぁがれ

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6月19日の世界の昔話 大きなカブ

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 6月の世界昔話

6月19日の世界の昔話

大きなカブ

大きなカブ
ロシアの昔話 → ロシアの国情報

♪音声配信

 畑にカブが出来ました。
 いままで見たこともないような、とっても大きな大きなカブです。
「おお、これはすごい。さっそくぬいてみようか」
 おじいさんはカブを引っぱりましたが、カブはぬけません。
 おばあさんがやってきました。
「あら、大きなカブですね。どれ、わたしもてつだいますよ」
 おばあさんはおじいさんの腰に手をかけると、おじいさんと力を合わせてカブをぬこうとしましたが、やっぱりカブはぬけません。
 次に、まごがやってきました。
「おじいさん。ぼくもてつだうよ」
 おじいさんとおばあさんとまごは、力を合わせてカブをぬこうとしましたが、やっぱりカブはぬけません。
 次に、イヌがやってきました。
「おじいさん。わたしもてつだいます。ワン」
 おじいさんとおばあさんとまごとイヌは、力を合わせてカブをぬこうとしましたが、やっぱりカブはぬけません。
 次に、ネコがやってきました。
「おじいさん。あたしもてつだいます。ニャー」
 おじいさんとおばあさんとまごとイヌとネコは、力を合わせてカブをぬこうとしましたが、やっぱりカブはぬけません。
 次に、ネズミがやってきました。
「おじいさん。おいらもてつだいます。チュー」
 おじいさんとおばあさんとまごとイヌとネコとネズミは、力を合わせてカブをぬこうとしました。
「うーん よいしょ」
「うーん よいしょ」
「うーん よいしょ」
「うーん ワン」
「うーん ニャー」
「うーん チュー」
 みんなで力いっぱい引っぱりました。
 すると、
「スッポーーーン!!」
 とうとうカブはぬけました。
 それは、とってもとっても大きなカブでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ベースボール記念日
きょうの誕生花 → イキシア
きょうの誕生日 → 1053年 白河天皇 (天皇(72代)

きょうの新作昔話 → 左甚五郎(ひだりじんごろう)の竜
きょうの日本昔話 → たけのこのおとむらい
きょうの世界昔話 → 大きなカブ
きょうの日本民話 → ものをいうじぞうさん
きょうのイソップ童話 → オオカミと少年
きょうの江戸小話 → ネコのまねしたお嫁さん

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6月18日の世界の昔話 むすびこぶ

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6月18日の世界の昔話

むすびこぶ

むすびこぶ
グリム童話 → グリム童話の詳細

♪音声配信

 むかしむかし、ひとりの娘がいました。
 この娘はとても美人ですが、たいへんななまけもので、だらしのない女でした。
 糸をつむぐときに、アサのなかに小さいむすびこぶ(→繊維のかたまり)でもあると、もういやになってしまって、そのもつれた玉ぜんたいをひきちぎって、わきにほうりだしてしまうのです。
 ところが、そこの家にひとりのはたらきものの女中(じょちゅう)がいて、娘がすてたアサくずをひろいあつめると、それをあらってじょうずにつむいで、きれいな着物におってもらいました。
 さて、あるわかい男の人が、そのなまけものの娘をお嫁さんにほしいといって、いよいよ結婚式をあげることになりました。
 そのまえいわいの晩に、はたらきものの女中さんが、きれいな着物をきてたのしそうにおどっていますと、花よめがいいました。
「あの女中、あたしの糸くずの着物をきているのよ」
 それをきいたおむこさんが、
「それはどういう意味だね?」
と、花よめさんにたずねました。
 そこでお嫁さんは、
「あの女中はわたしがすてたアサくずでおった着物をきているのです」
と、説明したのです。
「それは、なんとすばらしい」
 おむこさんはこれをきくと、娘さんがなまけもので、あのまずしい少女がはたらきものであることを知りました。
 そこで娘さんとの結婚をことわると、あの女中さんのところへいって、彼女をお嫁さんにえらんだのでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 海外移住の日
きょうの誕生花 → おもだか
きょうの誕生日 → 1942年 ポール・マッカートニー (ビートルズ)


きょうの日本昔話 → 百物語
きょうの世界昔話 → むすびこぶ
きょうの日本民話 → 貧乏長者
きょうのイソップ童話 → ヤギとロバ
きょうの江戸小話 → れんこんのあな

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6月17日の世界の昔話 小ウサギのしょうばい

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6月17日の世界の昔話

小ウサギのしょうばい

小ウサギのしょうばい
コスタリカの昔話 → コスタリカの国情報

♪音声配信

 むかしむかしの、ある秋のこと。
 小ウサギが五十リットルのトウモロコシと、五十リットルのマメをとりいれました。
 ずるがしこい小ウサギは、これでうんともうけてやろうと思いました。
 小ウサギは朝はやく、ムギわらボウシをかぶり、新しいうわぎをきてでかけました。
 まずアブラムシの家にいって、トントンと戸をたたきました。
 アブラムシはちょうど、コーヒーマメをひいていましたが、
「まあ、まあ、どなたかしら?」
と、いいながら戸をあけました。
「ああら、小ウサギさんじゃないの。どうぞ、おはいりになって」
 小ウサギは中にはいって、イスに腰かけながらいいました。
「あなたに、わたしがとりいれた五十リットルのトウモロコシと、五十リットルのマメを、安く売ってあげようかと思いましてね。たったの五コロン(→日本円では百円ほどですが、現地ではフランスパンが10本以上買えます)で、いいんですよ」
「すこし、考えさせてくださいな」
と、アブラムシはこたえました。
「いやいや、それはこまります。すぐきめてください。あなたが買わないなら、だれかほかのひとにはなします。もし買おうというのでしたら、土曜日の朝はやく、わたしのところへきてください」
「では、買うことにしましょう。土曜日の朝七時ごろに、荷車をもって品物をいただきにまいりますわ。いまコーヒーをいれますから、めしあがっていってくださいな」
 小ウサギは、しょうばいの話をきめたうえに、コーヒーとケーキをごちそうになって、アブラムシの家をでました。
 そしてこんどは、メンドリの家にいきました。
「メンドリさん。じつは、わたしがこの秋とりいれた五十リットルのトウモロコシと、五十リットルのマメを、あなたに安く売ってあげようと思いましてね。たったの五コロンで、いいんですよ」
 メンドリは、五コロンならたしかに安いと思いましたので、土曜日の朝八時ごろに、荷車をもって品物をとりにいくとやくそくしました。
 小ウサギは、ここでもしょうばいの話がうまくまとまったうえに、おみやげにできたてのチーズをもらいました。
 それからこんどは、キツネの家にいきました。
「キツネさん。わたしがこの秋とりいれた、五十リットルのトウモロコシと五十リットルのマメを、安く売ろうと思っているんですよ。五コロンでいいんですが、買いませんか?」
 キツネも、このもうしでをよろこんでうけました。
 そして、土曜日の朝九時ごろ、品ものをとりにいくとやくそくしました。
 小ウサギはここでも、たくさんごちそうになりました。
 それから、オオカミのところへいきました。
 ここでもいままでと同じように、トウモロコシとマメをうまく売りつけました。
 オオカミは土曜日の十時ごろ、品物をとりにいくとやくそくしました。
 さいごに小ウサギは狩人(かりゅうど)のところへいって、同じようにしょうばいの話をうまくとりきめました。
 狩人には、十一時ごろきてくれるようにいいました。
 いよいよ、土曜日になりました。
 まだ、お日さまがのぼらないうちに、アブラムシが荷車をもってやってきました。
「トウモロコシもマメも、うちのうしろにありますから、荷車はそこへおいてらっしゃい。それがすんだら、ひと休みしていってください」
と、小ウサギはいいました。
 アブラムシはいわれたとおりに、荷車をうらへもっていきました。
 それから家の中へはいってきて、やくそくの五コロンを小ウサギにわたしました。
 それから小ウサギにすすめられるままに、ながイスに腰をおろして、のんびりと葉まきタバコをふかしはじめました。
 二人はしばらくのあいだ、なにやかやと話をしていましたが、とつぜん小ウサギがさけびました。
「あっ、たいヘんだ! メンドリがこっちへやってきますよ」
 とたんにアブラムシはまっ青になって、ブルブルとふるえだしました。
「見つかったら、たべられてしまうわ。どこかへ、かくしてちょうだい!」
 そこで小ウサギは、アブラムシをだんろの中にかくしてやりました。
 そこへメンドリが、ニコニコしながらやってきました。
「小ウサギさん。ちょうど時間どおりよ」
 小ウサギは、なやにトウモロコシとマメがあるから、そこへ荷車をおいてきて、ひと休みするようにといいました。
 メンドリはいわれたとおりにしてから、小ウサギに五コロンをわたしました。
 それからながイスに腰かけて、葉まきタバコをふかしながら、しばらくのあいだ二人で話をしていました。
 するととつぜん、小ウサギがさけびました。
「あっ、たいへんだ! キツネがこっちへやってきますよ」
 とたんに、メンドリは顔色をかえて、ブルブルとふるえだしました。
 それを見て、小ウサギは、
「そのだんろの中にかくれていらっしゃい。そうすりゃ、見つかりっこありませんから」
と、いって、アブラムシのかくれているだんろの中へ、メンドリをおしこみました。
 だんろの中に入ったメンドリは、そこにいたアブラムシをひとのみにしてしまいました。
 小ウサギは外へでていって、キツネをむかえました。
 荷車はそばの原っぱヘおいて、まずひと休みするように、家の中へむかえいれました。
 キツネがやくそくの五コロンをわたすと、小ウサギはキツネにむかって、しきりにだんろのほうを目くばせして見せました。
「おや、だんろに何かあるのかい?」
 キツネは、だんろの中をのぞいて見ました。
 かわいそうにメンドリは、あっというまにキツネに、くいころされてしまいました。
 おなかが大きくなったキツネが、気持よさそうに葉まきタバコをふかしていると、小ウサギがさけびました。
「たいへんだ! オオカミがきますよ。はやく、かくれなさい!」
 キツネはあわてて、小ウサギにおされるままに、だんろの中にもぐりこみました。
 オオカミは荷車を、いけがきのところへおいてから、五コロンを小ウサギにわたしました。
 小ウサギは、オオカミにむかって、だんろのほうを目くばせして見せました。
「おや、だんろに何かあるのかい?」
 オオカミは、だんろの中をのぞきこみました。
 だんろの中でふるえていたキツネは、たちまちオオカミに食べられてしまいました。
 キツネを食べたオオカミが、いい気持で葉まきタバコをふかしていると、ふいに小ウサギがさけびました。
「たいへんだ。狩人が鉄炮をもってやってきますよ」
 それを聞くと、オオカミはビックリ。
「きっと、おれをうちにきたにちがいない。どこかかくれるところはないか?」
 小ウサギは、オオカミをだんろの中へおしこみました。
 そこへ、狩人がやってきました。
 小ウサギは、あいそよく、
「よくきてくださいました。まあ、ひと休みして、葉まきタバコでもふかしてください」
と、いって、家の中へさそいいれました。
 それから、小ウサギは声をひくくして、
「あなたは、オオカミのやつがおきらいでしょう。だんろの中をねらって、ズドンと一発うってごらんなさい。そうすりゃ、オオカミのやつをやっつけられますよ」
と、ささやきました。
 狩人はすぐさま、ズドン! ズドン! と、鉄炮をうちました。
 すると、うちころされたオオカミが、だんろからころがりでました。
 それから狩人は、小ウサギといっしょにおもてへでていって、トウモロコシとマメのふくろをウマにつみました。
 そして、小ウサギに五コロンをはらって、帰っていきました。
 こうして狩人だけが、小ウサギのトウモロコシとマメを買ったことになりました。
 わる知恵をはたらかせた小ウサギは、五十リットルのトウモロコシマメで、二十五コロンをもうけ、おまけに四台の荷車も手に入れました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → おまわりさんの日
きょうの誕生花 → リアトリス
きょうの誕生日 → 1947年 今くるよ(漫才師)

きょうの新作昔話 → アルキメデスの新兵器
きょうの日本昔話 → ちょうふく山のやまんば
きょうの世界昔話 → 小ウサギのしょうばい
きょうの日本民話 → まめになれないとうふ
きょうのイソップ童話 → ウシと車軸
きょうの江戸小話 → つみなひとだま

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6月16日の世界の昔話 くさったリンゴ

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 6月の世界昔話

6月16日の世界の昔話

くさったリンゴ

くさったリンゴ
アンデルセン童話 → アンデルセン童話の詳細

♪音声配信

 むかしむかし、あるところに、それはそれは仲の良いお百姓(ひゃくしょう)夫婦(ふうふ)がいました。
 二人の家は、屋根にこけや草がはえていて、まどはいつもあけっぱなしです。
 庭には番犬が一匹いて、池にはアヒルが泳いでいます。
 きせつの花が門(もん)をかざり、リンゴの木もうわっていました。
 ある日のこと、お母さんがお父さんに言いました。
「ねえ、お父さん、今日は町で市(いち)がたつんだって。うちのウマもなにかととりかえてきてくれないかい。あのウマは草を食べて小屋にいるだけだからね」
「それはいいけど、何ととりかえる?」
 お父さんが聞くと、お母さんはネクタイを出して来て、それをお父さんの首にむすびながらニコニコ顔で言いました。
「きまってるじゃないか。それはお父さんにまかせるって。だって、うちのお父さんのすることに、いつもまちがいはないんだから」
「そうかね、そんならまかせられよう」
と、お父さんはウマに乗って、パッカパッカ出かけて行きました。
「おや?」
 むこうから、メスウシを引いてくる人がいます。
「ありゃ、見事なメスウシだ。きっといい牛乳がとれるぞ」
 お父さんはそう思うと、その人にウマとメスウシをとりかえっこしてほしいとたのみました。
「ああいいよ」
 その人はお父さんにメスウシを渡し、ウマに乗ってパッカパッカ行ってしまいました。
 お父さんはメスウシを引いて帰ろうかなとおもいましたが、せっかくだから、市を見に行くことにしました。
 すると、のんびりとヒツジを連れた男に出会いました。
「こりゃ毛なみのいいヒツジだ」
 お父さんは、メスウシとヒツジをとりかえようと声をかけました。
 ヒツジの持ち主は、大喜びです。
 なにしろ、ウシはヒツジの何倍も高いのですから。
 お父さんがヒツジをもらってのんびり行くと、畑の方から大きなガチョウをだいた男が来ました。
「あんなガチョウがうちの池に泳いでいたら、ちょっと鼻がたかいなあ」
 そう思うと、お父さんはさっそく、ヒツジとガチョウのとりかえっこをしようと言いました。
 ガチョウをだいた男は、大喜びです。
 なにしろヒツジは、ガチョウの何倍も高いのですから。
 お父さんがガチョウを抱いて町の近くまで行くと、メンドリをひもでゆわえている人に会いました。
「メンドリはエサはいらねえし、タマゴもうむ。お母さんもきっと助かるぞ」
 お父さんは、ガチョウとメンドリをとりかえないかと、もちかけました。
 メンドリの持ち主は、大喜びです。
 なにしろガチョウは、メンドリの何倍も高いのですから。
「やれやれ、大仕事だったわい」
 お父さんはメンドリを連れて、一休みすることにしました。
 お父さんが、お酒やパンを食べさせてくれる店にはいろうとすると、大きな袋を持った男にぶつかりました。
「いや、すまん。ところでその袋にゃ、何がはいっているのかね? 甘いにおいがするけど」
「ああ、これは痛んだリンゴがどっさりさ。ブタにやろうと思ってね」
 それを聞くと、お父さんはいつだったか、お母さんがリンゴの木を見ながら、こんなことを言ったのを思い出しました。
「ああ、いっぱいリンゴがとれて、食べきれなくて痛んでしまうくらい、うちにおいとけたら。一度でいいから、そんなぜいたくな思いをしてみたいねえ」
 お父さんは男に、メンドリと痛んだリンゴをぜひとりかえてほしいとたのみました。
「まあ、こっちはそれでもかまわないが・・・」
 男は首をかしげながら、リンゴの袋を渡しました。
 なにしろメンドリは、リンゴの何倍も高いのですから。
 お父さんはリンゴの袋を持って店にはいり、お酒を飲みパンを食べました。
 ところがうっかりしていて、リンゴの袋を暖炉(だんろ)のそばに置いたので、店中に焼けたリンゴのにおいが広がりました。
 そのにおいで、そばにいた大金持ちの男が声をかけてきました。
「気の毒に。リンゴをそんしましたね」
「いやあ、いいんだ、いいんだ」
 お父さんは笑って、大金持ちに、ウマが痛んだリンゴに変わった、とりかえっこの話を聞かせました。
 話を聞くと、大金持ちの男は目を丸くしました。
「それは、奥さんに怒られますよ」
 お父さんは、首を大きく横にふりました。
「いやあ、うちのかみさんはおれにキスするよ」
「まさか! ほんとにキスしたら、ぼくはあなたにタルいっぱいの金貨をあげますよ」
 大金持ちの男は、そう約束しました。
 お父さんは、大金持ちの男といっしょに家に帰りました。
「おかえり」
と、出むかえてくれたお母さんに、お父さんは大金持ちの男の前で話し始めました。
「ウマはね、まずメスウシととりかえたよ」
「へえ、そりゃお父さん、牛乳がとれてありがたいねえ」
「だがな、メスウシをヒツジにとりかえたのさ」
「ますますいいね。セーターがあめるよ」
「けど、ヒツジをガチョウととりかえた」
「ガチョウはお祭りに食べられるよ。おいしそうだね」
「でも、ガチョウはメンドリとかえちまった」
「ああ、運がいい。タマゴを毎日食べられるなんて」
「そのメンドリを痛んだリンゴととりかえて、ほれ、もどって来たとこだ」
「わあ、幸せだ。だってさ、お父さん、聞いとくれよ。あたしはさっきネギをかしてもらいにお向かいに行ったんだよ。そしたら奥さんが、『うちには痛んだリンゴ一つありません』ってことわったのさ。でも、どう? 今のあたしはその痛んだリンゴを持っている。アハハハ、ゆかいだねえ。こんないい気分は初めてだ。やっばり、お父さんのすることにまちがいはないねえ」
 お母さんはそう言うと、うれしそうにお父さんのほっぺたにキスをしました。
 それを見た大金持ちの男は、
「素晴らしい! なんて幸せな夫婦なんだ!」
 そう言ってお父さんとお母さんに、約束どおりタルいっぱいの金貨をプレゼントしました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ケーブルテレビの日
きょうの誕生花 → まつばぎく
きょうの誕生日 → 1966年 上杉和也・達也 『タッチ』


きょうの日本昔話 → 光る玉
きょうの世界昔話 → くさったリンゴ
きょうの日本民話 → 金を拾ったら
きょうのイソップ童話 → 天文学者
きょうの江戸小話 → タイのおかわり

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6月15日の世界の昔話 ハメルンの笛吹

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 6月の世界昔話

6月15日の世界の昔話

ハメルンの笛吹

ハメルンの笛吹
ドイツの昔話 → ドイツの国情報

♪音声配信

 むかしむかし、ハメルンという町に、どこからかかぞえきれないほどのネズミがやってきて、町のあちこちに住みついてしまいました。
 困った町の人たちはネズミとりをしかけたり、毒(どく)のおだんごをばらまいたりしましたが、ネズミはますますふえるばかりです。
「こうなったら、ネコやイヌをたよりにするしかしかたがない」
 そう考えて、どこの家でもネコやイヌを飼(か)うようになりました。
 でもネコもイヌも、ネズミが多すぎて、ネズミをつかまえるどころか、ネズミたちに追いかけられるしまつです。
 そんなある日、一人の男が町へやってきて、こんなことをいいました。
「ネズミは、このわたしが退治してさしあげましょう。ただしその代金として、金貨千枚をちょうだいします」
「おお、願ってもない。千枚どころか、二千枚でもお払いします」
「けっこう。ではさっそく、とりかかるとしますかな」
 男は外へ出ると、手にしていた笛(ふえ)をふきならしはじめました。
 すると、あちこちの家からネズミたちが飛び出して、笛ふきの回りへ集まってきたではありませんか。
 ネズミたちをしたがえた笛ふきは、笛をふきならしながら川のそばまでやってきました。
「どうするつもりだろう?」
 町の人たちが見ていると、笛ふきは川の中へサブサブと入っていきました。
 ネズミたちもあとをおって川へ飛びこむと、そのまま一匹残らずおぼれ死んでしまいました。
「やった! やった!」
「さあ、お祝いだ!」
 町の人たちは大喜びで、歌ったりおどったりしました。
 そこへ、笛ふきがもどってきていいました。
「ごらんのように、ネズミは残らず退治してさしあげました。それでは、金貨千枚をいただくとしましょうか」
「金貨千枚だって?」
 町の人たちは、しぶい顔をしました。
「たかがネズミくらいのことで、金貨千枚とは高すぎるではないか。まあ、十枚くらいは出してやるが」
「さては、約束をやぶるつもりですか。よろしい。それならこちらにも考えがある」
 笛ふきは顔色を変えると、姿を消してしまいました。
「・・・やれやれ。あきらめたか」
 町の人たちは安心して、また歌ったり、おどったりです。
 そのときどこかで、リュウリュウと笛の音がひびきはじめました。
 笛ふきが、町の広場のまん中で笛をふきはじめたのです。
 それといっしょに、あちらこちらの家から子どもたちが集まってきました。
「やや、子どもたちが笛ふきのあとを」
 大あわてで追いかけていくと、山のふもとにあるほら穴のそばへやってきました。
 笛ふきは笛をふきならしながら、ほら穴の奥へはいっていきます。
「わーい、ほら穴だ、ほら穴だ」
 子どもたちも大喜びで、ほら穴の中へはいっていきました。
「おーい、待ってくれ、待ってくれ」
「わしらが悪かった。約束どおり金貨をはらうから、子どもたちを返してくれ」
 町の人たちは、声をかぎりによびかけました。
 でも、もうおそく、岩が一人でに動きはじめたかと思うと、ほら穴の入り口をピッタリとふさいでしまいました。
 こうしてハメルンは、子どもの一人もいない町となってしまったのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 暑中見舞いの日
きょうの誕生花 → たちあおい
きょうの誕生日 → 1937年 伊東四朗(タレント)

きょうの新作昔話 → 川場温泉
きょうの日本昔話 → ネズミ経
きょうの世界昔話 → ハメルンの笛吹
きょうの日本民話 → 子守り娘のお伊勢参り
きょうのイソップ童話 → アリとコガネ厶シ
きょうの江戸小話 → おしょうの約束

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6月14日の世界の昔話 イリーサのおまんじゅう

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 6月の世界昔話

6月14日の世界の昔話

イリーサのおまんじゅう

イリーサのおまんじゅう
インドの昔話 → インドの国情報

♪音声配信

 むかしむかし、あるところに、イリーサという男が住んでいました。
 イリーサは大金持ちなのに、たいへんなけちんぼうです。
「けちんぼうイリーサ。大金持ちのけちんぼうイリーサ」
 みんなはそういって、イリーサをからかいました。
 ある日、イリーサは王さまによばれて、ご殿にいったかえりに、道ばたでおまんじゅうをたべているお百姓にあいました。
 イリーサは、つばをゴクリとのみこみながらいいました。
「おいしそうだなあ。わたしに一つくれないか?」
「だんなはお金持ちでしょう。うちへかえって、たくさんつくればいいじゃないか」
 そういって、お百姓は大きな口をあけて、おいしそうにパクリとたべました。
 イリーサはうちにかえってきても、おまんじゅうのことばかりかんがえて、とうとう頭がいたくなって、ねこんでしまいました。
 おくさんが、イリーサにききました。
「あなた、ご病気ですか? それとも心配ごとですか?」
「ちがうよ」
「わかった。ご殿で王さまに、しかられたのでしょう?」
「ちがうったら」
 イリーサは小さい声で、おくさんにいいました。
「実は・・・、おまんじゅうが、たべたいんだ」
「まあ、ほっほっほ。うちはお金持ちですもの。おまんじゅうぐらい、百個でも千個でもつくりましょう。そうだ、たくさんつくって、町じゅうの人にわけてあげましょう」
 おくさんはニッコリわらいましたが、イリーサは頭をブルブルと横にふりました。
「町じゅうの人だって! とんでもない! そんなにたくさんおまんじゅうをつくるなんて、わたしはぜったいはんたいだ!」
「なぜですか?」
「それだけ、メリケン粉や砂糖(さとう)がへるじゃないか。それに、たきぎだってもったいない。まったくおまえのおかげで、ますます頭がいたくなってきたよ」
「それじゃ、ご近所の人だけにしましよう。子どもたちがきっとよろこぶわ」
「だめだ、だめだ! ご近所にあげるなんて、もったいない!」
「それじゃ、うちでたべるぶんだけつくりましょう。あなたとわたしと子どもたち。それに、めしつかいにも一つずつあげましょうね」
「だめだ! めしつかいにもだなんて、もったいない」
「じゃ、あなたとわたしと子どもたちだけなら、いいでしょう?」
「ふん! 子どもになんか、やるものか」
「こまった人ね。いいわ。あなたとわたしのだけにしましょう」
「えっ? ・・・おまえもたべるのかい? そんなもったいない。わたしのだけ、一つつくればいいんだ。それと、上等の粉や砂糖なんか、つかっちゃいけないよ。みんなに知られないように、コッソリとつくるんだ。いいかい、くれぐれも一つだけだよ」
「はい、はい、はい、はい。・・・ほんとにもう、けちんぼうなんだから」
 おくさんは、すっかりあきれてしまいました。
 イリーサとおくさんは、こっそり七階のへやにあがって、かまどに火をつけました。
 おナベの中で砂糖がとけて、おいしそうなにおいがしてくると、イリーサはソワソワして、あたりを見まわしました。
「だれも、のぞいてないだろうな」
と、いってビックリ。
 見たこともない大目玉の男が、空中にさかだちして、まどからへやの中をのぞきこんでいるではありませんか。
「こらっ、あっちへ行け! おまえにわけてやるおまんじゅうなんかないからな」
 イリーサがあわててどなると、男は知らん顔で、空中にあぐらをかきました。
「しつこいやつだなあ。ぜったいに、おまんじゅうはあげないぞ。そんなことをして、わたしをけむにまこうってつもりかい」
 すると、モクモクモクと、ほんとうに大目玉の男のからだから煙(けむり)が出て、へやじゅうにひろがりました。
 これにはさすがのイリーサも、まいりました。
「エホン、ゴホン。エホゴホン! しかたがない。小さいのを一つつくってやってくれ」
 おくさんが粉をすくってナベにおとすと、「チン」と音をたてて、おまんじゅうはみるみるうちに、ナベいっぱいにふくれあがったではありませんか。
「おお、もったいない。おまえはなんてむだなことをするんだ」
 イリーサは、あわてて大きなおまんじゅうをかくすと、こんどは自分で、ほんの少し粉をおとしました。
 ところが、
「チーン」
 おまんじゅうは、まえまりも、もっと大きくふくれてしまいました。
 つくるたびに、おまんじゅうは大きく大きくふくれるばかりです。
 イリーサは、まっかになってどなりました。
「しがたがない。いちばん小さいのを一つあげなさい」
 おくさんは、カゴからおまんじゅうをとろうとしました。
と、ふしぎなことに、おまんじゅうは一つにくっついて、おばけのように大きくなってしまったのです。
「おまえは、へまばっかりやっている。どれ、わたしにかしてごらん」
 イリーサがカゴに手をいれると、おまんじゅうは、やっぱり一つにくっついてしまいます。
「ふしぎねえ」
 イリーサとおくさんは、おまんじゅうを両方から、ひっぱりっこしました。
 ところが、ひっぱればひっぱるほど、おまんじゅうはくっついてしまうのです。
 二人とも、もうヘトヘトにつかれてしまいました。
 それでも、おまんじゅうはちぎれません。
「ええい、にくいまんじゅうめ! もう、カゴごとおまえさんにくれてやる」
 腹をたてたイリーサは、おまんじゅうのはいったカゴを、ポイとまどの外になげました。
 すると、大目玉の男は、
「ありがとう。さっそく町の人たちにわけてあげますよ」
と、カゴをヒョイと肩にかけて、どこかへ消えてしまいました。
「へんなやつだなあ」
「ほんとにねえ」
 おくさんはニコニコして、けちんぼうでないイリーサを見ました。
「でも、あなた。よいことをしましたね」
「ああ、おなかはすいたけど、こころがあったかくなってきたよ」
 イリーサは、満足そうにいいました。
 おまんじゅうはたべられませんでしたが、良いことをすると、こころがあったかくなるのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 日記の日
きょうの誕生花 → しもつけ
きょうの誕生日 → 1944年 椎名誠(小説家)


きょうの日本昔話 → 山寺の菩薩
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6月13日の世界の昔話 ズルタンじいさん

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 6月の世界昔話

6月13日の世界の昔話

ズルタンじいさん

ズルタンじいさん
グリム童話 →グリム童話の詳細

♪音声配信

 むかしむかし、ズルタンという、年取ったイヌがいました。
 ある日、ズルタンは飼い主のお百姓(ひゃくしょう)さん夫婦(ふうふ)が、ヒソヒソ話をしているのを聞きました。
「あのイヌは歯が一本もなくて、泥棒もつかまえられない。もう役に立たないから殺してしまおう。むだなめしを食わせるほど、家は金持ちじゃないからね」
 ズルタンは悲しくなって、仲のいいオオカミに会いに行きました。
 すると、オオカミが言いました。
「良い考えがある。明日、おれがあんたの飼い主の子どもをさらうから、追いかけてくるんだ。森の中であんたに子どもをわたしてやるよ。飼い主はあんたがオオカミから子どもの命をすくった思って、きっと大事にしてくれるようになるぜ」
 オオカミの計画は、とてもうまくいきました。
 お百姓さんもおかみさんも、ズルタンを死ぬまでかわいがり、大事にするとちかったのです。
 すっかり楽な暮らしになったズルタンに、今度はオオカミがこんな事をいいました。
「あんたの飼い主のヒツジをさらうけど、この前助けてやったんだから見のがしてくれるよな」
「それはだめだ、ほかの事ならともかく、ヒツジを守るのはワシの仕事だ」
 オオカミはズルタンに腹を立てました。
「よし、あした森に来い。決闘(けっとう)だ! 思い知らせてやるぞ!」
 だけど、オオカミと年寄りのズルタンでは、オオカミの勝ちに決まっています。
 そこでオオカミは、助太刀(すけだち)を一人つれてきてもいいといいました。
 でも、ズルタンの助太刀なってくれるのは、同じ家にすんでいる、三本足のネコしかいませんでした。
 ネコは歩くと足が痛いので、しっぽをピンと高く立てていました。
 オオカミはイノシシに助太刀をたのみ、森の中で待ちかまえていました。
 ところが、ネコのまっすぐなしっぽが長い剣に見えたのでビックリ。
「あいつを甘く見ていたな!」
「だがネコのやつ、いやにゆっくりだな。きっと石をひろいながら近づいてきているんだ」
 こわくなったオオカミとイノシシは、草のしげみにかくれました。
 しかし、イノシシの耳がしげみからはみ出て、ピクピクと動いています。
「あっ、ぼくの大好物のネズミだ!」
 ネコが大喜びでイノシシの耳にかみつくと、イノシシはひめいを上げて逃げていきました。
 オオカミはビクビクかくれているところを見られて、とてもかっこわるく思いました。
「歯が一本もなくても、あんたは強いイヌだ。もう、あんたの家のヒツジをおそうことはしないよ」
 ズルタンとオオカミは、また仲なおりしました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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きょうの誕生日 → 1960年 山田邦子(タレント)


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6月12日の世界の昔話 アトリの鐘

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6月12日の世界の昔話

アトリの鐘

アトリの鐘
イタリアの昔話 → イタリアの国情報

♪音声配信

 むかしむかし、イタリアのアトリという町のお話です。
 ある日、王さまの命令で、町の広場の塔(とう)に大きな鐘(かね)がつるされました。
 鐘からは、長いつなが下がっています。
「どんな音がするのだろう?」
 町の人たちは塔をとりかこんで、むねをわくわくさせながら王さまがくるのを待ちました。
 やがて馬車(ばしゃ)でやってきた王さまが、集まった人びとにこういいました。
「この鐘は、ただ時刻を知らせたり、音を聞くだけのものではない。『正しさの鐘』として、ここにつるしたのじゃ」
「正しさの鐘?」
 人びとは、ふしぎそうに王さまを見つめました。
「そうじゃ『正しさの鐘』じゃ。おまえたちのうちのだれでも、もし人にいじめられたり、つらいめにあわされたりしたら、ここへきて鐘をならせばよい。鐘がなれば裁判官がすぐにきて、おまえたちのいい分を聞いてくれる。そして、何が正しいかをきめてくれるであろう」
「だれが鐘をならしても、よろしいのですか?」
「だれがならしてもよい。子どもでもよいぞ。見よ。そのためにつなは、このように長くしてあるのじゃ」
 こうしてアトリの町では、その日から、人につらいめにあわされた人や、あらそいごとのある人は塔の下にきて、鐘をならすようになりました。
 そして王さまのおっしゃったとおり、鐘がなると裁判官がやってきて、だれが正しいか、何が真実(しんじつ)かをきめてくれるのです。
 鐘のおかげで町のみんなは、楽しく毎日をすごせるようになりました。
 そして長い年月のあいだに、大ぜいの人がつなをひっぱったので、つながきれて、新しいつなができるまで、ブドウのつるがさげられることになりました。
 さて、アトリの町はずれに、一人の金持ちの男が住んでいました。
 この男は若いころはウマにのって悪者をたくさんやっつけた、いさましく正しい人でした。
 でも年を取るにしたがって、だんだんといじわるのけちん坊になってしまったのです。
 ある日、金持ちは考えました。
「もっとお金をためる方法はないだろうか。・・・そうだ。ウマにエサをやらなければいいんだ」
 こうして、むかしはいっしょにかつやくしたウマなのに、エサをやるのをやめてしまったのです。
 やせほそったウマはヨロヨロしながら、やっとアトリの町へたどりつきました。
 そして広場の塔の下まで来ると、つなのかわりに下がっていたブドウのつるの葉を、ムシャムシャ食べ始めたのです。
 ガラン、ガラン。
 ウマが食べるたびに、鐘が、ガラン、ガランとなりました。
 町の人たちも裁判官も広場に飛んできて、そのウマを見ました。
「かわいそうに、こんなにやせている」
「ウマは口がきけないから、鐘をならして、つらいことをうったえているのだ」
 すぐに飼い主だった金持ちが、広場によばれました。
 裁判官は、金持ちにいいました。
「このウマは、今までとてもあなたの役に立ってきたはず。あなたのためたお金の半分は、このウマの物ではありませんか?」
 金持ちの男の人は、ブドウの葉を食べているウマを見ているうちに、胸がいっぱいになりました。
 自分がどんなにひどいことをしたか、ようやくわかったのです。
 そしてそれからはウマを大切にして、いつまでもなかよくくらしました。
 アトリの鐘は、ウマにとっても『正しさの鐘』だったのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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きょうの誕生日 → 1978年 釈由美子(タレント)

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きょうの世界昔話 → アトリの鐘
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6月11日の世界の昔話 ガリバーのぼうけん

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6月11日の世界の昔話

ガリバーのぼうけん

ガリバーのぼうけん
スウィフトの童話 → スウィフトの童話の詳細

♪音声配信

 むかしむかし、あるところに、ガリバーという若者がいました。
 ガリバーは海が好きで、船に乗りこんでは、あちらこちらと旅を続けています。
 ところがあるとき、はげしいあらしにまきこまれて、船はしずんでしまいました。
 さて、どれくらいたったのでしょう。
 海に投げ出されたガリバーが、ふと気がつくと、からだをなわでしばられて地面にねかされていました。
 あたりを見回すと、なんと、かぞえきれないほどの小人たちが集まっているのです。
「なんと、知らないうちに、小人の国へ流れついたというわけか」
 小人たちはガリバーをろう屋へ運ぶと、逃げ出せないよう、くさりでグルグルまきにしばりあげてしまいました。
 それから何日かたったある日、小人の王さまが、ガリバーを見にやってきました。
「王さま!」
 ガリバーは、王さまにいいました。
「あばれたりはしませんから、どうか、くさりをはずしてください」
「・・・ふむ。体は大きいが、おまえは悪者(わるもの)ではなさそうだ。のぞみをかなえてやるとしょう」
「ありがとうございます」

ガリバーと王さま

 よろこんだガリバーは、町の見物(けんぶつ)に出かけました。
 小人の町の建物(たてもの)は、とても小さいものばかりで、ガリバーは建物や人をふみつぶさないよう、下ばかり向いています。
 さて、そんなある晩、お城で火事がおこりました。
「これは大変。・・・そうだ」
 ふと思いついたガリバーは、じぶんのボウシで池の水をすくうと、お城の上へバシャンとかけました。
「すごい、あっというまに、火を消してしまったぞ」
 ガリバーの人気は、ますます高まるばかりです。
 そこへ、知らせがとどきました。
 海の向こうの小人たちが、こちらの国へせめこんでくるというのです。
 ガリバーが持っていた望遠鏡(ぼうえんきょう)でのぞいてみると、海の上には、敵の国の小人の乗った船がギッシリです。
「よし、わたしにまかせてください」
 ガリバーは、つり針のようなものをたくさん作ると、それを持って海ヘ入っていきました。
「わあ、大男だあ!」
 ビックリした敵の国の小人たちは、ビュンビュンと矢を飛ばしてきますが、
「なんのこれしき。さあ、つかまえてやるぞ」
 ガリバーはつり針を船の一つ一つに引っかけると、全部まとめて、浜辺へ引っぱりあげてしまいました。
 それを見た敵の国の王さまは、
「まいりました。二度とせめこんだりはしませんから、許してください」
と、あやまってきたのです。
 小人たちはよろこんで、ガリバーをほめたたえました。
「ばんざい、ばんざい。ガリバー、ばんざい」
ところがまた、こまったことがおこりました。
 ある日、ガリバーと仲のよい小人たちが、ガリバーのところへ走ってきたのです。
「大変です。王さまと大臣(だいじん)が、ガリバーさんを殺す相談(そうだん)をしています。このままだと、ガリバーさんが王さまになるかもしれないからって」
「それはたいへん。でも、どうすればいいのだろう?」
「だいじょうぶです。いっしょに浜まで来てください」
 見ると浜辺の岩のかげに、一そうの大きなボートがかくしてありました。
「これに乗って、あなたの国へお帰りなさい。無事に帰れるよう、みんなでおいのりしていますから」
「ありがとう。みんなのことは忘れないよ」
 こうしてガリバーは、無事にふるさとの家へ戻ることができたのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 雨漏り点検の日
きょうの誕生花 → べにばな(すえつむはな)
きょうの誕生日 → 1965年 沢口靖子(俳優)


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きょうの世界昔話 → ガリバーのぼうけん
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6月10日の世界の昔話 ヘビの魔法

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6月10日の世界の昔話

ヘビの魔法

ヘビの魔法
タンザニアの昔話 → タンザニアの国情報

♪音声配信

 むかしむかし、にいさんと妹の、二人のきょうだいがいました。
 にいさんはいじわるで、とてもよくばりでしたが、妹は美しくて気のやさしい娘でした。
 お父さんが死ぬと、にいさんはお父さんのお金や持ちものを、みんな自分一人のものにしてしまいました。
 妹には、たった一つぶのトウモロコシさえ、わけてやらなかったのです。
 しかたなく妹は、ヘやのすみにのこっていた、たった一つのカボチャのタネをうら庭にうえて、だいじにそだてました。
 カボチャは、じきに大きくなり、まいにち、まいにち、おいしい実がいくつもできました。
 妹は、そのカボチャを売って、なんとかくらしていました。
 ある日、にいさんが妹の家にやってきました。
「おい、カボチャ畑はどこだ」
「あら、にいさん。うら庭ですよ。でもにいさん、カボチャを見てどうするんです?」
と、妹が聞きました。
「根こそぎ、ぬいてやるのさ。こんなすばらしいカボチャは、おまえには、もったいない」
 妹はにいさんのあとを追って、いそいでカボチャ畑へいきました。
 にいさんはナイフをつかんで、いまにもカボチャのくきをきろうとしています。
「おねがいです。これがなかったら、あたしはくらしていけないんです!」
 妹はカボチャのきられないよう、くきを手でしっかりとにぎりました。
「ふん! 関係ないね!」
 にいさんはかまわず、カボチャのつるといっしょに、妹の右手をきりおとしてしまいました。
 右手をきりおとされた妹は、ワッと、なきだすと、むちゅうで森へにげていきました。
 それから、けものにおそわれないように木にのぼって、シクシクとなきつづけました。
 なみだがほおをつたって、あとからあとからながれました。
 そこへ、よその国の王子が、狩りをするためにここを通りかかりました。
「ここでしばらく休んでいこう。ひと休みしてから、また狩りをつづけよう」
と、いって、王子は右手のない娘がないている、木の下に腰をおろしました。
 娘のなみだが、ポトンと、王子のほおにあたりました。
「おや、雨かな?」
 けれども空は青くすんでいて、雲ひとつ見えません。
 ポトンと、もうひとしずくおちて、王子のほおをぬらしました。
「これはふしぎ。きっと、この木の上になにかがいるんだな」
 王子は木にのぼって、右手のない娘を見つけました。
 その娘があまりにも美しいので、王子はすぐに好きになりました。
 そして、お嫁さんにしようと思いました。
「さあ、もうこわがることはないよ。行くところがないのなら、ぼくのお城へきなさい」
 王子は大きなきれに娘をつつんで、お城ヘ帰りました。
 お城では、王さまもおきさきさまも、美しい娘が気にいりました。
 やがて王子と右手のない娘は結婚して、お城でたのしくくらしました。
 国じゅうの人が、美しくて、わかいおきさきをほめました。
 それといっしょに、わかいおきさきには右手がないといううわさが、国じゅうにひろがりました。
 王子とわかいおきさきには、かわいらしい男の子が生まれました。
 王子とわかいおきさきは、ますますしあわせでした。
 ところがまもなく、王子は遠い地方をおさめるために、ながい旅にでかけることになりました。
 わかいおきさきは、赤ちゃんといっしょにお城にのこりました。
 ちょうどそのころ、お城のある町へ、よその国の男がやってきました。
 その男というのは、わかいおきさきのにいさんだったのです。
 にいさんは、ちっとも働かなかったので、お父さんからもらったお金も持ちものも、すっかりつかいきってしまっていました。
 そして、あっちの村、こっちの町と歩きまわっては、人をだましてお金をとっていたのでした。
 お城の近くにきたにいさんは、わかいおきさきには右手がないといううわさを聞きました。
 そして、王子が旅にでていることをたしかめると、
「こいつはしめた。そのわかいおきさきというのは、妹のやつにちがいない。こりゃあ、運がいいぞ」
と、つぶやいて、お城へでかけていきました。
「王さま、おきさきさま。わたくしは王子さまを、おすくいしにまいりました」
と、にいさんはいいました。
「わかいおきさきになられたかたは魔女(まじょ)です。わたしの国で六度も結婚して、六度も夫をころした女です。王子さまも旅からお帰りになれば、きっと、このおそろしい魔女にころされてしまいます。早くわかいおきさきをころしてしまうほうが、よろしゅうございます」
と、さも、ほんとうらしくはなしました。
 王さまも、おきさきさまも、はじめは信じようとしませんでしたが、でも、にいさんがくりかえし、くりかえしいいますので、とうとう、わかいおきさきをおそろしい魔女だと思いこんでしまったのです。
 そこで王さまとおきさきさまは兵士にいいつけて、わかいおきさきと赤ちゃんを森へ追いだしてしまいました。
 そして、
「王子が帰ったら、わかいおきさきは死んだと、いいましょう」
と、いって、からっぽのお墓を二つつくりました。
 にいさんは王さまをだまして、お金をたくさんもらうと、お城のそばに大きな家をたてました。
 お城から追い出された右手のないわかいおきさきは、ツボを一つ持ったまま、あてもなく森をさまよい歩きました。
「ああ、これから、どうしたらいいのかしら?」
と、わかいおきさきは草の上にすわって、ふかいためいきをつきました。
 すると、そばの草むらからヘビがでてきていいました。
「たすけてください。あなたのツボにかくしてください。追いかけられているんです」
 わかいおきさきは、ツボをころがしてやりました。
 ヘビは、ツボのおくにとぐろをまくと、
「日の光から、ぼくをまもってください。そのかわり、あなたを雨からまもりますから」
と、わけのわからないことをいいました。
 わかいおきさきが聞きかえすひまもなく、もう一ぴきのヘビがあらわれました。
 そして、
「おれのなかまを、見かけなかったかね?」
と、たずねました。
「あっちへ、いきましたよ」
 わかいおきさきは、森のおくを指さしていいました。
 すると、あとからでてきたヘビは、木のあいだをすべりぬけて、いってしまいました。
 ツボのなかのヘビが、ツボからでてきていいました。
「ありがとうございます。ご恩はけっしてわすれません。でも、どうしてこんなところにいるのですか?」
 そこでわかいおきさきは、いままでのことを、のこらずヘビにはなしました。
 するとヘビは、
「ぼくの国へいらっしゃい。ちょっと遠いですが、しんぼうしてください。ぼくを日の光からまもってくださったら、あなたを雨からまもります。きっと、ご恩がえしをいたします」
と、いいました。
 わかいおきさきは赤ん坊をだいて、ヘビのあとから歩いていきました。
 やがて、広い湖につきました。
「ここで、しばらく休みましょう。水をあびていらっしゃい。ぼくはここでひとねむりします」
と、ヘビがいいました。
 湖の水はすきとおっていて、とてもきれいだったので、わかいおきさきは子どものからだをあらいました。
 気持ちがいいのか、子どもは手足をバタバタさせて喜びます。
 ところが、あんまりあばれたので、あっというまに、わかいおきさきの左手からすべりおちて、湖のそこにしずんでしまいました。
 そのとたん、すきとおっていた湖の水が黒くにごりました。
 わかいおきさきは腰まで水につかって、左手でさがしましたが、どんなにさがしても子どもは見つかりません。
 わかいおきさきは、なみだをふこうともしないで、ヨロヨロとヘビのそばに近よりました。
「どっちの手で、さがしたのですか?」
と、ヘビがたずねました。
「まあ、左手にきまっているじゃありませんか。右手は手首までしかないんですから、子どもをつかまえられませんもの」
「では、右手も水につけなさい。きっと、お子さんが見つかりますよ」
 ヘビにいわれて、わかいおきさきは湖にもどりました。
 腰をかがめて、右手と左手を水につけました。
 すると、子どもが両手のあいだにスルリとはいりました。
 わかいおきさきは大喜びで、子どもをだきあげました。
 子どもは、キャッキャッ! と、声をあげて笑います。
 まだ、おぼれていなかったのです。
 わかいおきさきは、子どもをなんどもなんどもだきしめました。
 そのうちに、ふと右手を見ました。
「あら!」
 わかいおきさきは、ビックリ。
 右手がいつのまにか、ちゃんともとどおりになおっているではありませんか。
「まあ、うれしい。ヘビさん、ありがとう」
 わかいおきさきは、おどりあがって喜びました。
「さあ、でかけましょう。ヘビの国の父と母は、ぼくをたすけてくださったあなたにお礼をいうでしょう」
「まあ、お礼なら、もうたっぷりいただいたわ。子どもをたすけてくださったし、右手もなおしてくださったし」
「いいえ、『日の光からまもってくださったら、あなたを雨からまもります』って、いいましたね。まだそのやくそくを、はたしてないのです」
と、ヘビがいいました。
 ながいながい旅をして、やっとヘビ王国につきました。
 わかいおきさきを案内してきたのは、ヘビ王国の王子だったのです。
 ヘビの王さまとおきさきさまは、わかいおきさきとその子どもを、あつくもてなしてくれました。
 二人はヘビ王国で、たのしいまいにちを送りました。
 何ヶ月もすぎて、わかいおきさきは、そろそろ人間の国ヘ帰らなければならないと思いました。
「おや、もうお帰りですか? おなごりおしいですね。父と母が、きっといろいろなおみやげをさしあげるでしょう。でも、けっしてそれをうけとってはいけません。父からは指輪を、母からは小箱をもらってください」
と、ヘビの王子が教えました。
 わかいおきさきがヘビの王さまとおきさきのところへ、おわかれのあいさつにいくと、二人は金や銀や宝石を、わかいおきさきの前につみあげました。
「ありがとうございます。でも、こんなにたくさんおみやげをいただいても、わたくし一人では持ってまいれません。王さまからは指輪を、おきさきさまからは小箱を、いただきとうございます」
と、わかいおきさきがいいました。
「おや? 息子が話したのですね。いいですとも。あなたは息子の命をすくってくださったのですから」
と、いって、ヘビの王さまは指輪をくれました。
「なにか食べ物がいりようでしたら、この指輪にいってください。きっと、お役にたちますよ」
 するとヘビのおきさきが、小箱をとりだして、
「きるものや家がほしかったら、この小箱にいってください。きっと、のぞみがかなえられますよ」
と、いいました。
 わかいおきさきは、なんどもお礼をいって、指輪を指にはめ、小箱をふところにかくしました。
 子どもをだいてヘビ王国をでたわかいおきさきは、お城を追われたときとは見ちがえるほど、いきいきとしていました。
 わかいおきさきは、王子とくらしたお城をめざして歩いていきました。
 ちょうどそのころ、王子はながい旅からお城へもどったところでした。
 そして、わかいおきさきも子どもも、死んでしまったと聞かされた王子は、
「ああ、わたしさえ旅にでなかったら、死んだりはしなかっただろうに」
と、いって、悲しみました。
 王子は朝から晩までなにもたべずに、わかいおきさきと子どもの名をよんで、ヘやにとじこもったきりでした。
 王さまとおきさきさまは、王子が死んでしまうのではないかと心配しました。
 ある日の朝早く、王子はつめたい空気をすってみようと、まどをあけました。
 するとむこうに、見たことのない、りっぱな家が見えました。
(あれは、だれの家だろう? あんなに大きな家に住んでいるのなら、きっと金持ちにちがいない)
 王子は、めしつかいにたずねました。
「王子さま、わたくしもきのう、はじめて気がついたのでございます。人のうわさでは、美しい女の人と子どもが、百人のめしつかいとくらしているそうでございます」
と、めしつかいがいいました。
「今夜、あの家へいってみよう」
 王子が外へでかける気になったと聞いて、王さまもおきさきさまも、ホッとしました。
 太陽がしずんで、すずしい風がふきはじめたとき、王子は新しくたった家に、でかけていきました。
 王子のあとには、王さまとおきさきさまがつづきました。
 そのうしろには、大臣たちが行列をつくりました。
 新しい家というのは、わかいおきさきが小箱にたのんでつくってもらった家だったのです。
 行列の足音を聞いて、わかいおきさきはまどのそばにかけよりました。
 王子たちがくるのを見ると、こんどは指輪にたのんで、ごちそうの用意をしました。
 わかいおきさきは、王子たちを玄関にでむかえました。
 王子は、わかいおきさきを見て、夢かとばかり喜びました。
「おお、生きていてくれたのか! いったい、どこにいたのだ?」
と、王子がたずねました。
 わかいおきさきは、お城を追われてからのできごとを、ありのままはなしました。
「だがどうして、城から追いだされたのだ?」
と、王子がふたたびたずねました。
 すると王さまとおきさきさまが、はずかしそうに、
「よその国の男がきて、わかいおきさきを、おそろしい魔女だといったので」
と、いって、うつむいてしまいました。
 わかいおきさきには、その男はにいさんだということが、すぐにわかりました。
 わかいおきさきがすがたを消したのは、わるいにいさんのためだったということが、国じゅうに知れわたりました。
 いじわるで、うそつきで、欲ばりのにいさんは、すぐさま国を追いだされました。
 それからというもの、わかいおきさきはだれにもじゃまされずに、王子と子どもと三人で、しあわせにくらしました。
 その国には、いまでも、『ヘビをころしては、いけない』というきまりが、あるそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 路面電車の日
きょうの誕生花 → アカンサス(はあざみ)
きょうの誕生日 → 1977年 松たか子(俳優)

きょうの新作昔話 → 忠犬ハチ公
きょうの日本昔話 → テングの隠れみの
きょうの世界昔話 → ヘビの魔法
きょうの日本民話 → おじいさんとカニ
きょうのイソップ童話 → ワシのまねをしたカラス
きょうの江戸小話 → るすばんめがね

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6月9日の世界の昔話 黒ウシの助け

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 6月の世界昔話

6月9日の世界の昔話

黒ウシの助け

黒ウシの助け
イギリスの昔話 → イギリスの国情報

♪音声配信

 むかしむかし、あるところに三人の娘がいました。
 ある日、一番上の娘がいいました。
「お母さん、パンと肉を焼いてください。しあわせをさがしにでかけますから」
 お母さんは、パンと肉を娘にやりました。
 娘は魔法使いのせんたく女のところへいって、これからしあわせをさがしにいくのだと話しました。
 すると、せんたく女は、
「しばらく、わたしの家にとまっていきなさい。そして、まいにちまいにち、うら口から外を見ておいで。なにか見えたら、わたしにいうんですよ」
と、いいました。
 さっそく娘は、うら口から外を見ました。
 はじめの日は、なにも見えませんでした。
 二日目も、なにも見えませんでした。
 三日目に、娘が外を見ていると、六頭だての馬車(ばしゃ)がやってきました。
 すると、せんたく女は、
「あれは、あなたの馬車ですよ」
と、いうので、娘が外へ出てみると、馬車に乗っていた人がおりてきて、娘を馬車に乗せてくれました。
 馬車はそのまま、かけ足でいってしまいました。
 さて、うちでは、二番目の娘がお母さんに、
「お母さん、パンと肉を焼いてください。しあわせをさがしてきますから」
と、いいました。
 お母さんは娘のいうとおり、パンと肉をやりました。
 この娘も、魔法使いのせんたく女のところへいきました。
 そしてやはり、うら口から外を見て、二日すごしました。
 三日目に娘が外を見ていると、四頭だての馬車がきました。
 せんたく女は、
「あれは、あなたの馬車ですよ」
と、いうので、娘が外ヘ出てみると、馬車に乗っていた人が、娘を乗せてくれました。
 そして馬車は、かけ足でいってしまいました。
 こんどは、一番下の娘が出かけたくなって、お母さんにパンと肉を焼いてもらいました。
 そして、せんたく女のところへいきました。
 せんたく女は、
「まいにち、うら口から外を見ておいで。なにか見えたら、わたしにいうんですよ」
と、いいました。
 さいしょの日は、なにも見えませんでした。
 二日目も、なにも見えませんでした。
 三日目になりました。
 娘がうら口から見ていると、黒ウシがひくい声でうなりながらやってきました。
 すると、せんたく女は、
「あれは、あなたのウシですよ」
と、いいました。
 娘はビックリして、なきそうになりました。
 けれども、せんたく女にいわれたとおり外に出ました。
 すると黒ウシがまっていたので、娘は黒ウシによじのぼりました。
 娘が黒ウシの背中にすわると、黒ウシはかけだしました。
 ドンドンすすんでいくうちに、娘はだんだん、おなかがすいてきました。
 やがて、おなかはペコペコになって、今にも気が遠くなりそうです。
 するとそれに気がついたのか、黒ウシが娘にいいました。
「わたしの右の耳からたべなさい。そして、左の耳から飲みなさい」
 娘は、いわれたとおりにしました。
 たべおわると、娘はとても元気になりました。
 ウシは娘を乗せたまま、なおもすすんでいきました。
 やがて、りっぱなお城が見えてきました。
 すると黒ウシは、
「こんやは、あのお城にとまりましょう。わたしの兄が住んでいますから」
と、いいました。
 まもなく、お城につきました。
 お城の人が出てきて、娘を黒ウシの背中からおろして、城の中へ案内してくれました。
 黒ウシは、草地につれていかれました。
 朝になると、お城の人は娘を、りっぱなへやにつれていきました。
 そして娘に、リンゴを一つわたしていいました。
「なにかこまったことがあったら、このリンゴをわりなさい。きっと、あなたはたすけてもらえます」
 娘はふたたび、黒ウシの背中に乗りました。
 黒ウシは娘を乗せて、ドンドン、ドンドンすすみました。
 しばらくすると、まえよりももっと美しいお城が見えてきました。
 すると黒ウシは、
「こんやは、あそこヘとまりましょう。わたしの二番目の兄が住んでいます」
と、いいました。
 お城につくとお城の人たちが出てきて、娘を黒ウシからおろして、お城の中へ案内してくれました。
 黒ウシは、草地ヘつれていかれました。
 朝になると、お城の人は娘をりっぱなヘやへつれていって、きれいなナシをわたしました。
「なにかこまったことがあったら、このナシをわりなさい。きっと、あなたはたすけてもらえます」
と、お城の人がいいました。
 娘は黒ウシの背中に乗って、また旅をつづけました。
 黒ウシがズンズンすすんでいくと、まえのふたつよりもずっと大きなお城が見えてきました。
「こんやは、あそこにいかなきゃなりません。わたしの一番下の兄が住んでいるのです」
と、黒ウシがいいました。
 お城につくと、お城の人たちがやってきて、娘を中に案内してくれました。
 黒ウシは、やはり草地につれていかれました。
 朝になると、娘は一番りっぱなへやヘつれていかれました。
 お城の人は、娘にスモモをわたして、
「なにかこまったことがあったら、このスモモをわりなさい。きっと、あなたはたすけてもらえます」
と、いいました。
 娘は、黒ウシの背中に乗りました。
 黒ウシは、またドンドンすすみました。
 そして、うすぐらい谷間にやってきました。
 黒ウシは足をとめて、娘をおろしました。
 黒ウシは娘に、
「あなたはここにいなくてはいけません。わたしは、ちょっとつよいやつと戦ってきますから、あなたはあの石の上にすわっていてください。そして、わたしが帰るまで、手も足も動かしてはいけませんよ。もしあなたがちょっとでも手や足を動かすと、わたしが勝ってもどってきても、あなたを見つけだすことができなくなってしまうのです。もし、あたりが青くそまったら、わたしはそいつをやっつけたと思ってください。赤くそまったら、わたしはやられてしまったと思ってください」
と、いって、いってしまいました。
 そこで娘は、石の上に腰をおろしました。
 しだいに、あたりが青くなってきました。
 黒ウシが、勝ったのです。
 娘はうれしさのあまり、つい、足を組みあわせてしまいました。
 黒ウシはもどってきて、娘をさがしました。
 しかし、どうしても見つかりません。
 娘は、ながいことすわって黒ウシを待ちましたが、黒ウシは現れません。
 娘はシクシクと泣きましたが、やがてたちあがって、歩きだしました。
 けれども、いくあてもありません。
 歩きまわっているうちに、ガラスの丘につきました。
 娘はなんとかして、ガラスの丘にのぼろうとしましたが、どうしてものぼれません。
 娘は泣きながら、ガラスの丘のふもとをグルリとまわりました。
 ウロウロ歩いているうちに、娘はかじやの店のまえに出ました。
 かじやは、
「七年のあいだうちで働いたら、鉄のクツをつくってやろう。そうすれば、ガラスの丘にのぼることができるだろう」
と、いいました。
 そこで娘は七年のあいだ働いて、鉄のクツをもらいました。
 そして、ガラスの丘をのぼったのです。
 そこには、もう一人のせんたく女の家がありました。
 家の中には血だらけの服をきた、わかい騎士(きし)がいました。
 なんでも、その服をきれいにあらったものが、騎士のおくさんになれるということです。
 せんたく女は、いっしょうけんめいあらいました。
 けれど、どんなにあらっても、血はとれませんでした。
 こんどは、せんたく女の娘があらってみました。
 どんなにゴシゴシこすっても、血はすこしもおちません。
 そこで、鉄のくつをはいてきた娘があらってみました。
 すると、血はみるみるうちにおちて、服はきれいになりました。
 ところが、せんたく女の娘は、
「服をきれいにしたのは、わたしです」
と、騎士にうそをつきました。
 こうして騎士とせんたく女の娘が、結婚することになりました。
 これを知ると、鉄のくつをはいた娘は、ひどくガッカリしました。
 一目見たときから、騎士が大好きになっていたからです。
 娘はふと、リンゴのことを思いだしました。
 リンゴをわってみると、中から金や宝石が出てきました。
 娘は、せんたく女の娘に、
「これをみんなあげるわ。そのかわり、結婚するのを一日だけのばしてちょうだい。そしてこんや、わたしを騎士のヘやにはいらせてください」
と、たのみました。
 せんたく女の娘は金と宝石をもらって、娘の申し出を承知(しょうち)しました。
 ところがせんたく女は、騎士にねむりぐすりを飲ませたのです。
 騎士はねむりぐすりをのんで、朝までグッスリとねむってしまいました。
 娘は騎士のべッドのそばで、夜どおし泣いていました。
 そして、
♪七年のあいだ、あなたのために、つくしました。
♪ガラスの丘をよじのぼり、
♪きものの血も、あらったわ。
♪それでも、あなたはねているの。
♪こっちをむいて、くださらないの。
と、うたいました。
 つぎの日、娘は悲しくて悲しくて、どうしてよいかわかりませんでした。
 そしてふと、ナシをわってみました。
 ナシの中には、まえよりもずっとたくさんの、宝石や金がはいっていました。
 これを、せんたく女の娘にやって、
「もう一日、結婚をのばしてください。そしてもうひと晩、騎士のへやにはいらせてください」
と、たのみました。
 せんたく女の娘は、承知しました。
 けれども騎士は、その晩もせんたく女にねむりぐすりを飲まされて、朝までグッスリねてしまいました。
 娘は、ため息をついて、
♪七年のあいだ、あなたのために、つくしました。
♪ガラスの丘をよじのぼり、
♪きものの血も、あらったわ。
♪それでも、あなたは、ねているの。
♪こっちをむいて、くださらないの。
と、うたいました。
 つぎの日、騎士がかりに出かけると、なかまの一人がいいました。
「きみのヘやから聞こえる音はなんだ? うめき声となき声と、歌をうたう声が聞こえるぞ」
と、いいました。
「? ・・・ぼくは、なんにも知らない」
と、騎士はいいました。
 けれどもなかまはみんな、すすりなきを聞いたというのです。
 そこで騎士は、こんやは一晩じゅうおきて、見はっていることにしました。
 三日目の晩に、なりました。
 娘はスモモをわりました。
 中からは、リンゴをわったときよりも、ナシをわったときよりも、ずっとずっと、すばらしい宝石が出てきました。
 この宝石で、娘はまた、騎士のへやにはいることができました。
 せんたく女は、またしてもねむりぐすりを騎士のところへ持っていきました。
 すると騎士は、
「ハチミツをいれて、あまくしてくれ」
と、いって、せんたく女にハチミツをとりにいかせました。
 せんたく女がいっているすきに、騎士はねむりぐすりをすててしまいました。
 騎士はべッドに入っていると、やがて娘がやってきて、うたいはじめました。
♪七年のあいだ、あなたのために、つくしました。
♪ガラスの丘をよじのぼり、
♪きものの血も、あらったわ。
♪それでも、あなたは、ねているの。
♪こっちをむいて、くださらないの。
 騎士は起き上がると、娘のほうをむきました。
 娘は騎士に、なにもかも話しました。
 この騎士こそ、あの黒ウシだったのです。
 魔法で黒ウシにされていた騎士は、『つよいやつ』と戦って勝ったので、人間のすがたにもどったのです。
 それから谷間で娘をさがしたのですが、あのとき娘が足をくんでしまったので、見つけることができなくなってしまったのでした。
 あくる日、せんたく女とその娘は追いだされました。
 そして騎士と娘は、めでたく結婚したのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ネッシーの日
きょうの誕生花 → きょうがのこ(しもつけそう)
きょうの誕生日 → 1934年 ドナルドダック (漫画キャラ)


きょうの日本昔話 → 雄ジカの目
きょうの世界昔話 → 黒ウシの助け
きょうの日本民話 → 殿さまはもの知らず
きょうのイソップ童話 → 2匹のコガネ厶シ
きょうの江戸小話 → ダイコンが白いわけ

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6月8日の世界の昔話 お見あい

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 6月の世界昔話

6月8日の世界の昔話

お見あい

お見あい
グリム童話 → グリム童話の詳細

♪音声配信

 むかしむかし、あるところに、ヒツジ飼いの若者がいました。
 お嫁さんをもらおうと思いましたが、知りあいの三人姉妹は、三人が三人ともきれいなので、どの娘をお嫁にえらんだらよいか、どうしてもきめることができません。
 そこでお母さんに相談してみると、お母さんはこういいました。
「それはね、三人の娘さんをいっしょによんで、ごちそうにチーズをだしておくんだよ。娘さんたちがどんな切りかたをするか、気をつけて見ているんだよ」
 息子はすぐにチーズを用意して、娘たちをよびました。
 一番上の娘は、チーズを皮ごとほおばってしまいました。
 二番目の娘は、おおいそぎで皮のところを切りとりましたが、あんまりあわてたものですから、まだいいところがたくさんくっついているのに、皮といっしょにすててしまいました。
 三番目の娘さんは、てぎわよくきれいに皮をむきました。
 そのことを息子がお母さんに話しますと、
「三番目の娘をお嫁さんにしなさい」
と、お母さんはいいました。
 息子はそのとおりにして、この娘さんと一生なかよくしあわせにくらしました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → バイキングの日
きょうの誕生花 → でいこ(アメリカでいこ)
きょうの誕生日 → 1955年 金子修介(映画監督)

きょうの新作昔話 → アルキメデス 金の冠の重さ
きょうの日本昔話 → みそさざいは鳥の大将
きょうの世界昔話 → お見あい
きょうの日本民話 → ツバメを愛した娘
きょうのイソップ童話 → アリに刺された男とヘルメス
きょうの江戸小話 → いうにいわれず

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6月7日の世界の昔話 ローザとジバル

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 6月の世界昔話

6月7日の世界の昔話

ローザとジバル

ローザとジバル
クロアチアの昔話 → クロアチアの国情報

♪音声配信

 むかしむかし、あるところに、三人の娘をもったお金もちの商人(しょうにん)がいました。
 上の二人はわがままで、一日じゅう、おしゃれをすることばかり考えていました。
 けれども、いちばん下のローザは、気だてのやさしいお父さん思いの娘でした。
 お父さんは、運のわるいことがつづいて、財産をすっかりなくしてしまいました。
 でもわずかですが、まだ遠くの町に、お金があずけてあります。
 そこでお父さんは、お金をとりに、旅にでかけることにしました。
 ところが上の娘たちは、お父さんがびんぼうになったって、そんなことはおかまいなしです。
「お父さん。おみやげには、絹(きぬ)のきものと宝石を買ってきてね」
と、ねだりました。
 お父さんは、だまっている下の娘にたずねました。
「ローザ。おまえはなにがほしいかね?」
「小さなバラの花を一本ください。ほかのものは、なにもいりませんわ」
と、ローザはこたえました。
 お父さんは、遠くの町まででかけました。
 その帰りにお父さんは道にまよって、いつのまにか深い森の中へはいってしまいました。
 あいにくの大雨で、びしょぬれです。
 しかも運のわるいことは続くもので、強盗(ごうとう)にあって、お金もウマも荷物も、そっくりとられてしまったのです。
 お父さんは雨の森をあてもなく、トボトボと歩いていきました。
 ふと見ると、遠くのほうにあかりが見えます。
 お父さんは、そのあかりをめざして歩いていきました。
 そして、ご殿のようにりっぱな家の前にでました。
 お父さんはヘトヘトにつかれており、しかもおなかはペコペコです。
 思いきって、中へはいってみました。
 そこは台所で、だれもいないのに、かまどがあかあかともえていました。
 お父さんは、ぬれたきものをかわかすと、つぎのへやへはいってみました。
 そこは、食堂でした。
 だれもいないのに、テーブルには食事のしたくがしてあって、スープがおいしそうなにおいをたてていました。
 お父さんは、もうたまらなくなって、スープを飲みはじめました。
 するとおどろいたことに、スープを飲みおえると、いつのまにかお皿がかわって肉がでてきました。
 こうしてお皿はつぎつぎとかわって、さいごにはコーヒーまででたのです。
 おなかがいっぱいになったので、お父さんはとなりのへやへはいってみました。
 そこにはりっぱなベットがあって、いつでもねられるようになっていました。
 お父さんは絹のふとんにくるまって、朝までグッスリとねむりました。
 あくる朝、お父さんがおきると、食堂には朝の食事ができていました。
 お父さんは食事をすましてから、庭にでてみました。
 そこは、いままで見たこともないほど美しい庭で、ありとあらゆる果物(くだもの)がなり、美しい花がさいていました。
 バラの花を見たとき、お父さんはローザとのやくそくを思いだしました。
「そうだ。一本だけ、もらっていこう」
 お父さんが一本のバラを、おったとたん、とつぜんおそろしいもの音がして、おそろしいすがたの魔物があらわれました。
「わしの家にだまってはいって、たいせつなバラをぬすむとはなにごとだ! おまえの首をヘしおってやるぞ!」
 お父さんはおどろいて、自分のふしあわせな旅の話や、ローザとのやくそくのことをはなしました。
 すると魔物は、こわい声でいいました。
「では、わしのたいせつなバラをおったかわりに、おまえのいちばんだいじなものをよこせ。下の娘のローザをつれてこい。わしの妻にする。それがいやなら、いますぐおまえの首をへしおってやる!」
 しかたがありません。
 お父さんは魔物に娘をつれてくると約束して、やっと家へ帰してもらいました。
 お父さんは家に帰ると、むかえにでたローザにバラをわたして、さめざめとなきました。
「おとうさま。どうなさったの? どんなにびんぼうになってもいいじゃありませんか。みんなでなかよくやっていけますわ」
と、ローザはお父さんをなぐさめました。
「ああ、ローザ。えらいことになってしまったんだよ。わたしの命よりも大切なおまえが・・・。そうだ、かわいいおまえをやるくらいなら、わたしの命をとられたほうがましだ」
 お父さんはなきながら、魔物とのやくそくをローザにはなしました。
「お父さん。なかないでください。わたしはお嫁にいくだけで、死ぬわけではないのでしょう。・・・それに、きっと神さまがまもってくださいますわ」
 あくる日、お父さんはローザをつれて、魔物のご殿へでかけました。
 ご殿では、二人ぶんの食事が用意してありました。
 お父さんは娘とわかれの食事をして、ションボリと帰っていきました。
 さて、一人のこされたローザは、いつ魔物がでてくるかと、ビクビクしながらご殿の中を見てまわりました。
 魔物のご殿ですが、どのへやもどのへやも美しくかざられており、若い娘のよろこびそうなものが、いっぱいありました。
 ご殿じゅうをさがしても、魔物はどこにもいませんでした。
 魔物だけでなく、めしつかいのすがたも見えません。
 けれどもどこかで見ているのか、ローザがしたいと思うことは、なんでもしてくれました。
 ローザは、どこからともなく聞こえてくる音楽を聞きながら、夕食をたべて美しいへやでねむりました。
 ローザが魔物にあったのは、つぎの日の朝でした。
 ローザは、世界じゅうの花を集めたような、すばらしい花だんをさんぽしていました。
 すると、ものすごい地ひびきがして、むこうからおそろしいすがたをした魔物が、わめきながらやってきたのです。
 ローザはこわくてこわくて、気が遠くなりそうでした。
 けれども魔物はローザに気がつくと、きゅうにしずかになって、ローザにやさしくいいました。
「こわがらないでおくれ。わしは、わるいものではない。どうか、このご殿でしあわせにくらしておくれ」
 そして魔物は、そっといいました。
「ローザ、わしにキスしてくれないか?」
 ローザは、まっさおになりました。
 どうして、こんなおそろしい魔物にキスができるでしよう。
 こわがるローザを見ると、魔物はかなしそうにいいました。
「いや、いいんだよ。いやならしかたがない。ビックリさせてすまなかった。・・・おまえが心からキスしてくれるまで、わしはいつまでもまっているよ」
 こうしてローザは、魔物のご殿でくらしはじめました。
 魔物は、ジバルといいました。
 ジバルにあうのは、まい朝、八時から九時のあいだだけでした。
 まい朝あって話をするうちに、だんだんジバルがこわくなくなりました。
 いいえ、それどころか、ジバルにあうのがまち遠しくなってきたのです。
 けれども、キスをする気持には、どうしてもなれません。
 いつのまにか、一年がすぎました。
 ローザは、家がこいしくなりました。
(お父さんたちは、どうしているかしら?)
 そう思うと、もうたまらなく、お父さんの顔が見たくなりました。
 ローザのねがいを、ジバルは聞いてくれました。
「そんなにあいたいのなら、いかせてあげよう。今夜はいつものようにねなさい。あしたの朝は、お父さんの家で目をさますだろう。そして帰るときは、ねる前にここに帰りたいと言えばいい。だが、あさっては、かならず帰ってきておくれ。でないと、おまえもわしも、とんでもないことになる。どうかそれだけは、わすれないでおくれ」
 あくる朝、目をさましたローザは、なつかしいお父さんの家にいました。
 お父さんは夢かとばかりよろこんで、ローザをだきしめます。
 ローザは魔物のご殿でのくらしをはなして、お父さんを安心させました。
「お父さん。心配しないでください。ほしいものはなんでももらえますし、ジバルは見たところはおそろしい魔物ですが、とてもやさしいのです。わたくしを、それはだいじにしてくれますの」
 二人のねえさんは、ローザのしあわせそうなようすを見て、しゃくにさわりました。
 魔物にひどい目にあわされていると思ったのに、ローザはまるでお姫さまのように、りっぱなきものをきて、ますます美しくかがやいているからです。
 ねえさんたちは、妹をふしあわせなめにあわせてやろうと思いました。
 妹がやくそくの時間に帰らないと、たいへんなことになるというと、いかにもかなしそうに、こういいました。
「たった一日で帰るなんて、じょうだんじゃないわ。まさか、そんな親不孝なことはしないでしょうね。お父さんと魔物とどっちがだいじなの? わたしたちだって悲しいわ」
 心のやさしいローザは、魔物とのやくそくが気になりましたが、つい一日、帰りをのばしてしまいました。
 つぎの日の夜、ローザはジバルの顔を思い浮かべて、
「あしたの朝、ジバルのところへ帰ります」
と、いいながら目をつぶりました。
 次の日の朝、ローザは魔物のご殿のしんだいの上で目をさましました。
 ローザは、すぐに庭にでました。
 でも、いつもの八時になっても、ジバルはあらわれません。
「ジバル、ジバル。ジバルはどこなの?」
 ローザは大声でよびながら、庭じゅうをさがしまわりました。
 すると、ジバルは庭のすみのしげみのかげに、死んだようにたおれていました。
 ローザの目から、どっとなみだがあふれでました。
「ああ、ジバル、ゆるして。わたしのだいじなジバル」
 ローザはなきながら、ジバルのそばにひざまずいて、キスをしました。
 するととつぜん、ジバルのみにくい魔物の皮がおちて、世にも美しい、りっぱな若者が立ちあがったのです。
 若者はローザを、しっかりとだきしめました。
 ジバルは遠くの国の王子で、もう七年のあいだ、魔法をかけられていたのです。
 そしてローザという名の娘に、心からキスをしてもらわなければ、もとのすがたにもどれなかったのです。
 ジバル王子とローザは、お父さんと二人のねえさんといっしょに、王子の国ヘもどりました。
 王子の魔法がとけたというしらせに、国じゅうの人びとが喜びました。
 ジバル王子と心のやさしいローザは結婚して、いつまでもしあわせにくらしました。

 このお話は、有名な『美女と野獣』の類話です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 母親大会記念日
きょうの誕生花 → くちなし
きょうの誕生日 → 1949年 岸部四郎(俳優)


きょうの日本昔話 → 夕やけナスビ
きょうの世界昔話 → ローザとジバル
きょうの日本民話 → サルの一文銭
きょうのイソップ童話 → カとライオン
きょうの江戸小話 → ひとりかご

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6月6日の世界の昔話 エンドウ豆の上のお姫さま

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 6月の世界昔話

6月6日の世界の昔話

□エンドウ豆の上のお姫さま

エンドウ豆の上のお姫さま
アンデルセン童話 → アンデルセン童話の詳細

♪音声配信

 むかしむかし、ある国に王子さまがいました。
 王子さまも年頃で、そろそろ、おきさきをむかえたいと思いました。
 けれど王子さまにふさわしいおきさきは、本物の完全なお姫さまでなくてはなりません。
 そこで王子さまは、世界じゅうを旅して回り、どこから見ても完全なお姫さまをさがしました。
 ところが、どのお姫さまも、美人でなかったり、品がなかったりして、どうしても王子さまのおめがねにかないません。
 王子さまはガッカリして国へもどると、すっかり気持ちが沈んでしまいました。
 そんなある夜のこと、ひどいあらしの中をだれかがたずねてきました。
 城の門をあけると、雨にぐっしょりぬれたひとりの娘が立っていました。
「わたしは、王子さまがおさがしになっている、本物の姫です」
 娘がそういうので、その夜は城にとめてやることにしました。
「ほんとうのお姫さまかどうかは、すぐにわかることですよ」
 王子さまのお母さんはそういうと、娘のベッドにちょっとした工夫をしました。
 まず一粒のエンドウ豆を置き、その上にしきぶとんを二十枚もかさねて、さらに二十枚の羽根ぶとんをかけた上に、娘を寝かせたのです。
 つぎの朝、お母さんは娘に、ベッドの寝心地(ねごこち)はどうだったかたずねました。
 すると娘は、眠そうな目をこすりながら、
「せっかくのおもてなしですが、寝心地が悪くて、少しも眠れませんでしたわ」
と、答えたのです。
 お母さんはさらに聞きました。
「寝心地がわるいといいましたが、どのように悪かったのですか?」
「はい。ベッドの下に、なにかが入っていたのではありませんか。背中にあざがついてしまいました」
 お母さんは、娘が本当のお姫さまだと思いました。
 だって、たった一粒のエンドウ豆であざができてしまうなんて、ふっくらしたベッドでしか寝たことのない人に決まっています。
 こうして王子さまは、やっと本物の完全なお姫さまを、おきさきとしてむかえることができたのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → かえるの日
きょうの誕生花 → あやめ
きょうの誕生日 → 1946年 中尾ミエ(歌手)


きょうの日本昔話 → 百目のアズキとぎ
きょうの世界昔話 → エンドウ豆の上のお姫さま
きょうの日本民話 → 安珍清姫
きょうのイソップ童話 → イノシシとキツネ
きょうの江戸小話 → ますおとし

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6月5日の世界の昔話 力持ちのノミ

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 6月の世界昔話

6月5日の世界の昔話

力持ちのノミ

力持ちのノミ
ルーマニアの昔話 → ルーマニアの国情報

♪音声配信

 むかしむかしの、夏のあつい日。
 牧場(ぼくじょう)ではたらいている男が、町に住む主人のところへミルクやチーズをはこぼうと、ロバをウマ小屋からひきだして、したくをはじめました。
 はじめにロバの背中に、クッションとなるワラをしきました。
 ワラの上に木のくらをおき、くらの上に布をかけました。
 さて、こんどは荷物をつむ番です。
 まず、ミルクをいれた大きなツボを四つ、ロバの右と左に二つずつつけました。
 それからヤギのチーズのかたまりを八つ持ってきて、右と左に四つずつつけました。
「やれやれ、これでつみおえた」
 ところがそのとき、たいへんなことを思いだしました。
 主人のおじょうさんとおぼっちゃんが、とまりがけで遊びにきていたのです。
 この二人を、送っていかなくてはなりません。
 男は主人の子どもたちを、くらの上に背中あわせですわらせました。
 とちゅうでけんかをされたら、こまるからです。
 これだけのことをすると、男はヘトヘトにつかれました。
 ロバも、しんどそうな顔をしています。
 そのとき、どこからともなく一ぴきのノミがやってきて、ピョーンと、男のそでにとびあがりました。
 それからノミはロバにとびうつって、キョロキョロとあたりを見まわし、ロバの背中のやわらかなワラのあいだにもぐりこみました。
「しめ、しめ。いい日かげがあったぞ。ちょいと、ひるねでもするとしよう」
 さて、男とロバは町へ出発しました。
 太陽がジリジリと、やけるようなあつさです。
 男は川からあがったように、あせビッショリになりました。
 ロバは、あんまり荷物がおもいので、足がフラフラです。
 ロバの上の子どもたちも、グッタリしていました。
 ところがノミは、ロバの背中のやわらかいワラにもぐりこんで、まるでゆりかごにゆられているように、いい気持でねむっていました。
 ノミが目をさましたのは、男がやっと、町の主人の家へたどりついたときでした。
 ノミはワラからはいだしてみて、ビックリしました。
「これはまた、すごい荷物だ! まるで山のようだ」
 ノミは自分がこれだけの荷物を、はこんできたような気がしてきました。
 ノミは、とくいそうにさけびました。
「おーい、みんな。このおれさまがかついできた荷物を見てくれ! ものすごいおもさだぜ。どうだい。たいした力もちだろう」
 ノミはウキウキして、男のそでにとびうつりました。
 男は主人の子どもたちをおろしてから、荷物をつぎつぎとおろしました。
 それからロバのくらをはずして、ロバのからだをさすってやりました。
 それを見たノミは、腹をたてておこります。
「なんてこった。おもい荷物をかついできた、このおれさまのことはほっといて、ロバのやつばっかりチヤホヤしていやがる。ロバのやつ、ろくなこともできないくせに、いい気になってるな。ようし、こいつをやっつけてやれ」
 ノミはピョーンと、ロバの鼻にとびうつって、チクリとかみついてやりました。
 ビックリしたロバはあばれだして、そばのミルクツボをひっくりかえしてしまいました。
 それをみた男は、ロバの鼻をなぐりつけました。
 プチッ!
 ロバの鼻にとまっていた力もちのノミは、たたきつぶされて、かげもかたちもなくなってしまいました。

 できもしないことでいばったりすると、こんな目にあいますよ。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 熱気球記念日
きょうの誕生花 → ほたるぶくろ
きょうの誕生日 → 1949年 ガッツ石松(タレント)

きょうの新作昔話 → 弘法の衣(弘法大師)
きょうの日本昔話 → きっちょむの天のぼり
きょうの世界昔話 → 力持ちのノミ
きょうの日本民話 → イノシシのようなネコ
きょうのイソップ童話 → キツネとブドウのふさ
きょうの江戸小話 → 角兵衛獅子の太鼓(かくべえじしのたいこ)

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6月4日の世界の昔話 王子と指輪

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 6月の世界昔話

6月4日の世界の昔話

王子と指輪

王子と指輪
インドの昔話 → インドの国情報

♪音声配信

 むかしむかし、ある国に、若い王子がいました。
 この王子は、お母さんと二人で、まずしくくらしていました。
 ある日、お母さんは王子に一まいの金貨をわたしていいました。
「これをつかって、らくなくらしができるように考えてごらん」
 お母さんは王子に知恵(ちえ)とお金のある、りっぱな王子さまになってほしいと思ったのです。
 つぎの日、王子は町で、頭に大きな袋をのせた男にあいました。
「もしもし、その袋には、どんな宝ものがはいっているんですか?」
「これはネコですよ。毛なみのよい上等のネコです」
 王子はネコが大すきだったので、たいせつな金貨をやって、ネコを一ぴきわけてもらいました。
「まあ、ネコ一ぴきで金貨をだましとられるなんて、おまえはなんというバカものでしょう」
 お母さんは、ガッカリしました。
 でも何日かたつと、また王子に金貨をわたしていいました。
「こんどこそ、気をつけてお金をつかうのですよ」
 ところが散歩にでて、ヘビ使いにであった王子は、こんどはヘビと金貨をとりかえてしまったのです。
 お母さんは、あきれて、
「もうわたしには、とてもおまえのめんどうはみきれません、じぶんの力でくらすようにしなさい」
と、いうと、王子をおいたまま、おばあさんの住んでいる、遠い国へいってしまいました。
 王子はネコとヘビをつれて、トボトボと旅にでました。
 こうして王子は何年ものあいだ、家から家へこじきをしてあるきながら、ネコとヘビをたいせつにそだてました。
 こうしたある日のこと、王子は町でお母さんにであいました。
 お母さんは、かなしんでいいました。
「いつまでこじきをつづけているつもりなの。そんなきたないヘビは早くすててしまいなさい」
 王子は、かなしそうにいいました。
「ヘビくん、ごめんよ。ぼくがだらしないから、仲良しのきみとも別れなければならないんだ。本当にごめんよ」
 すると、ヘビが言いました。
「ああ、心やさしい王子さま、あなたはいいかたなのに、なぜ、不幸な目にばかりあうのでしょう。もしよかったら、わたしの国へいきましょう。わたしの父はヘビの国の王です。父は、わたしがせわになったお礼に、魔法の指輪(ゆびわ)をくれるでしょう。でも、指輪はぜったいにてばなしてはいけませんよ」
 こうしてヘビからもらった指輪をはめた王子は、ネコといっしょに旅をつづけ、ふかいジャングルにやってきました。
 日はとっぷりくれて、どこまでいっても、うす気味わるいけもののうなり声がします。
「つかれたなあ。このジャングルが、わたしの国だったらいいのに。大きなご殿にあかりがともっていて、わたしをたすけてくれた人たちと、くらせたらいいのになあ」
 王子が一人ごとをいったそのとき、たちまちジャングルは消えてなくなり、緑の木につつまれた、かがやくようなご殿が目の前にうかびあがりました。
 ご殿のまどからは、王子のお母さんや知りあいの人たちの、うれしそうな顔がのぞいています。
 王子はいつのまにか、りっぱな王さまになって、おともをしたがえて立っていたのです。
 魔法の指輪のおかげで王さまになった王子は、美しいおきさきをむかえて、しあわせにくらしていました。
 ある日、となりの国の王さまが、この国の海辺をとおりかかりました。
と、そこに、美しい長い髪が、クルクルとマリとなってとんできました。
「なんときれいな髪だろう。きっと、美しい姫がおとしたものにちがいない。ぜひ、この人をきさきにむかえたいものだ」
 となりの国の王さまは、さっそくおふれをだしました。
「この髪の持ち主をつれてきた者に、たくさんのほうびをつかわす」
 海辺に住むおばあさんが、これを見てニヤリとわらいました。
「これは海に水あびにくる、おきさきの髪にちがいない。おきさきをだまして、となりの国の王さまのところへつれていこう」
 つぎの日、海辺に水あびにきたおきさきに、おばあさんはかなしげな身の上話しをしました。
「まあ、かわいそうなおばあさん」
 やさしいおきさきは、おばあさんをご殿にひきとってやりました。
 さて、おばあさんはご殿ではたらいているうちに、魔法の指輪のひみつを知ってしまいました。
「なんというすばらしい指輪だろう。あの指輪さえ手にはいれば、もうこっちのものさ」
 ある日、おばあさんはいかにもつらそうにいいました。
「ああ、頭がいたくてわれそうだ。医者や薬ではなおせない。おやさしい王さま、おきさきさま。どうかちょっとだけ指輪をかしてくださいませんか」
 お人よしの王子は、ついうっかり指輪をわたしてしまいました。
 そのとたん、おばあさんのすがたは空にまいあがり、たちまち見えなくなってしまいました。
 となりの国の王さまは、毎日、首をながくして、いい知らせをまっていました。
「王さま、やっと見つけましたよ。ごほうびをください」
 やってきたのは、あのおばあさんです。
「この指輪をはめて、姫をよんでごらんなさい。そして、おきさきになれと命令すればいいのです」
 こうして、となりの国の王さまは、指輪の力で王子のおきさきをじぶんのものにしてしまいました。
 かわいそうに指輪を取られた王子は、おきさきもご殿もけらいもなくして、もとのジャングルにネコと二人だけでたっていたのです。
「ヘビのいいつけをわすれて、指輪をかしたわたしがバカだった。これからはまた、こじきぐらしだ」
 王子とネコは、またあてのない旅に出ました。
 王子はやがて、となりの国のご殿の前につきました。
 そこではまずしい人びとが、おきさきから食べ物をもらっていました。
 王子とネコが、おちた食べ物をひろおうとすると、とつぜんネズミの大軍がやってきて、あっというまに、食べ物をぜんぶさらってしまいました。
 さあ、ようやくネコの出番です。
 ネコはカンカンにおこって、いちばんふとった王さまネズミの首をつかまえて、どなりました。
「こらっ。わるいやつめ! おまえをたべてしまうからな!」
 王さまネズミは、ふるえながらいいました。
「どうかおたすけください。そのかわり、なんでもいいつけをまもりますから」
「ふん。それじゃこうしよう。わたしのご主人は、この国の王さまに指輪をとられてこまっている。とりかえしてくれれば、おまえの命はたすけてやろう」
 さて夜がふけると、大軍をひきいたネズミの王さまはご殿にむかいました。
「宝の箱をさがすのだ!」
「指輪をみつけて、王さまの命をおたすけしよう!」
 ネズミのけらいたちは手わけして、かたっぱしから宝の箱をあけてみました。
「あっ、あったぞ。指輪だ!」
「ばんざーい」
 こうして王子は、ネコのおかげで指輪をとりもどすことができました。
 王子が指輪をはめると、キラキラとかがやくご殿があらわれ、けらいが大ぜいあつまりました。
 そして美しいおきさきが、うれしそうにかけよってきます。
 ネコとヘビをそだてたお人よしの王子は、こうしてネコとヘビにたすけられ、しあわせにくらしたということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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6月2日の世界の昔話 ギアッコ少年とマメ

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 6月の世界昔話

6月2日の世界の昔話

ギアッコ少年とマメ

ギアッコ少年とマメ
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♪音声配信

 むかしむかし、ギアッコという、ひとりぼっちの男の子がいました。
 ギアッコはひとにぎりのマメを持っていて、まいにちひとつぶずつ食べました。
 でもとうとう、あとひとつで、みんななくなってしまうときがやってきたのです。
 ギアッコは、たったひとつのこったマメをポケットにしまって、テクテクと歩いていきました。
 日がくれるころ、ギアッコはクワの木の下にある、小さな家にたどり着きました。
 トン、トン、トン。
 ギアッコが戸をたたくと、腰のまがったおじいさんが出てきました。
「なんの用だね?」
「あの、ぼく、お父さんもお母さんもいないんです。このマメが、ひとつしかないんです」
と、ギアッコはいいました。
「おお、それはかわいそうに。では、これをお食べ」
 腰のまがったおじいさんは、クワの実を四つくれて、ギアッコをだんろのそばにねかせました。
 夜中になりました。
 コロコロコロ。
 ギアッコのポケットから、マメがころがりおちました。
 パクリ。
 ネコが、そのマメをたベました。
 ギアッコは、目をさまして、
「ねえねえ、おじいさん。おじいさんのネコが、ぼくのマメを食べちゃったよ」
と、泣き出しました。
「おや、それはわるかった。では、そのネコを持っていっておくれ。わしはドロボウネコはきらいだからね」
 ギアッコはネコをかかえて、スタスタと歩いていきました。
 日がくれるころ、ギアッコはクルミの木の下にある、小さな家につきました。
 トン、トン、トン。
 ギアッコが戸をたたくと、しらがのおじいさんが出てきました。
「なんの用だね?」
「あの、ぼく、お父さんもお母さんもいないんです。マメを食べたネコしか持っていないんです」
と、ギアッコがいいました。
「おお、かわいそうに。では、これをお食べ」
 しらがのおじいさんは、クルミの実を三つくれて、ギアッコとネコをイヌ小屋にねかせました。
 夜中になりました。
 ムシャ、ムシャ、ムシャ。
 イヌがネコを食べてしまいました。
 ギアッコは、目をさまして、
「ねえねえ、おじいさん。おじいさんのイヌが、ぼくのネコを食べちゃったよ」
と、泣き出しました。
「おや、それはわるかった。では、そのイヌを持っていっておくれ。わしは、よくばりイヌはきらいだからな」
 ギアッコはイヌをつれて、ズンズンと歩いていきました。
 日がくれるころ、ギアッコはイチジクの木の下にある、小さな家につきました。
 トン、トン、トン。
 ギアッコが戸をたたくと、しわだらけのおじいさんが出てきました。
「なんの用だね?」
「あの、ぼく、お父さんもお母さんもいないんです。マメを食べたネコを食べたイヌしか持っていないんです」
と、ギアッコがいいました。
「おお、かわいそうに。では、これをお食べ」
 しわだらけのおじいさんは、イチジクを二つくれて、ギアッコとイヌをブタ小屋にねかせました。
 夜中になりました。
 ゴクリッ。
 ブタが、イヌを飲みこみました。
 ギアッコは、目をさまして、
「ねえねえ、おじいさん。おじいさんのブタが、ぼくのイヌを食べちゃったよ」
と、泣き出しました。
「おや、それはわるかった。では、そのブタを持っていっておくれ。わしは、そんな食いしん坊のブタは大きらいだ」
 ギアッコはブタをつれて、ドンドンと歩いていきました。
 そして日がくれるころ、ギアッコはクリの木の下にある、小さな家につきました。
 トン、トン、トン。
 ギアッコが戸をたたくと、ヨボヨボのおじいさんが出てきました。
「なんの用だね?」
「あの、ぼく、お父さんもお母さんもいないんです。マメを食べたネコを食べたイヌを食べたブタしか持っていないんです」
「おお、かわいそうに。では、これをお食べ」
 ヨボヨボのおじいさんは、クリをひとつくれて、ギアッコとブタをウマ小屋にねかせました。
 夜中になりました。
 ガッ、ガッ、ガッ。
 ウマが、ブタをたべました。
 ギアッコは、目をさまして、
「ねえねえ、おじいさん。おじいさんのウマが、ぼくのブタを食べちゃったよ」
と、泣き出しました。
「おや、それはわるかった。では、そのウマをつれていっておくれ。わしは、ろくでなしのウマなんか大きらいだ」
 ギアッコはウマにまたがって、パカパカすすみました。
 日がくれるころ、ギアッコはお城につきました。
 ドン、ドン、ドン。
 ギアッコが門をたたくと、お城の中から、
「だれだっ!」
と、声がしました。
「あの、ギアッコです。ぼく、お父さんもお母さんもいないんです。マメを食べたネコを食べたイヌを食べたブタを食べたウマしか持っていないんです」
「ワッハッハッハ」
 門番が、ふきだしました。
「王さまに、おつたえしよう」
「ワッハッハッハ」
 王さまも聞いて、大きな口をあけて笑いました。
「なんだと。ウマを食べたブタを食べたイヌを食べたネコを食べたマメだと。こりゃ、おもしろい」
「あのう、王さま」
と、ギアッコがいいました。
「そのはんたいです。マメを食べたネコを食べたイヌを食べたブタを食べたウマですよ」
「ワッハッハッハ」
 王さまは、おなかをかかえて笑いました。
「おっと、まちがえたか。ウマを食べたマメだったな。いいや、マメを食べたウマだ。おや、またちがったわい。ワッハッハッハ」
 王さまが笑うと、大臣も、おきさきも、お姫さまも、めしつかいも、料理番も、だれもかれも笑いました。
 オホホホ・・・、ウフフフ・・・、エヘヘヘ・・・、アハハハ・・・。
 すると、お城のてっぺんにある鐘(かね)が、からだをゆすってカランカランとなりました。
 そして、国中の人が笑いだしました。
「ギアッコよ、まいにち、わしにはなして聞かせてくれないか。ウマを食べたマメの話・・・、いや、そのマメを食べたウマだ・・・、おっと、ちがった。マメを食べたネコを食べたイヌを食べたブタ食べたウマの話だ。ハッハッハッハ。なんど聞いてもおもしろい。ギアッコよ、わしのとなりにすわっておくれ」
 ギアッコは金のかんむりを頭に乗せて、王さまのとなりのいすにすわりました。
 そして、まいにちまいにち、マメを食べたネコを食べたイヌを食べたブタを食べたウマの話をして、国中の人が楽しくくらしました。

おしまい

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6月1日の世界の昔話 コルニーユじいさんの秘密

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6月1日の世界の昔話

コルニーユじいさんの秘密

コルニーユじいさんの秘密
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♪音声配信

 むかしむかし、平和で楽しい村がありました。
 村の人たちはみんな仲良しで、日曜日には教会に集まり、おいのりした後には歌ったりおどったりします。
 畑仕事も、力をかしあいます。
 村の人たちは、いつもみんなが幸せでいられるように考えて、くらしていたのでした。
 そして、畑でとれたムギは粉ひき小屋に持って行き、粉にしてパンを作って焼いて食べました。
 この村にはたくさんの粉ひき小屋があって、大きな風車(ふうしゃ)がクルクルと風に回り、村の人たちの歌にあわせるように、ゴトンゴトンと粉ひきうすが音を立てていました。
 コルニーユじいさんも、粉ひき小屋で孫のビベットと、元気よく働いていました。
 コルニーユじいさんは、粉ひきの仕事が大好きで、六十年もこの仕事をしているのに、いつでも大はりきりです。
 ところがこの村に、粉ひき工場ができたのです。
 工場にムギを持って行くと、あっというまに機械(きかい)で粉にしてくれます。
 村の人たちは、その方が早くパンを作れるので、だんだんムギを工場に持って行くようになりました。
 村にたくさんあった粉ひき小屋は、一つまた一つと、うすをまわすのをやめてしまいました。
 ムギを持ってきてくれる人がいなければ、仕事にならないからです。
 それで粉ひき小屋はとりこわされ、次々と畑に変わっていきました。
 まるで風車の村だったのに、とうとう風車は一つだけになってしまいました。
 それは、コルニーユじいさんの風車です。
 コルニーユじいさんは、
「風車がクルクルまわって、うすがゴトンゴトンと音をたてて粉を作るのさ。その粉で作ったパンでなきゃ、うまいはずがない」
と、ブツブツひとりごとを言って歩くようになりました。
 それを見た村の人たちは、
「かわいそうに。仕事がなくて、コルニーユじいさん、頭がおかしくなったのかねえ」
と、うわさしました。
 コルニーユじいさんが何を考えているのか、孫のビベットにもわからなくなりました。
 だって、あんなにかわいがってくれていたのに、
「ビベット、わしは一人でくらしたくなった。お前は出ていってくれ。そしてもう、二度とここへは来るな」
と、いきなりそう言ったのですから。
 ビベットは追いだされるように粉ひき小屋を出て、村のすみの小さな家でくらすようになりました。
 コルニーユじいさんのくらしは、誰が見てもひどいものでした。
 やせこけて服はボロボロ、クツも穴があいているのを、何ヶ月もはいているのです。
 けれど不思議なことに、風車は前と同じように、クルクルと楽しそうにまわっています。
 それにコルニーユじいさんは朝になると、ロバを連れて村を出て行き、帰りにはふくらんだ袋をロバの背中につんでいるのでした。
「コルニーユじいさん、いそがしそうだね」
 村の人が声をかけると、コルニーユじいさんはニコニコ笑ってこたえます。
「ああ、隣(となり)の村やそのむこうの村から、いっぱい注文(ちゅうもん)があってね」
「そうかい、大変だね」
 村の人たちはそう言ったあと、みんな心の中で思いました。
(そんなにもうかっているのなら、服やクツを買いかえればいいのに)
 ビベットも、もちろんそう思いました。
 でも、様子を見にいっても、コルニーユじいさんはドアにカギをかけて、中にはいれてはくれません。
 ビベットは、そんなにいそがしく働いているおじいさんの体が、心配でたまりませんでした。
 だからことわられても、ことわられても、会いにいきました。
 そんなある日のこと、ビベットは友だちの男の子と、コルニーユじいさんの粉ひき小屋に行きました。
 おじいさんはるすでした。
 ビベットと男の子は、はしごにのぼり、開いているまどから中にはいってみることにしました。
 そして二人は、粉ひき小屋の中で、
「あっ!」
と、言ったまま、立ちつくしてしまいました。
 なんと粉ひきうすの中にはムギ一つぶもなく、ただ風車が風にクルクルとまわっているだけだったのです。
 それに小屋のすみにころがっている袋には、ムギではなく土がはいっていたのです。
「これ、おじいちゃんがロバに乗せて持ってくる袋よ」
「ビベット、君のおじいさんは、ムギをひくようたのまれているふりをしていたんだね。どんなにびんぼうになっても、粉ひきをしたかったんだね」
「かわいそうなおじいちゃん」
 ビベットは、ポロポロと涙を流しました。
 そして二人は粉ひき小屋を出ると、村の人たちに粉ひき小屋で見てきたことを話しました。
 村の人たちは誰もが目に涙をためて、うなづきました。
「そういえば、工場ができてから村は変わったわ」
「コルニーユじいさんの気持ちを、考えてあげることもしなかったよ。気のどくなことをした」
 村の人たちはムギを袋につめて、コルニーユじいさんの粉ひき小屋にむかいました。
 コルニーユじいさんは、もう動く力もなくて、小屋の前でションボリとすわっていました。
「なあ、コルニーユじいさん、うちのムギを粉にしとくれよ」
「うちもだ、うちのムギもたのむ」
「やっぱりパンは、風車で作ったパンが一番うまいからな」
 村の人たちが次々に袋をさしだすと、コルニーユじいさんの目はたちまち輝きました、
「おおっ! ムギかい! ムギだな! 待っていろよ、とびきりおいしい粉を作ってやるからな」

おしまい

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