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2009年5月

5月31日の世界の昔話 長靴をはいたネコ

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 5月の世界昔話

5月31日の世界の昔話

長靴をはいたネコ

長靴をはいたネコ
ペローの童話 → ペロー童話の詳細

♪音声配信

 むかしむかし、粉ひきが三人の息子を残して死んでしまいました。
 粉ひきは貧乏でしたから、財産といったら水車小屋(すいしゃごや)と、ロバと、ネコが一匹だけです。
 その中から、一番上の息子が水車小屋をもらい、二番目の息子がロバをもらい、三番目の息子がネコをもらいました。
「あぁー。ネコなんてもらっても、なんの役にもたちやしない。お金もなしに、どうやって暮らしていけばいいのかなあ」
 三番目の息子がグチをこぼすと、ネコがいいました。
「ご主人さま。まあ、そういわないで。わたしに長ぐつを一足と、大きな袋を一つ作ってください。そうしたら、必ずお役に立ってみせますから」
 三番目の息子はしかたなしに、いわれた物を作ってやりました。
「わあ、すてき、すてき。ありがとう」
 ネコはピカピカの長ぐつをはいて、大喜びです。
 さっそく森へ出かけていくと、途中の畑でお百姓(ひゃくしょう)にもらったニンジンを入れた袋を木のそばへ置いて、ジッと、ようすをうかがっていました。
 そこへ、なにも知らないウサギの一行がやってきて、袋の中へ、ピョン、ピョン、ピョン。
「よしよし、この大量のウサギを見れば、王さまも大喜びされるにちがいない」
 この国の王さまは、ウサギが大好物なのです。
 ネコはウサギの入った袋をぶらさげて、王さまのお城へ出かけていきました。
「王さま。このウサギは、わたくしの主人、カラバ公爵(こうしゃく)からの、おくり物でございます」
「これはかたじけない。よしよし、これからお礼にでかけるから、そう、お伝えしてくれ」
 それを聞いたネコは、急いで家ヘもどってきました。
「ご主人さま、ご主人さま、川の中へ入って、おぼれるまねをするのです。さあ、早く、早く」
 そういうと、ネコはありったけの声で、
「たいへん! たいヘん! カラバ公爵さまがおぼれそうだ! おまけにドロボウに服を盗まれた! 助けてください! 助けてください!」
 王さまは、それを聞いてビックリ。
「それ、みんな。早く助けてさしあげろ。ついでに、公爵殿のおめしになる服をさがしてこい」
 そのすきに、ネコは畑で働いているお百姓のところへ走っていくと、
「おい、おまえたち、この畑はだれのものだ?」
「はい、魔法使いさまの物です」
「いや、ちがう。これはカラバ公爵の物だ。だれかに聞かれたら、この畑はカラバ公爵の物だというんだ。さもないと、お前たちを頭からガリガリかじってやるからな!」
 ビックリしたお百姓は、
「へい、申します、申します。ですから、わたしたちを食べないでください」
 そこへ、王さまの馬車がやってきました。
「これこれ、このあたりの畑は、どなたの持ち物じゃな?」
「へい、カラバ公爵さまの畑でございます」
「ほほう、公爵殿は、こんなに広い畑をお持ちじゃったのか」
 王さまは、すっかり感心したようすです。
 そのすきにネコが、またどんどん走っていくと、りっぱなお城がありました。
「ははん、これが魔法使いのお城だな。よしよし、このお城をご主人さまの物にしてやろう」
 ネコはすました顔で、お城の中へ入っていきました。
「魔法使いさま、わたくしは、いだいなる魔法使いでいらっしゃる、あなたさまにお仕えしたくてやってまいりました。どうぞ、わたくしをあなたさまのけらいにしていただけないでしょうか?」
「ほう。けらいになりたいのか。よし、いいだろう」
「はっ、ありがとうございます。ところでいだいな魔法使いさま、うわさによると、あなたさまは、どんな物にでも姿を変えられるそうですが」
「ふふん。見たいというのなら、見せてやる」
 魔法使いは、パッとライオンの姿に早変わりです。
「わあ、おどろいた! でも、さすがのあなたさまも、小さなネズミにだけは化けられないでしょうね」
「なにをいうか。ネズミくらいは、朝めし前だ」
 魔法使いはパッと、小さなネズミに変わってみせました。
「それ、今だ!」
 ネコはヒラリと飛びかかると、ネズミに化けた魔法使いを、パクッと飲みこんでしまいました。
 ちょうどそこへやってきたのが、王さまの馬車です。
 ネコは、うやうやしくおじぎをすると、
「これはこれは、ようこそのお運びで。ここが主人のお城でございます」
「なんと、公爵殿は、こんなりっぱなお城までお持ちじゃったのか」
 感心した王さまは、公爵をお姫さまと結婚させることにしました。
 こうして貧乏だった粉ひきの息子は、ネコのおかげで、すっかりしあわせになりました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 世界禁煙デー
きょうの誕生花 → カラー
きょうの誕生日 → 1967年 萩原正人 (芸人)


きょうの日本昔話 → おんぼろ寺のカニもんどう
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5月30日の世界の昔話 金貨のはいったさいふ

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5月30日の世界の昔話

金貨のはいったさいふ

金貨のはいったさいふ
フランスの昔話 → フランスの国情報

♪音声配信

 むかしむかし、わかいオンドリが、金貨の入ったさいふを見つけました。
 けれど食いしんぼうのオンドリは、お百姓のおかみさんのさしだしたムギつぶやおかしと、金貨の入ったさいふをとりかえてしまいました。
 それを聞いたお父さんニワトリは、たいへんおこって、
「さいふをとりもどしてこい!」
と、いいました。
 オンドリがションボリ歩いていくと、オオカミにあいました。
 オンドリは、いいことを思いつきました。
「ねえ、オオカミさん、きみにムギつぶになってほしいんだ。そして、ぼくのおなかの中に入ってほしいんだ」
 わけを話してたのむと、オオカミはムギつぶにすがたをかえて、オンドリはそれをのみこみました。
 少し行くと、こんどはキツネにあいました。
 そしてキツネもなかまになり、キビつぶにすがたをかえると、オンドリのおなかに入りました。
 またすすんでいくと、川に出ました。
 川もなかまになり、砂つぶになって、オンドリのおなかの中に入りました。
 オンドリはお百姓の家につくと、ありったけの声でさけびました。
「ぼくの金貨の入ったさいふをかえしてくれ!」
 すると、お百姓とおかみさんは、オンドリをウシ小屋にとじこめました。
 とたんに、おなかの中にいたオオカミがとびだして、ウシをおなかいっぱいに食べると、にげていってしまいました。
 つぎの朝、それを見たお百姓たちはなきわめき、オンドリをニワトリ小屋にとじこめました。
 するとこんどは、キツネがおなかの中からとびだして、ニワトリをぜんぶ殺してさっさとにげていきました。
 まっ赤になっておこったおかみさんは、オンドリをかまどの中になげこみました。
 とたんに川がとびだして、お百姓の家も畑もおしながしました。
 おぼれてはたいへんと、お百姓たちもにげだしました。
 オンドリは、やねの上にとびあがってよろこびました。
 それからお百姓の家の中に入って、とうとう金貨の入ったさいふを見つけたのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ごみゼロの日
きょうの誕生花 → おだまき
きょうの誕生日 → 1937年 左とん平 (俳優)


きょうの日本昔話 → ヘビ酒をのんださむらい
きょうの世界昔話 → 金貨のはいったさいふ
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5月29日の世界の昔話 ヤギとライオン

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5月29日の世界の昔話

ヤギとライオン

ヤギとライオン
トリニダード・トバゴの昔話 → トリニダード・トバゴの国情報

♪音声配信

 むかしむかし、あるヤギが夕立(ゆうだち)にあいました。
 トリニダードの夕立は、ものすごいいきおいでふるのです。
 ライオンが家のまどから、ずぶぬれのヤギを見ました。
 ライオンはヤギに、
「家にはいって、雨やどりをしないか?」
と、声をかけました。
 ヤギはありがたいことだと思って、ライオンの家ヘはいりました。
 するとライオンは、大声でいいました。
「ヤギくん。すわりたまえ。雨やどりのあいだ、ヴァイオリンをひいてあげよう」
 ヤギはますます、ありがたいことだと思って腰をかけました。
 ライオンはヴァイオリンをとりだすと、ひきながらうたいだしました。
♪雨のふる日にゃ。
♪家にいて、家にいて。
♪雨のふる日にゃ、家にいて。
♪おいしい肉のおいでをまつさ。
 ヤギは、そのおいしい肉が自分のことだとわかったのでビックリ。
 でも、おちついていいました。
「ライオンさん、いいヴァイオリンをお持ちですねえ。わたしにもちょっとひかせてくれませんか?」
「さあ、さあ、どうぞ」
 ライオンは上きげんで、ヴァイオリンをかしてくれました。
 ヤギはヴァイオリンをかりると、ひきながらうたいました。
♪きのう、ころした。一万びきのライオン。
♪一万びきのライオン、一万びきのライオン。
♪きのう、ころした。一万びきのライオン。
♪きょうはなんびき、ころそうか。
 こんどはライオンが、ビックリしました。
(ヤギがライオンをころすなんて、本当だろうか?)
 ライオンは首をかしげましたが、用心したほうがいいと考えて、大声でおかみさんをよびました。
「おい、おい、たきぎをとってこい!」
 この雨のなかをたきぎをとりにいけといわれて、おかみさんはおどろきました。
 それでもしかたなくでかけようとすると、ライオンは小さな声でいいました。
「帰ってくるなよ」
 ヤギは聞こえないふりをしていましたが、こんどはもっと大きく早口でうたいだしました。
♪きのう、ころした。一万びきのライオン。
♪一万びきのライオン、一万びきのライオン。
♪きのう、ころした。一万びきのライオン。
♪きょうはなんびき、ころそうか。
 ライオンは、こんどは息子をよびました。
「森へいって、おっかさんがなにをグズグズしているのか見てこい」
 そして、小さな声でつけたしました。
「帰ってくるなよ」
 ヤギは聞こえなかったふりをしていました。
 そして、ものすごい大声で、ものすごい早さでうたいつづけました。
♪きのう、ころした。一万びきのライオン。
♪一万びきのライオン、一万びきのライオン。
♪きのう、ころした。一万びきのライオン。
♪きょうはなんびき、ころそうか。
 あんまり早口でわめいたので、ヤギはヘトヘトにくたびれました。
 それでもヤギは、うたうのをやめませんでした。
 とうとうライオンは、こわくていてもたってもいられなくなりました。
「ヤギくん、しつれい。ちょっとうちのやつらをさがしにいってくるよ。どうぞゆっくり休んでいてくれたまえ」
と、いうと、ライオンは大いそぎで家からでていってしまいました。
 ライオンが見えなくなったとたん、ヤギはヴァイオリンをほうりだして、いちもくさんににげだしました。
 それからというもの、ヤギはけっして、ライオンの家の前の道を通らなかったということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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きょうの誕生日 → 1937年 美空ひばり (歌手)

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5月28日の世界の昔話 ヒツジ飼いの少年

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5月28日の世界の昔話

ヒツジ飼いの少年

ヒツジ飼いの少年
グリム童話 → グリム童話の詳細

♪音声配信

 むかしむかし、とてもかしこいヒツジ飼いの少年がいました。
 そのことが王さまの耳に入り、王さまはその少年をお城によびつけると、こういいました。
「わしがおまえに三つの問(と)いをだす。これにうまくこたえることができたら、わしはおまえをわが子と思って、わしの城においてやるぞ」
 すると少年がいいました。
「その三つの問いというのはなんですか?」
 王さまがいいました。
「海のなかには水が何てきあるかな?」
「王さま、地球の上の川をのこらずせきとめてください。そしたら、海の水が何てきあるのか数えましょう」
 こう少年はこたえました。
 そこで王さまはいいました。
「なかなかやるな。では、つぎの間いじゃ。空には星がいくつあるかの?」
 すると、ヒツジ飼いの少年は、
「どうか、大きな紙とペンをください」
と、いって、用意された大きな紙の上ヘ、ペンで一面に小さな点をうちました。
「できました。空には、ちょうどこの紙の上の点とおなじ数だけの星があります。さあ、かぞえてみてください」
 まるで見えないくらいの小さい点で、だれにも数えることができません。
「では三番目の問いはこうじゃ、永遠というものは、何秒だ?」
 するとヒツジ飼いの少年がいいました。
「ポンメルンにダイヤモンドの山があります。この山は高さが一里(→やく四キロ)、はばが一里、奥行きが一里あります。このお山へ百年目ごとに一羽の小鳥がやってきて、くちばしをお山でみがくのでございます。こうやって小鳥がきてはみがくために、このお山がのこらずすりへってなくなったときに、永遠の第一秒がたつのでございます」
 それを聞いた王さまは、ヒツジ飼いの少年にいいました。
「おまえはこれからは、このお城でわしといっしょにくらすがよい。わしはおまえを、じぶんの子どものつもりでみてやるからな」

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 花火の日
きょうの誕生花 → スズラン
きょうの誕生日 → 1955年 村上ショージ (タレント)


きょうの日本昔話 → おいてけぼり
きょうの世界昔話 → ヒツジ飼いの少年
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5月27日の世界の昔話 かしこいお医者のやせ薬

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5月27日の世界の昔話

かしこいお医者のやせぐすり

かしこいお医者のやせ薬
タンザニアの昔話 → タンザニアの国情報

♪音声配信

 むかしむかし、あるところに、ふとった女の人がいました。
 あまりにもふとりすぎて、もう、歩くのがやっとというありさまです。
 女の人はどうにかしてやせたいと思って、ヨタヨタと、お医者のところへいきました。
「先生、わたしはドンドンふとるばかりで、いまにはれつしそうです。ぜひ、やせるお薬をください」
 女の人は、いっしょうけんめいにたのみました。
「きょうは、しんさつ代だけはらっておかえりなさい。あしたまた、きてください」
 お医者は高いお金をとって、女の人をかえしました。
 あくる日、女の人はお医者のところヘいきました。
 お医者は、女の人の頭のてっぺんから足の先までながめました。
 それからお医者は、おもおもしくはなしだしました。
「おくさん。きのうわたしは、2万1783さつの書物をよみ、1800万の星をうらなってみました。それによると、あなたはあと七日しか命がありません。もうじき死ぬのに、くすりもいらないでしょう。お帰りになって死ぬときをおまちなさい」
「!!!!!!」
 ふとった女の人は、それを聞いてガタガタふるえだしました。
 帰るとちゅうも帰ってからも、死ぬことばかり考えつづけました。
 朝から晩まで、あとなん日、あとなん時間生きていられるかと、そればかり考えつづけました。
 なんにも、のどを通りません。
 夜もねむれません。
 女の人は日ましに、いいえ、一時間ごとにやせていきました。
 七日間がすぎました。
 女の人はかくごをきめると、しずかに横になって、死ぬのをまちました。
 けれども、いっこうに死にません。
 八日すぎても、九日すぎても、やっぱり死にません。
 十日目になると、とうとう女の人はがまんできなくなって、お医者のところへかけつけました。
 すっかりやせた女の人は、らくらくと走ることができました。
「あなたは、なんてへたくそなお医者なんでしょう! あんなにお金をとっておきながら、人をだましたのね! 七日したら死ぬって、おっしゃいましたけど、もう、きょうは十日目ですよ。このとおり、ピンピンしているじゃありませんか!」
 女の人は、ものすごいいきおいでもんくをいいました。
 お医者は、おちつきはらって聞いていましたが、ふと、女の人に聞きかえしました。
「ちょっとうかがいますが。あなたはいま、ふとっていますか? やせていますか?」
 女の人は、こたえました。
「やせましたとも。死ぬのがおそろしくて、食べ物ものどを通りませんでしたからね」
 すると、お医者はいいました。
「そうでしょう。その、おそろしいと思う気持が、やせぐすりだったのですよ。これでもあなたは、わたしをへたくそな医者だと、いわれるのですか?」
「あっ・・・」
 女の人は気がついて、笑いだしました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 百人一首の日
きょうの誕生花 → つるばら
きょうの誕生日 → 1955年 内藤剛志 (俳優)

きょうの新作昔話 → ネズミのしっぽ
きょうの日本昔話 → さんぽするひとだま
きょうの世界昔話 → かしこいお医者のやせ薬
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きょうのイソップ童話 → ラッパ手
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5月26日の世界の昔話 月の見ていた話二十六夜

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 5月の世界昔話

5月26日の世界の昔話

月の見ていた話二十六夜

月の見ていた話二十六夜
アンデルセン童話 → アンデルセン童話の詳細

♪音声配信

 こんばんわ。
 わたしは、高い空の上にいる月です。
 タ方から朝になるまで、いろんな国のいろんなところをながめます。
 では、ゆうべ見たことを、話してあげましょう。
 夜明けのことです。
 大きな町のどの煙突(えんとつ)も、まだ煙(けむり)をはいていません。
 だってまだ、みんな眠っている時間ですもの。
 でも、わたしはただ一つ、おきている煙突を見つけました。
 ただし煙突から出てきたのは煙ではなく、とびきり元気のいい男の子の口笛(くちぶえ)でした。
 煙突からピョコンと男の子が顔を出したとき、わたしは思わずふき出してしまいましたよ。
 だって、おでこと鼻の頭と右のほっぺが、すすでまっ黒なんですもの。
 でも、そんなことは気にしない様子で、男の子は煙突のふちに両手をかけると、いきなり大きな声でさけびました。
「ばんざーい!」
 この子は、煙突掃除屋(えんとつそうじや)さんだったのです。
 男の子は生まれて初めて、煙突の中をてっぺんまでのぼってきたのです。
 そのときちょうど、太陽が東の空に姿を現わしました。
 男の子は、明るくなった町を見わたして言いました。
「町がおいらを見てる!」
 そして、わたしを見あげて言いました。
「お月さんも、おいらを見てる!」
 それから、
「お日さまも、おいらを見てる! ばんざーい!」
 ほうきをクルクルふりまわしながら、とってもうれしそうでしたよ。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 東名高速道路開通記念日
きょうの誕生花 → わさび
きょうの誕生日 → 1959年 健 (トミーズ)


きょうの日本昔話 → 舌をぬくおばけ
きょうの世界昔話 → 月の見ていた話二十六夜
きょうの日本民話 → 人間のことばを話したウマ
きょうのイソップ童話 → 歌手
きょうの江戸小話 → 死んだのは病人

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5月25日の世界の昔話 美女と野獣

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5月25日の世界の昔話

美女と野獣

美女と野獣
フランスの昔話 → フランスの国情報

♪音声配信

 むかしむかし、あるところに、商人が三人の娘とくらしていました。
 三人のうちでも末娘のベルは、とても美しく、心がやさしいのでひょうばんです。
 ある時、お父さんが仕事で近くの町ヘ出かけることになると、一番上の姉さんがいいました。
「お月さまの色をした服を買ってきて」
 すると、二番目の姉さんも、
「お日さまの色をした服を買ってきて」
と、ねだりました。
 でも、ベルは何もいわないので、かわいそうに思ったお父さんが何度も聞くと、
「・・・バラの花が、一本ほしいわ」
と、答えました。
 仕事を終えたお父さんは、姉さんたちの服を買いました。
 でも、バラの花はどこにもありません。
 おまけに帰るとちゅう、道にまよってしまったのです。
 こまっていると、遠くにあかりが見えました。
 近づいてみると、とてもりっぱなお城です。
 けれど、いくらよんでも、お城からはだれも出てきません。
 ふと見ると、庭にきれいなバラの花が咲いています。
「みごとなバラだ。これをベルのおみやげにしよう」
 お父さんはベルのために、赤いバラをひとえだおりました。
「なにをする!」
 そのとたん、目のまえにおそろしい野獣(やじゅう)の顔をした男があらわれました。
「だいじなバラをぬすんだな、ゆるさんぞ! いいか、おまえの娘を一人ここへつれてこい。さもないと、いのちはないと思え!」
と、いって、野獣の男はパッとすがたをけしました。
 お父さんはふるえながら道をさがして、やっとのことで家にたどりつきました。
 お父さんがまっさおな顔で野獣の話をすると、ベルはいいました。
「お父さん、ごめんなさい。わたしがバラをねだったせいです。野獣のところへはわたしがまいります」
「しかし・・・」
「いいえ、わたしがまいります」
 ベルがいいはるので、お父さんはなくなく、ベルをお城へつれていきました。
 するとたちまち、野獣が出てきて、
「この娘はあずかっておく。おまえは帰れ!」
と、お父さんをおい返しました。
 ベルはこわくてこわくて、ブルブルとふるえていました。
 でも、野獣はやさしい声で、ベルにいいました。
「こわがらなくてもいいよ。この城はあなたの城。食べ物も着る物も、ほしいものはみんな一人でに出てくる。どうぞ、楽しくおくらしなさい」
 野獣は、時どき食事をしにくるだけでした。
 でも見かけとちがって、いつもやさしい野獣に、ベルはうれしくなりました。
 ある日、野獣は遠くの物を見ることが出来る、ふしぎな鏡をベルにくれました。
 ベルがその鏡で自分の家のようすを見てみますと、なんと、病気でねているお父さんのすがたがうつっていたのです。
 お父さんはベルのことがしんぱいで、病気になってしまったのでした。
「おねがい、お父さんのおみまいにいかせてください」
「いいよ。・・・でも、かならず帰ってきておくれ」
 ベルが家に帰ると、お父さんは大よろこびで、すぐに病気がなおってしまいました。
 けれど姉さんたちにひきとめられて、ベルはなかなかお城へもどれません。
 そんなある晩、今にも死にそうな野獣のゆめをみました。
「たいヘんだわ。はやく帰らなければ」
 むちゅうで道を走り、やっとお城ヘついた時、野獣はグッタリして、もう口もきけません。
「ごめんなさい、ごめんなさい。わたしが帰らなかったせいなのね。ほんとうにごめんなさい」
 ベルは涙を、ポロポロとこぼしました。
 そして、その涙が野獣のかおにおちたとたん、野獣は、りっぱな王子さまにかわったのです。
「ありがとう、ベル。おかげで魔法がとけました。やさしい人が、ぼくのためにないてくれなければ、魔法はとけなかったのです。・・・ベル、どうかぼくと結婚してください」
「はい」
 やがて二人は結婚して、幸せにくらしました。

※ クロアチア国に伝わる美女と野獣のお話し → ローザとジバル

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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きょうの誕生日 → 1976年 シェイン・コスギ (俳優)

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きょうの世界昔話 → 美女と野獣
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5月24日の世界の昔話 漁師とそのおかみさんの話

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5月24日の世界の昔話

漁師とそのおかみさんの話

漁師とそのおかみさんの話
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 むかしむかし、漁師(りょうし)とおかみさんが、きたなくて小さな家に住んでいました。
 ある日、漁師がつりに出かけると、一匹のカレイがつれました。
「おおっ、これは立派なカレイだ。よし、さっそく町へ売りに行こう」
 漁師はそういって、カレイをカゴに入れようとすると、そのカレイが漁師に話しかけてきたのです。
「漁師のおじさん。実はわたしは、魔法をかけられた王子なのです。お礼はしますから、わたしを海へ戻してください」
 言葉を話すカレイに漁師はビックリしましたが、やがてカレイをカゴから出してやると言いました。
「それはかわいそうに。お礼なんていいから、はやく海にかえりなさい。それから、二度と人間につかまるんじゃないよ」
 漁師はカレイを、そのまま海へはなしてやりました。
 さて、漁師が家に帰ってそのことをおかみさんに話しますと、おかみさんはたいそう怒っていいました。
「バカだね! お礼をするといっているのだから、何か願いごとでもかなえてもらえばよかったんだよ。たとえば、こんなきたない家じゃなく、小さくてもあたらしい家がほしいとかね。・・・さあ、なにをグズグズしているんだ。はやくカレイのところにいって、願いをかなえてもらうんだよ!」
 漁師はしかたなくもう一度海に行って、カレイに話しかけました。
 するとカレイが海から出てきて、漁師にいいました。
「家に戻ってごらん。小さいけど、あたらしい家になっているよ」
 漁師が家に帰ってみると、おかみさんが小さいけれどあたらしい家の前でよろこんでいました。
 しばらくは小さいけれどあたらしい家に住んでいましたが、やがておかみさんがいいました。
「こんな小さな家じゃなく、石造りのご殿に住みたいねえ。・・・さあ、なにをグズグズしているんだ。はやくカレイに言っておいで」
 漁師が海に行ってカレイにそのことを話すと、カレイは言いました。
「家に戻ってごらん。小さな家が、石造りのご殿になっているよ」
 家に戻ってみると、小さな家はとても大きな石造りのご殿になっていました。
 大きな石造りのご殿に、おかみさんはすっかり満足しましたが、やがてそれにもあきてしまい、また漁師にいいました。
「家ばかり大きくても、家来(けらい)がいないとつまらないね。やっぱり、家来のたくさんいる大貴族(だいきぞく)でないと。・・・さあ、なにをグズグズしているんだ。はやくカレイに言っておいで」
「でもおまえ、よくばりすぎじゃないのか。大きな家をもらっただけでいいじゃないか」
 漁師がそういうと、おかみさんはこわい顔で漁師をにらみつけました。
「なに言っているんだい! 命を助けてやったんだから、そのくらい当然だよ。さあ、はやくいっておいで!」
 漁師はしかたなく、もう一度カレイにお願いしました。
 でもカレイは少しもいやな顔をせずに、ニッコリ笑っていいました。
「家に戻ってごらん。大貴族になっているよ」
 家に帰ってみると、おかみさんは大勢の家来にかこまれた、大貴族になっていました。
 大貴族になって、なに不自由ない生活でしたが、おかみさんはこれにもあきて、また漁師にいいました。
「いくら貴族といっても、しょせんは王さまのけらい。こんどは王さまになりたいね。・・・さあ、なにをグズグズしているんだ。はやくカレイに言っておいで」
「・・・・・・」
 おかみさんのわがままに、漁師はあきれてものがいえませんでした。
 しかし、おかみさんにせかされると、しかたなくもう一度カレイのところへいき、はずかしそうにおかみさんの願いをいいました。
「家に戻ってごらん。王さまになっているよ」
 家に戻ってみると家はお城にかわっており、おかみさんのまわりには、大勢の貴族や大臣がいました。
 とうとう王さまになったおかみさんですが、やがて王さまにもあきてしまいました。
「王さまよりも、法王(ほうおう)さまの方がえらいからね。こんどは法王さまになりたいね。・・・さあ、なにをグズグズしているんだ。はやくカレイに言っておいで」
 漁師からその願いを聞いたカレイは、少しビックリしたようすですが、こんども願いをかなえてくれました。
「家に戻ってごらん。法王さまになっているよ」
 家に帰ってみると、おかみさんは多くの王さまをしたがえた、法王さまになっていました。
 とうとう、人間で一番えらい人になったのです。
 でもやがて、おかみさんは法王さまにもあきてしまい、漁師にいいました。
「法王さまといっても、しょせんは神さまのしもべ。こんどは神さまになりたいね。・・・さあ、なにをグズグズしているんだ。はやくカレイに言っておいで」
 その言葉に漁師は、泣いておかみさんにたのみました。
「神さまだなんて、そんなおそれおおい。おねがいだから、やめておくれ」
 でも、おかみさんは考えをかえようとしません。
 漁師はしかたなく、もう一度カレイのところへいきました。
 するとカレイは、あきれた顔でいいました。
「お帰りなさい。おかみさんはむかしのあばら家にいますよ」
 漁師が家に帰ってみると、お城も家来たちもみんな消えてしまって、前のきたなくて小さな家だけがのこっていました。
 それから漁師とおかみさんは、いままでどおりのまずしい生活をおくったということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ゴルフ場記念日
きょうの誕生花 → きらんそう
きょうの誕生日 → 1961年 哀川翔 (俳優)


きょうの日本昔話 → ゆうれいのしかえし
きょうの世界昔話 → 漁師とそのおかみさんの話
きょうの日本民話 → テングのねごと
きょうのイソップ童話 → ワシとトビ
きょうの江戸小話 → ネコの名

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5月23日の世界の昔話 キツネとガチョウ

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 5月の世界昔話

5月23日の世界の昔話

キツネとガチョウ

キツネとガチョウ
グリム童話 → グリム童話の詳細

♪音声配信

 むかしむかし、あるキツネが草原ヘやってきました。
 草原には、よくふとったガチョウのむれがすわっていました。
 すると、キツネはわらいながらいいました。
「これはついているぞ。これだけいれば、とうぶん食べ物に困ることはない」
 キツネに気づいたガチョウのむれは、あわれっぽく命ごいをはじめました。
 でも、キツネはすこしもききいれようとはしません。
「命ごいをしてもむださ。おまえたちは、みんな死ぬことにきまってるんだ」
 すると一羽のガチョウが、勇気をだしていいました。
「わたしたちあわれな鳥どもが、このわかい元気いっぱいの命をどうしてもすてなければならないのでしたら、どうかそのまえに、わたしたちがおいのりをすることをおゆるしください。みんなが罪のあるままで死にませんように。それさえすみましたら、わたしたちはあなたの前に一列にならびましょう」
「よかろう」
と、キツネはいいました。
「それはもっともなことだ。さあ、いのるがいい、ぼくはそのあいだ、待ってやろう」
 まずさいしょの一羽が、ひどく長いいのりをはじめました。
 ガア、ガア、ガア、ガア・・・。
 さいしょの一羽がなかなか終わらないので、二番目は待ちきれずに、
 ガア、ガア、ガア、ガア・・・。
と、はじめました。
 それから三番目、四番目と、それにならいました。
 こうしてしまいには、みんながいっしょになって、ガア、ガア、ガア、ガアとなきました。
 そして今でも、
 ガア、ガア、ガア、ガアとないているのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → キスの日
きょうの誕生花 → ゴデチア
きょうの誕生日 → 1959年 高橋名人 (ファミコン名人)


きょうの日本昔話 → 娘の婿選び
きょうの世界昔話 → キツネとガチョウ
きょうの日本民話 → お月さまに行ったウサギ
きょうのイソップ童話 → 借金をしたアテネの男
きょうの江戸小話 → ゆめ

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5月22日の世界の昔話 空飛ぶじゅうたん

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 5月の世界昔話

5月22日の世界の昔話

空飛ぶじゅうたん

空飛ぶじゅうたん
千夜一夜物語 → アラビアンナイトの詳細

♪音声配信

 むかしむかし、インドのある王さまには、三人の王子がいました。
 王子たちの名まえは、「フーセイン」、「アリ」、「アーメッド」です。
 また王さまは、なくなった兄の娘の「ヌーロニハル」もかわいがって、いっしょにお城にすまわせていました。
 さてある時、とてもこまったことがおこりました。
「ヌーロニハルと結婚したいのです」
と、王子たちが三人ともいい出したのです。
 でも、三人と結婚するわけにはいきません。
 王さまは、考えたすえにいいました。
「では、この世で一番めずらしいものを見つけてきた者に、姫との結婚をゆるすとしよう」
 そこで王子たちは、めずらしいものを探すためにべつべつに旅に出て、帰りに宿屋でおちあいました。
「ほら、ぼくのめずらしいものはこれだぞ」
 三人はとくいになって、手に入れたものを見せあいました。
 フーセインは、自由に空をとべるじゅうたん。
 アリは、どんな遠いところでも見えるぼうえんきょう。
 アーメッドは、においをかぐと病気がなおるリンゴでした。
 そして三人でぼうえんきょうをのぞくと、ヌーロニハルが病気で苦しんでいるのが見えたのです。
「大変だ! すぐに帰らないと」
 三人は空とぶじゅうたんにとびのって、お城ヘかけつけました。
 そして魔法のリンゴのおかげで、ヌーロニハルはたちまち元気をとりもどしました。
 王さまは大よろこびのあと、大よわりです。
 三人の持ってきた三つの品はどれもめずらしいもので、どれもヌーロニハルを助けるのに役だったからです。
 考えなおした王さまは、いいました。
「矢を一番遠くまで飛ばしたものを、姫のむこにきめるとしよう」
 そこで王子たちはならんで、矢をはなちました。
 アーメッドの矢が一番飛んだのですが、飛びすぎてどこかへいって見つからないので、王さまは二番目に遠くまでとばしたアリをむこにきめました。
「見つからないからだめだなんて、こんなくやしいことがあるもんか!」
 アーメッドはがまんできずに、矢をさがしてどんどん歩いていきました。
 矢は、山のふもとの岩の上におちていました。
「おやっ? 岩にとびらがあるぞ」
 アーメッドがとびらをあけると、そこには美しい姫がたっていました。
「ようこそ、アーメッドさま。わたしはぺリパヌー姫ともうします」
 アーメッドは、ひと目でぺリパヌー姫に心をひかれました。
 やがて二人は結婚し、幸せな月日がすぎました。
「いちど、父上にあいにいってこよう」
 ひさしぶりにお城へかえったアーメッドを見て、王さまはたいそうよろこびました。
「元気か? おまえがいなくなったあと、フーセインも空とぶじゅうたんで旅に出てしまい、さみしいかぎりだ。今はどこでくらしているのだ?」
「それはいえません。そのかわり、わたしは月に一度、お城へ帰ってまいります」
 これを聞きつけて、大臣がいいました。
「王さま、アーメッドさまはヌーロニハル姫と結婚できなかったのをうらんで、今にせめてくるかもしれません」
「そんな、ばかな」
 王さまは、気にもとめませんでした。
 でもある日、そっと魔法使いにアーメッドをさがさせますと、魔法使いが言いました。
「王さまたいへんです! 王子さまはわたしよりずっと魔法の力がある姫と結婚して、宝石のかがやくお城にすんでいます」
 王さまは、あわてました。
「そんなにすごい魔法を使えるなら、この国をのっとることなどかんたんであろう。しかし、アーメッドがそんなことをするはずが・・・」
 そこへ、大臣と魔法使いがいいました。
「いいえ、王さま。アーメッドさまは必ずせめてきます。かわいそうですが、アーメッドさまに何かを失敗させて、それを理由に処刑(しょけい→死刑)しましょう」
 つぎの月になり、アーメッドがきた時、王さまは大臣と魔法使いに教えられた、とんでもない注文を出しました。
「わしの軍隊がぜんぶすっぽり入ってしまい、たためば手のひらにのるような、そんなテントをもってきてくれないか」
 アーメッドはおどろいて自分の城ヘ帰り、それをぺリパヌー姫にはなしました。
「お気のどくに。王さまはきっと、だれかにおどかされていらっしゃるのですね。・・・はい、これがそのテントです」
 さすがは、力がある魔法使い。
 姫はかんたんに、注文のテントをアーメッドにわたしたのです。
 アーメッドはそれをもって、王さまのところヘいきました。
 本当にテントの中に軍隊が入るのを見て、王さまのおどろいたことといったらありません。
 王さまはまた、大臣と魔法使いに教えられた、むちゃなことをいいました。
「ライオンの泉の水をくんできておくれ。あれを飲むと、長生きできるそうだから」
 アーメッドは、ため息をつきました。
 その泉にはおそろしいライオンがいて、近づく人間を食い殺すのです。
 でも話を聞いたぺリパヌー姫は、アーメッドにいいました。
「だいじょうぶですよ、アーメッド。ライオンにヒツジの肉をなげればいいのです」
 アーメッドは、ライオンがヒツジの肉を食ベているあいだに、水をくむことができました。
「アーメッドは、まったくふしぎな力をもっている。・・・だが、まさか、これはだめだろう」
 王さまは大臣と魔法使いに教えられた、三回目の注文を出しました。
「身長が一メートル、ひげの長さが十メートルあって、とても力持ちのじいさんをつれてきてくれ」
「今度ばかりは、もうだめだ」
 まえよりふかいため息をついたアーメッドに、ぺリパヌー姫はいいました。
「ご心配なく、アーメッド」
 そういったかと思うと、王さまののぞみどおりの人があらわれました。
 おどろいたことに、それは姫のお兄さんのシャイパルだったのです。
 アーメッド王子とシャイパルは、王さまのところへ急ぎました。
 そして、
「大臣に魔法使い! 王さまをそそのかしてアーメッドを殺そうとした罪は重いぞ!」
 シャイパルは鉄の棒をビュンビュンふりまわして、その風で大臣と魔法使いをまどの外にふきとばしました。
 王さまは、ハッと顔をあげていいました。
「悪かったアーメッド。ゆるしておくれ」
 王さまが心からあやまると、アリもヌーロニハル姫もかけよってきて、心からアーメッドをむかえました。
「それにしても、フーセインもはやくもどってくればいいのに。今ごろ空とぶじゅうたんで、どこをとんでいるんだろう?」
 みんなはそういって、空を見あげました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ガールスカウトの日
きょうの誕生花 → レモン
きょうの誕生日 → 1972年 ゴリ(芸人)

きょうの新作昔話 → 運のよい男
きょうの日本昔話 → おどるしかばね
きょうの世界昔話 → 空飛ぶじゅうたん
きょうの日本民話 → ギバ
きょうのイソップ童話 → ヘルメスの軍とアラブ人
きょうの江戸小話 → すり

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5月21日の世界の昔話 ほらふき男爵 シカのサクランボウ

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 5月の世界昔話

5月21日の世界の昔話

ほらふき男爵 シカのサクランボウ

ほらふき男爵 シカのサクランボウ
ビュルガーの童話 → ビュルガーの童話の詳細

♪音声配信

 わがはいは、ミュンヒハウゼン男爵(だんしゃく)。
 みんなからは「ほらふき男爵」とよばれておる。
 なぜかだって?
 それはだな、わがはいのぼうけんがあまりにもすごいので、みんな信用せずに、ほらだと思っておるからじゃ。
 なに、わがはいの話を聞きたいじゃと。
 そうか、よしよし。
 それならこんな話はどうじゃな。
 ある日、わがはいは狩りをしに森に行った。
 すると、大きくて立派なシカが現れたのじゃ。
 よし、こいつをしとめてやろうと鉄砲をかまえたが、あいにく玉切れじゃ。
 そこで、落ちていたサクランボウのタネを鉄砲に詰めて「ズドン!」とおみまいしてやった。
 ところが、シカはそのまま逃げてしまったのじゃ。
 玉は、たしかにシカの頭に命中したはずなのに。
 さて、つぎの年の事。
 わがはいは、ふたたびそのシカに出会った。
 なぜ、同じシカだとわかったのか。
 それは、シカの頭から3メートルものサクランボウの木が生えており、サクランボウがたくさん実っていたからじゃ。
 いやはや、そのサクランボウのおいしかったこと。
 では、また次の機会に、別の話をしてやろうな。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 小学校開校の日
きょうの誕生花 → かすみそう
きょうの誕生日 → 1973年 梨花 (タレント)


きょうの日本昔話 → テンをたいじしたネコ
きょうの世界昔話 → ほらふき男爵 シカのサクランボウ
きょうの日本民話 → ヒョウのかわのやね
きょうのイソップ童話 → つかまえられたイタチ
きょうの江戸小話 → ぶしょうくらべ

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5月20日の世界の昔話 クルミ割りのケート

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 5月の世界昔話

5月20日の世界の昔話

クルミ割りのケート

クルミ割りのケート
イギリスの昔話 → イギリスの国情報

♪音声配信

 むかしむかし、一人娘を持つ王さまと、一人娘を持つ女王さまが結婚しました。
 王さまの娘の名は、アンといいます。
 女王さまの娘の名は、ケートです。
 アンとケートは、ほんとうのきょうだいのようになかよしでした。
 ところが、女王は自分より美しいアンを、にくらしく思っていました。
 そして、アンをみにくくするにはどうしたらいいかと、考えつづけました。
 ある日、女王はニワトリ番の女のところヘ相談にいきました。
 実はこのニワトリ番の女は、魔法をつかうことができたのです。
 ニワトリ番の女がいいました。
「あしたの朝、アンがなにもたべないうちに、ここヘこさせなさい」
 あくる朝はやく、アンは女王から、
「谷間のニワトリ番のところへいって、タマゴをもらってきておくれ」
と、いわれました。
 アンはさっそくでかけましたが、けれどもアンは台所を通るときに、パンの皮をつまみ食いしたのです。
 そしてそれをたべながら、ニワトリ番の女のところヘいきました。
 アンを見ると、ニワトリ番の女は、
「あそこのナベのふたをあけて、中をのぞいてごらん」
と、いいました。
 アンはいわれたとおりにしましたが、べつに、かわったことはおこりませんでした。
「うちへ帰ったら、『食料とだなに、カギをかけておきなさい』って、つたえるんだよ」
と、ニワトリ番がいいました。
 アンは女王のところに帰って、ニワトリ番にいわれたとおりをつたえました。
 女王はこれで、アンがなにかたべていたことを知りました。
 つぎの朝、アンはなにもたベないうちに、ニワトリ番のところへつかいにやらされました。
 アンはとちゅうで、マメをとりいれているお百姓にあいました。
 アンはお百姓にマメをひとにぎりわけてもらって、たべながら歩いていきました。
 ニワトリ番のところへつくと、また、
「ナベのふたをあけて、中をのぞいてごらん」
と、いわれました。
 アンはそのとおりにしましたが、べつに、かわったことはおこりませんでした。
 ニワトリ番の女は、きげんをわるくして、
「帰ったら、『火がなきゃ、なんにもにえやしない』って、つたえるんだよ!」
と、いいました。
 アンは女王に、そのとおりにはなしました。
 さて、三日目の朝になりました。
 女王はなにもたべていないアンの手をひいて、ニワトリ番のところヘいそぎました。
 アンはいわれたとおりに、ナベのふたを持ち上げました。
 するとあっというまに、アンのかわいらしい首が、ヒツジの首にかわってしまったのです。
 女王はまんぞくして、お城へ帰りました。
 女王の娘のケートは、なかよしのアンの頭がヒツジにかわってしまったことにビックリしましたが、アンの頭を布でスッポリつつむと、アンといっしょにしあわせをさがす旅に出かけたのです。
 二人はドンドン歩いて、あるお城にたどりつきました。
 ケートはお城の戸をたたいて、
「病気の妹といっしょに、ひと晩とめてください」
と、たのみました。
 そのお城には、二人の王子がいました。
 一人の王子はおもい病気にかかっていて、だれもその病気をなおすことができませんでした。
 そしてふしぎなことに、ひと晩でも王子につきそって看病(かんびょう)したものは、みんなすがたを消してしまうというのです。
「王子を看病すると、魔物が出るのかもしれない」
と、いって、人びとはおそれました。
 そしていまでは、だれも看病しようとしませんでした。
 そこで王さまは、
《ひと晩じゅう、王子を看病したものには、ほうびとして銀貨をあたえよう》
と、いう、おふれをだしました。
 ケートは勇気のある娘でしたから、王子の看病をもうしでました。
 ケートが部屋に入ると、王子はべッドで眠っていました。
「ボーン、ボーン」
 時計が、十二時をうちました。
 すると病気の王子はおきあがって服をきて、かいだんをすべるようにおりていきました。
 ケートは、あとを追いました。
 王子は、ケートに気がついたようすもありません。
 王子はウマ小屋へいってくらをつけると、ウマにまたがりました。
 ケートも王子のうしろへ、そっととび乗りました。
 王子は、イヌをよびました。
 ウマに乗った王子とケートは、みどりの森を通りました。
 通りながら、ケートはクルミの実をいくつもとって、エプロンのポケットにしまいました。
 王子たちはどんどん進んで、みどりの丘につきました。
 王子はたづなをひいて、ウマをとめました。
 そして、
「開け、開け、みどりの丘よ。いれておくれ、王子と、ウマと、イヌ」
と、いうと、ケートが、
「と、王子のうしろにいる娘を」
と、つづけました。
 たちまち、みどりの丘がパカッと半分にわれて、王子たちは中にはいりました。
 中には、たいまつがあかあかとともされている、とてもりっぱな広間がありました。
 広間のおくから美しい妖精(ようせい)たちが現れ、王子をかこんでいっしょにおどりはじめました。
 ケートは見つからないように戸のかげにかくれて、王子と妖精たちのおどりを見ていました。
 王子は、いつまでもいつまでもおどりつづけて、とうとうたおれてしまいましたが、妖精たちにかいほうされると、王子はたちあがって、またおどりはじめました。
 たおれては妖精にかいほうされておどり、またたおれては妖精たちにかいほうされておどりだす。
 そんなことが何度もくりかえされ、やがて、朝を告げるニワトリがなきました。
 すると王子はあわてて、ウマにまたがりました。
 ケートもあわてて、うしろへとび乗りました。
 やがて王子たちは、お城へもどりました。
 朝日がのぼると、お城の人たちは王子のヘやをのぞきにきました。
 そしてケートが、だんろのそばでニッコリわらいながらクルミをわっているのを見て、ビックリしました。
 ケートは、王さまがごほうびの銀貨をくれるというのをことわって、
「もうひと晩、王子さまのおそばにおりましょう。あしたの晩、銀貨をいただきます」
と、いいました。
 二日目の夜も、おなじことがおこりました。
 王子は十二時におきて、みどりの丘で開かれる妖精たちの舞踏会にでかけていきました。
 ケートも王子のうしろにくっついてウマに乗り、とちゅうでクルミをとって、エプロンのポケツトにいっぱいいれました。
 ケートが戸のかげにかくれていると、妖精の赤ちゃんがつえを持って、ヨチヨチ歩きながらやってきました。
 そのとき妖精たちが、
「あのつえで三回なでれば、アンの病気がなおって、前のように美しくなれるのにね」
と、はなしているのが聞こえました。
 そこでケートは妖精の赤ちゃんの足もとに、クルミをいくつもいくつもころがしました。
 すると妖精の赤ちゃんはつえをほうりだして、クルミの実を追いかけました。
 そのあいだにケートはつえをひろって、エプロンのポケットにしまいました。
 ニワトリがないたので、王子たちはお城ヘ帰りました。
 ケートはいそいで、アンのところへいきました。
 そして妖精の赤ちゃんの持っていたつえで、アンのほおを三回なでました。
 するとたちまちヒツジの首がおちて、もとの美しいアンの首にもどったのです。
 三日目の晩に、なりました。
 ケートは、
「もし、病気の王子さまと結婚させてくださるのなら、もうひと晩、看病いたしましょう」
と、いいました。
 その晩も、前の晩とおなじでした。
 こんどは、妖精の赤ちゃんが小鳥と遊んでいました。
 妖精たちが、
「あの鳥を三口たべれば、王子さまの病気はなおってしまうのにね」
と、はなしているのを聞きました。
 ケートは妖精の赤ちゃんの足もとに、クルミをいくつもころがしました。
 妖精の赤ちゃんは小鳥をはなして、ヨチヨチとクルミを追いかけました。
 そのあいだにケートは小鳥をつかまえて、エプロンのポケツトにしまいました。
 ニワトリがないて、王子はお城に帰りました。
 ケートはすぐに、お城の厨房(ちゅうぼう)にいくと、その小鳥で料理をつくりました。
 まもなく、とてもおいしそうなにおいが王子のへやにまでただよってくると、
「ああ、あの小鳥がたべたいなあ」
と、王子がべッドにねたままでつぶやきました。
「はい。どうぞ食べてください」
 料理をつくり終えたケートは、王子に小鳥の料理をさしだしました。
 王子が、その料理をひと口たべました。
 すると、ベッドに寝ていた王子が、べッドの上にひじをついて頭をもちあげました。
 しばらくすると、
「ああ、もうひと口、あの小鳥がたべたい」
と、いいました。
 ケートのさし出す小鳥をふた口たベると、王子はべッドの上におきあがりました。
 また、しばらくすると、
「ああ、もうひと口だけ、あの小鳥がたべたいなあ」
と、いいました。
 ケートのさし出す小鳥を三口たべると、王子はついにべッドから出てきたのです。
 翌朝になり、お城の人が王子のヘやヘやってきました。
 そして王子が、ケートといっしょにクルミをわっているのを見てビックリです。
 さて、ケートと王子がそうこうしているうちに、もう一人の王子が美しいアンをすっかり好きになりました。
 こうして病気だった王子はケートと結婚し、もう一人の王子は病気だったアンと結婚したのです。
 それからは四人とも、いつまでもしあわせにくらしたということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ローマ字の日
きょうの誕生花 → はなしょうぶ
きょうの誕生日 → 1940年 王貞治 (野球)

きょうの新作昔話 → ヤンニとドラゴンとお嫁さん
きょうの日本昔話 → ウシのはなぐり
きょうの世界昔話 → クルミ割りのケート
きょうの日本民話 → うそつき名人
きょうのイソップ童話 → 野ネズミと家ネズミ
きょうの江戸小話 → わらいごとではない

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5月19日の世界の昔話 ネコがごはんのあとで顔を洗うわけ

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 5月の世界昔話

5月19日の世界の昔話

ネコがごはんのあとで顔を洗うわけ

ネコがごはんのあとで顔を洗うわけ
リトアニアの昔話 → リトアニアの国情報

♪音声配信

 むかしからネコは、ごはんをたべたあとで顔や手をなめて洗います。
 ふつうなら、ごはんをたべる前に洗うのでしょうが、なぜ、そうしないのでしょうか?
 それには、こんなわけがあるのです。
 むかしむかし、一羽のスズメが、お百姓のうら庭で、ムギつぶをつついていました。
 草むらをいったりきたりして、ひとつぶずつたべています。
 それを、お百姓の飼っているネコが見つけました。
 これはいいごちそうとばかりに、ネコはスズメをつかまえてたべようとしました。
 すると、
「まってください! まってください!」
 スズメは、羽をバタバタさせてさけびました。
「ネコさん、わたしをたべるつもりですか?」
「きまってるさ。それがどうした?」
 ネコはそういうと、スズメの頭をかじろうとしました。
「ネコさん。あなたは、はずかしくないですか?」
「なにがだ?」
「だって、顔をあらうのをわすれていますよ。あなたのご主人たちはみんな、ごはんをたべるまえに顔と手をあらうでしょう。そのくらいのこと、あなただって知ってるじゃありませんか」
「うむ。なるほど、たしかにそうだ」
 ネコは顔をあらおうとして、スズメをおさえていた手をはなしました。
 そのとたん、スズメはつばさをひろげて、さっと空へとんでいってしまいました。
「ああ! しまった!」
 ネコは、からだがふるえるほどくやしがりました。
「よし、もうだまされないぞ。人間は人間のすきなようにやるさ。おれは、はじめにごはんをたべて、あとで顔をあらうんだ」
 それからネコは、ごはんのあとで顔や手をあらうことにしたのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ボクシング記念日
きょうの誕生花 → しゃくやく
きょうの誕生日 → 1954年 大塚芳忠 (声優)


きょうの日本昔話 → けもののかわはたたかれる
きょうの世界昔話 → ネコがごはんのあとで顔を洗うわけ
きょうの日本民話 → クジラの皮の絵
きょうのイソップ童話 → ライオンとカエル
きょうの江戸小話 → わしにもいっぱい

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5月18日の世界の昔話 星の金貨

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 5月の世界昔話

5月18日の世界の昔話

星の金貨

星の金貨
グリム童話 → グリム童話の詳細

♪音声配信

 むかしむかし、あるところに、小さな女の子がいました。
 お父さんもお母さんも死んでしまって、女の子の持っている物は着ている服と、しんせつな人がくれた一切れのパンだけです。
 たよる人のいない女の子は、神さまだけをたよりに野原へ出ていきました。
 すると、まずしい男の人がやってきて言いました。
「おねがいだ。わたしに何か食べるものをおくれ、もう、腹ぺこなんだ」
 食べるものといっても、女の子には一切れのパンしかありません。
 このパンをあげてしまったら、女の子の食べるものがなくなってしまいます。
 でも女の子は、持っていたパンを全部あげて言いました。
「神さまのおめぐみがありますように」
 そして先へ歩いていくと、1人の子どもがやってきて、泣きながら言いました。
「さむい、あたまがさむいよう。ねえ、何かかぶる物をちょうだい」
 そこで女の子は、自分のボウシをあげて言いました。
「神さまのお恵みがありますように」
 またしばらく行くと、今度は上着がなくてこごえている子どもに会いました。
 女の子は自分の上着をぬぐと、その子どもにあげて言いました。
「神さまのお恵みがありますように」
 また先へ歩いていくと、べつの子がスカートをほしがるので、スカートをあげて言いました。
「神さまのお恵みがありますように」
 とうとう、女の子は森にやってきました。
 あたりはもう、すっかり暗くなっています。
 そこへまた1人の子どもがやってきて、下着をほしがりました。
 下着をあげると、女の子ははだかになってしまいます。
 女の子は、すこしまよいましたが、
(暗い夜だから、だれにも見えやしないわ)
 女の子はこう考えて下着をぬぐと、とうとうこれもあげて言いました。
「神さまのお恵みがありますように」
 こうして女の子が何一つ身につけずに立っていると、とつぜん空から星が落ちてきました。
 そしてその星は、ピカピカ光る金貨になったのです。
 気がつくと、裸だったはずの女の子は、いつのまにかりっぱな服を着ていました。
「ああ、神さまありがとう」
 女の子は金貨をひろいあつめると、そのお金で一生しあわせに暮らしたということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 国際親善デー
きょうの誕生花 → ばいかうつぎ
きょうの誕生日 → 1969年 槇原敬之 (シンガー)

きょうの新作昔話 → 宝を迎える村人たち
きょうの日本昔話 → おかみすり
きょうの世界昔話 → 星の金貨
きょうの日本民話 → キツネの恩返し
きょうのイソップ童話 → 1人息子と絵にかいたライオン
きょうの江戸小話 → ごみ

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5月17日の世界の昔話 シカになった猟師

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 5月の世界昔話

5月17日の世界の昔話

シカになった猟師

シカになった猟師
ギリシアの昔話 → ギリシアの国情報

♪音声配信

 むかしむかし、アクタイオンという名前の若い猟師がいました。
 ある夏の日のことです。
 アクタイオンは十匹のイヌを連れて、森へシカ狩りに出かけました。
 森の道を十匹のイヌたちは、シカをおってかけて行きます。
 アクタイオンはイヌたちのあとについて、ほら穴の見える方へ走って行きました。
 草をかきわけ、カーテンのような木のつるをよけて進んで行くと、ほら穴のむこうに泉が見えました。
 泉から、何やら楽しそうな笑い声が聞こえて来ます。
 アクタイオンは、木のかげからそっと様子を見て思わず、
「あっ!」
と、声を出してしまいました。
 泉にいたのは美しい娘の姿の妖精(ようせい)で、月と狩りの女神のアルテミスのお供たちだったのです。
 妖精たちは、アルテミスと水浴びを楽しんでいるところでした。
 アクタイオンに気づいた妖精たちは、あわててアルテミスをかくしました。
 そしてアルテミスは、アクタイオンをにらむと、
「無礼者(ぶれいもの)!」
と、さけびました。
 そのとたん、アクタイオンのひたいからツノが生えました。
 アクタイオンは、体中がメリメリと音をたてて変っていくことにおどろき、あわてて泉に姿をうつしました。
「ああ、なんということだ・・・」
 アクタイオンは、なんとシカになっていたのです。
「どうしよう! ぼくはシカになってしまった! どうしたら人間に戻れるのだろう!」
 シカになったアクタイオンはさけびながら、森の中をかけまわりました。
 そのときです。
 ワンワンワンワン!
 アクタイオンのイヌたちが、シカになったアクタイオンを見つけて、目を光らせながら走って来るではありませんか。
「わあ、まて! 俺だ! お前たちの主人だ!」
 アクタイオンは怒鳴りましたが、イヌたちにはシカの鳴き声にしか聞こえません。
 そしてイヌたちは、主人のアクタイオンにかみつき、ついにはアクタイオンを殺してしまったのです。
 冬の星座の小イヌ座は、このときのアクタイオンの猟犬の中の一匹の、メランボスというスパルタ犬であると言われています。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 世界電気通信記念日
きょうの誕生花 → しらん
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5月16日の世界の昔話 世界一美しいバラの花

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 5月の世界昔話

5月16日の世界の昔話

世界一美しいバラの花

世界一美しいバラの花
アンデルセン童話 → アンデルセン童話の詳細

♪音声配信

 むかしむかし、えらい女王さまがいました。
 そのお庭には一年じゅう、その時々の一番美しい花や、世界じゅうの国々から持ってきた花が咲いていました。
 けれども、女王さまのとくにお気に入りの花はバラの花です。
 ですからバラの花ならば、リンゴのにおいのする緑色の野バラから、プロヴァンスの一番美しいバラの花まで、ありとあらゆる種類のバラの花を持っていました。
 それらのバラは、お城の壁をはいあがり、柱やまどわくにからみつき、廊下から天井伝いに広間という広間の中までのびて行きました。
 そしてどの花も、においや形や色がそれぞれちがっていました。
 ある日、女王さまが重いご病気になってしまいました。
 お医者たちも、
「もう、お亡くなりになるのを待つほかはない」
と、言いました。
「しかし、女王さまをお助けする道がひとつございます」
 お医者たちのうちで、一番えらい人が言いました。
「それは、女王さまに世界一の美しいバラの花を差しあげることです。それは、この上もなく気高く、この上もなく清らかな愛をあらわしたものでなければなりません。女王さまのお目の光が消えないうちに、そのようなバラの花をご覧に入れることができれば、女王さまはお亡くなりにはなりません」
 さあ、これを聞いて、みんなは自分たちの庭に咲いている一番美しいバラの花を持ってきました。
 けれども、どの花も捜し求めているのとはちがいました。
 それは、愛の花園からつみとってきた花でなければなりません。
 でも、愛の花園のうちのどの花がいったい、この上もなく気高く、この上もなく清らかな愛の象徴(しょうちょう)でしょうか?
 歌びとたちは、世界一の美しいバラの花をうたって、めいめい自分の花こそそれだと言いました。
 ですが、
「まだだれも、求める花を名ざしてきた者はない!」
と、医者は言いました。
「私は、その花の咲いているところを存じております!」
と、乳飲み子をだいた幸福そうな母親が、女王さまの床のそばにきて言いました。
「私は、世界一の美しいバラの花のありかを存じております! この上もなく気高く、この上もなく清らかな愛の象徴であるバラの花、それは私のかわいい坊やのつやつやしたほおに咲き出るのでございます。この子が眠りからさめて、きげんよく目をパッチリと開いて、愛そのもののように私に笑いかけます時、その花は開くのでございます」
「なるほど、そのバラの花は美しい。だが、もっと美しい花があるはずじゃ」
と、医者は言いました。
「はい、もっとずっと美しいのがございます」
と、侍女の一人が言いました。
「私はそれを見たことがございます。それよりも気高い神々しいバラの花はどこにも咲いておりません。けれども、それはコウシンバラのように青白うございました。女王さまのほおの上に、私はそれを見たのでございます。いつぞや、女王さまは王冠(おうかん)をおぬぎになり、ご病気のお子さまをお抱きになって、長い悲しみの一夜をまんじりともなさらずに涙をお流しになっては、お子さまにキスをなさっていらっしゃいました。そして、世の母親が悲しみのおりにいたしますように、神さまにお祈りをなさいました」
「悲しみの白いバラの花には、たしかに神々しくも不思議な力がこもっている。だが、今求めている花はそれではない」
「おお、それそれ! わしは世界一の美しいバラの花を、主の聖壇(せいだん)の前で見ましたぞ」
と、年とった信心深い司教が言いました。
「わしは、それが天使(てんし)の顔のようにかがやくのを見ました。若い娘たちが主の聖餐台(せいさんだい)の前に進み出て、洗礼(せんれい)の聖約を新たにいたしました。その時、娘たちのみずみずしいほおにバラの花が赤らみ、また、青ざめました。さて、そのなかにひとりの娘がおりましたが、この娘は、純潔と愛とに満ちた魂をいだいて神を仰いでおりました。これこそ、この上もなく清らかな、この上もなく気高い愛の象徴でありましたぞ」
「神の恵み、その娘の上にあれ!」
と、賢者は言いました。
「だが、あなたがたのうち、まだだれも世界一の美しいバラの花を名ざしたものはありません」
 その時、一人の子供が部屋のなかにはいってきました。
 それは、女王さまの小さな王子でした。
 見れば、涙が目にあふれて、ほおに流れています。
 王子は、大きな本をひろげて持っていました。
 ビロードの表紙には、大きな銀の金具がついていました。
「お母さま!」
と、小さい王子は言いました。
「ねえ、ぼくが今読んだ言葉を聞いてちょうだい!」
 こう言って王子はベッドのそばに腰をおろして、主の書。世の人びとを、いえ、まだ生まれてこない後の世の人びとをも救うためにすすんで十字架におかかりになった、主の書のなかの一節を読みました。
「これよりも、大きな愛はない!」
 その時、女王さまのほおの上にバラ色の光がさしてきました。
 そして目が大きく、そして明るく開かれました。
 なぜなら、女王さまはその本のぺージのなかから、世界一の美しいバラの花が浮かびあがってくるのをご覧になったからです。
 それは、十字架の上に流されたキリストの血のなかから咲き出た、あのバラの花のすがたでした。
「私には、バラの花が見えます!」
と、女王さまは言いました。
「この世で一番美しいバラの花を見たものは、けっして死ぬことはありません」

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 旅の日
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きょうの誕生日 → 1975年 遠山景織子 (俳優)


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5月15日の世界の昔話 竹になった娘

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 5月の世界昔話

5月15日の世界の昔話

竹になった娘

竹になった娘
朝鮮半島の昔話 → 朝鮮半島の国情報

♪音声配信

 むかしむかし、タエという名まえのきれいな娘がいました。
 タエはやさしいお父さんとお母さんに見まもられて、スクスクと育ちました。
 ところがタエが十一歳になった時、お母さんが重い病気になって死んでしまいました。
 タエは悲しくて悲しくて、いつまでもないていました。
 お父さんは、小さなタエがかわいそうでなりません。
 そこで新しいおくさんをもらうと、タエの世話をたのんでいいました。
「どうか、娘をかわいがっておくれ」
 新しいおくさんは、
「もちろんですとも」
と、いいましたが、心の中ではタエがじゃまでたまりません。
「なんで、こんな子のめんどうをみなくちゃならないのかしら。この子がいなければ、もっとすきなことができるのに」
 まま母はタエを見るたびに、そんなことを考えました。
 ある日、お父さんが遠いところヘ旅に出ることになりました。
「今度は長いあいだ帰ってこられないから、くれぐれもタエのことをたのむよ」
 お父さんはまま母にそういうと、心配そうにタエを見ながらいってしまいました。
「タエを殺してしまうなら、今だわ!」
 まま母は、おそろしいことを思いつきました。
 おもちに毒(どく)をまぜて、タエに食ベさせるのです。
「さあタエ、お食ベ。おいしいおもちだよ」
 まま母におもちをすすめられて、タエはヘんだなと思いました。
 ふだんから、まま母にはいじ悪ばかりされていたからです。
「でも、せっかくおかあさまがつくってくれたおもちですもの。うたがっては悪いわ。いただきます」
 タエは思いなおすと、まま母にお礼をいっておもちを食べました。
 毒はあっというまにきいて、タエはその場にたおれて死んでしまいました。
 まま母は、タエの死体を家のうらの畑にうめました。
「ここなら、だれにもわからないわ」
 それからしばらくたったある日、タエがうめられたところから、一本のくきがはえてきました。
 そのくきは長くのびて、細い枝と細い葉をつけました。
「あのくきを、わたしにください」
 見知らぬ男がやってきて、まま母にたのみました。
 まま母はカマでくきをきると、その男にやりました。
 男はくきをうけとると、笛(ふえ)にしてふき出しました。
 すると、こんな音が出てきたではありませんか。
♪おとうさま、おかあさま。
♪娘のタエは、殺されたの。
♪新しいおかあさまに、殺されたの。
♪このくきは、わたしの骨の一本よ。
 それを聞くと、まま母はブルブル体をふるわせて、男をおいはらおうとしました。
 けれど男は、そこらじゅうを走りまわって笛をふきつづけました。
 ちょうどそこへ、長いあいだ旅に出ていたお父さんが帰ってきました。
 お父さんは、ふしぎな笛の音を聞くと、
「これはいったい、どうしたことだ?」
と、まま母や近所の人にたずねました。
 やがて本当のことがわかると、お父さんはおこって、まま母を殺してしまいました。
 タエがうめられた場所からは、いつも同じ長いくきがはえました。
 やがて人びとはそのくきをタエ(竹)とよび、かわいそうな娘を思い出すのでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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きょうの誕生日 → 1982年 藤原竜也 (俳優)

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5月14日の世界の昔話 メスウシとライオン

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5月14日の世界の昔話

メスウシとライオン

メスウシとライオン
インドの昔話 → インドの国情報

♪音声配信

 むかしむかしのお話しです。
 一頭のメスウシが川に水を飲みにいったとき、ついでに川のほとりの青い草をいっぱい食べました。
 さて帰ろうとすると、不運なことに、腹ぺこのライオンにあってしまいました。
「おい、メスウシ、かくごしろ。おまえを食べてしまうぞ!」
 ライオンは、すぐにとびかかりそうないきおいです。
 メスウシは、あとずさりしましたが、でも、気をとりなおして考えました。
(どうせ、いつかは死ぬのです。それなら、わたしをほしがっているライオンに、わたしの体をやって死ぬのが、りっぱな死にかたかもしれない)
 メスウシは、ライオンにいいました。
「どうぞ、わたしを食べてください。でも、ひとつおねがいがあるのです」
「なんだ?」
「おなかをすかせている子ウシが、わたしの帰りをまっています。どうかわたしに、おっぱいをやりにいかせてください。すぐにもどってきますから」
「だめだ、帰ってこないにきまっている!」
「帰ってきます。約束はまもります。いま子ウシに飲ませなければ、わたしのおっぱいは、むだになってしまいます。何かの役にたつということは、とても大事なことでしょう?」
「・・・ふむ。じゃあ、いってこい。おれはここでまっている」
 ライオンは、しぶしぶながらもしょうちしました。
 メスウシは、いそいで家へ帰ると、子ウシをよびました。
「さあ、おいでぼうや。わたしのおっぱいをたっぷりとお飲み」
 ところが、りこうな子ウシは、お母さんのようすがいつもとちがうことに気がつきました。
「お母さん、何か心配ごとがあるんでしょう? はなしてよ。はなしてくれなければ、ぼく、おっぱいを飲まないよ」
 子ウシがあまりにしんけんなので、メスウシはとうとう、本当のことをはなしました。
「ね、わかったでしょ。いい子だから、はやく飲んでね。お母さんは、ライオンとかたく約束をしたのだから」
 すると子ウシは、なき出しそうな顔でお母さんを見あげました。
「お母さん。ぼくもお母さんといっしょにいく。お母さんが一人でライオンのところへいくと思ったら、ぼく、かなしくて、おっぱいを飲むことなんかできないよ」
 メスウシは、子ウシをだきしめました。
「お母さん」
 子ウシは、いいました。
「この世の中で何かの役にたつのは、いいことだっていったでしょう。お母さんとぼくを食べれば、ライオンもお腹が一杯になって、しばらくは他の動物を食べたりしないよ」
「でも、おまえまでが食べられるなんて・・・」
「いやだ! お母さんといっしょにいく!」
 子ウシは、けっしてメスウシのそばをはなれようとはしません。
 しかたなく、メスウシは子ウシをつれて、ライオンのところへ急ぎました。
「ライオンさん、約束どおり帰ってきました。子ウシもいっしょです。さあ、わたしたちを食ベてください。あなたはおなかがペコペコでしょうが、あたしたちを食べれば、しばらくは他の動物を食べなくてもいいはず。自分の体をささげて、ほかの動物を助けるのは、たいへんだいじなことですから」
 ライオンは、メスウシの話をジッと聞いていました。
 その目には、なみだが浮かんでいます。
「さあ、ライオンさん、どうぞ」
「ぼくもどうぞ」
 ウシの親子はそういうと、しずかに目をつむりました。
 するととつぜん、ライオンはお腹を押さえると、ウシの親子にいいました。
「あたっ、あいたた! 急にお腹が痛くなってきた。これでは何も食べることは出来ない。ざんねん、ざんねん」
 そしてライオンは、そのまま帰って行きました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 温度計の日
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きょうの誕生日 → われなぐさ


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きょうの世界昔話 → メスウシとライオン
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5月13日の世界の昔話 死神の名づけ親

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5月13日の世界の昔話

死神の名づけ親

死神の名づけ親
グリム童話 →グリム童話の詳細

♪音声配信

 むかしむかし、まずしい男に子どもが生まれた。
 男は道で出会った者に、子どもの名づけ親になってもらおうと考えました。
 まず会ったのは、おしりにしっぽのはえた悪魔(あくま)です。
 しかし男は、悪魔は人をだますからいやだと、ことわりました。
 次に会ったのは、骨だけの死神です。
 死神は金持ちでも貧乏でも、公平に死をあたえる神です。
 そこで男は、死神に名づけ親をたのみました。
 たのまれた死神は、名づけた子どもを裕福(ゆうふく)にしてやると約束しました。
 そしてその子が大きくなると、あのときの死神が現われたのです。
 死神はその子を森に連れていき、ある薬草を指さしました。
「おまえにプレゼントをしてやろう。医者になるんだ。おまえが病人をみるときには必ずわたしがいてやろう。わたしが病人の頭の方にいたら、この薬草で治せるだろう。しかし、足の方にいたら助からないからな」
 しばらくすると、その若い男は名医といわれるようになりました。
 そんなある日、王さまが病気になったのです。
 さっそくよばれて男が行くと、死神は王さまの足の方に立っていました。
 このままでは、王さまは死んでしまいます。
 男は、何か死神をだます方法はないかと考え、ある方法を思いつきました。
「王さまをベッドごと持ち上げて、頭と足を逆にしてください」
 こうしておいて、あの薬草を飲ませると、王さまの病気はたちどころになおってしまいました。
 その日の夜、死神は男の所にやってきて、
「今度、あんなことをしたらただではすまない。二度とするなよ」
と、いいました。
 しばらくすると、今度はお姫さまが病気になりました。
 悲しんだ王さまは、姫の病気をなおした者に姫を嫁にやるといったのです。
 そこで、また男がお城にやってきました。
 見ると、死神はまた足の方にいます。
 死神の言葉をわすれたわけではありませんが、男はお姫さまの美しさに目がくらんで、王さまをなおしたのと同じ方法でお姫さまの病気をなおしたのです。
 その日の夜、死神は男をひっつかむと、ある洞窟(どうくつ)の中へ引っぱっていきました。
 そこには、たくさんのローソクがならんでいます。
「どうだ、きれいだろう。これが生命(せいめい)のローソクだ。この太くて長いのは元気な若者のもの。この小さいのは年寄りのものだ」
 男は、自分のを見せてくれるようにたのみました。
 するとそれは、今にも消えそうな小さいローソクだったのです。
「本当は、お前のローソクはまだまだ太くて長いものだったのだが、王と姫を助けてやったために、こんなに小さくなってしまったのだ」
「お願いです。もう、あんなことはしません。どうか、大きなローソクをつぎたしてください」
 男が泣いてたのむので、死神は大きなローソクを持ってきました。
 そして火をうつすようなふりをして、小さな男のローソクを消してしまったのです。
 そのとたん、男は死んでしまいました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 愛犬の日
きょうの誕生花 → ポロニア
きょうの誕生日 → 1965年 太田光 (爆笑問題)

きょうの新作昔話 → やさしい子どもと山の神
きょうの日本昔話 → 地獄のあばれもの
きょうの世界昔話 → 死神の名づけ親
きょうの日本民話 → 娘の生まれかわり
きょうのイソップ童話 → けちんぼう
きょうの江戸小話 → どろぼうのどろぼう

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5月12日の世界の昔話 シンドバッドのぼうけん

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5月12日の世界の昔話

シンドバッドのぼうけん

シンドバッドのぼうけん
千夜一夜物語 → アラビアンナイトの詳細

♪音声配信

 むかしむかし、船乗りのシンドバッドという若者が、船に乗って商売をしながら、島から島へと渡り歩いていました。
 そしてそうこうするうちに、ある美しい島へたどり着きました。
 だれも住んでいない静かな所なので、仲間といっしょに、けしきをながめながら歩き回ってみました。
 しばらくいくときれいな泉があり、シンドバッドたちは泉のそばでひと休みしました。
 疲れていたのか、シンドバッドはそのままぐっすりと眠ってしまいました。
 ふと目がさめてみると、仲間たちはだれもおらず、船はシンドバッドを置き去りにして出てしまったあとでした。
「しまった!」
 ビックリして高い木によじ登り、海を見渡しましたが船はもういません。
「ちくしょう。いったいどうすればいいのだ! ・・・おや? なんだろう?」
 陸のずっと向こうに、なにかしら白い大きな物が見えました。
 シンドバッドがいってみると、それはすばらしくりっぱな丸い建物で、とてもスベスベしています。
「入り口はどこだろう?」
 建物の周りをグルリとまわってみましたが、どこにも入り口がありません。
 そのとき突然あたりが暗くなったので、シンドバッドが空を見上げると、とても大きな鳥が飛んでいました。
 その鳥はルフという名で、ヒナ鳥にゾウを食ベさせて育てるという、ものすごい鳥だったのです。
 この白い丸い建物みたいな物は、このルフの卵だったのです。
 まいおりたルフは、卵をあたためはじめました。
 シンドバッドは頭に巻いていたターバンをとると、それで自分のからだをガッチリとルフの足にしばりつけました。
 こうしておけば、人間の住んでいる国へ運んでいってくれると考えたのです。
 夜があけると、ルフはカミナリのような鳴き声をたてて、大空高くまい上がりました。
 そしてしばらく飛び回ったのち、ようやく地面におりました。
 シンドバッドは手早くターバンをほどいて、地面におりたちました。
 ルフは丸太のような物をつめにひっかけると、どこかへ飛んでいってしまいましたが、よく見ると大きな大きなヘビでした。
 そしてシンドバッドがおろされた所は、高い山と山との谷あいでした。
「さて、ここからぬけ出すには、どうしたらいいかな?」
 シンドバッドが考えながら歩いていくと、地面一面にダイヤモンドがころがって、キラキラと光りかがやいている所に出ました。
「わあ、すごいすごい!」
と、シンドバッドはよろこびましたが、前にいるものを見てビックリ。
 なんと目の前には、ゾウでも丸のみにしそうな大蛇が、何匹も何匹もとぐろを巻いていたのです。
「このままじゃあ、大蛇に食べられてしまう。どこかへかくれなきゃ」
 シンドバッドはその夜、小さなほら穴にはいって寝ました。
 夜があけると、すぐにこの恐ろしい谷間から逃げ出そうと、あちこち調ベて回りました。
 すると突然、ズシーン! と、大きなヒツジの肉が落ちてきたのです。
 シンドバッドは腰がぬけるほどビックリしましたが、この肉は、ダイヤモンドをとる商人が投げたエサだということがすぐわかりました。
 まず、この肉のかたまりにダイヤモンドがくっつきます。
 そこへワシやハゲタカがエサにしようと、ダイヤモンドのくっついたヒツジの肉をつめにひっかけて山のてっペんまで飛んでいきます。
 そして待ちかまえていた商人たちが大声あげておどかすと、鳥はビックリして肉をすてて逃げます。
 そのあと肉にくっついてきたダイヤモンドを、とるというわけです。
 ズシーン!
 また、大きな肉のかたまりが落ちてきました。
 シンドバッドは近くにころがっているダイヤモンドの中から、大きいのをポケットにつめこめるだけつめこむと、肉のかたまりをターバンで自分のからだとしっかりとゆわえつけました。
 まもなく大きなハゲタカがまいおりてきて、肉のかたまりといっしょにシンドバッドをつめにひっかけて、山のてっペんにあがりました。
 そのとき、さわぎたてる人間の声がわき起こり、ビックリしたハゲタカは肉をすてて逃げていきました。
 肉のそばへ走り寄った商人たちは、肉の下からはい出してきたシンドバッドを見て目を丸くしました。
 シンドバッドは商人たちに今までの話をしてから、ポケットのダイヤモンドをわけてやりました。
 商人たちは喜んで、シンドバッドのために船を用意してやり、シンドバッドはその船に乗って、無事に自分の家に帰ることができたのでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 看護の日
きょうの誕生花 → アスチルベ
きょうの誕生日 → 1961年 渡辺徹 (俳優)


きょうの日本昔話 → いうな地蔵
きょうの世界昔話 → シンドバッドのぼうけん
きょうの日本民話 → テングを説きふせた男
きょうのイソップ童話 → 船旅をする人たち
きょうの江戸小話 → つもりどろぼう

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5月11日の世界の昔話 スガンさんのヤギ

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5月11日の世界の昔話

スガンさんのヤギ

スガンさんのヤギ
ドーデの童話 → ドーテ童話の詳細

♪音声配信

 ヤギ飼いのスガンさんは、ヤギでいい思いをしたことがありません。
 これまでたくさんのヤギを飼ってきましたが、ヤギたちはいつもつなを引きちぎって、山へ逃げ出してはオオカミに食ベられてしまうのです。
 でもスガンさんは、あきらめませんでした。
「今度は、もっと家になつくように、うんと若いヤギを飼うことにしよう」
 こうしてスガンさんの家には、まっ白な毛に包まれた、ピカピカに美しいメスのヤギがくることになりました。
 ヤギはおとなしい性格で、乳をしぼられるときもジッとしています。
「やっと、おれの家にいい子がきてくれたぞ」
 スガンさんは、大喜びしました。
 けれどそれは、とんだ思いちがいでした。
 ヤギは毎日、山の方をながめながら考えていました。
「ああ、森や林の中を自由にかけ回れたら、どんなにかしあわせでしょう」
 そのうちにヤギはやせてきて、お乳の出も悪くなってきました。
「ねえ、スガンさん、わたしを山へいかせてください」
 ある日、ヤギが言いますと、
「草が足りないのか?」
 スガンさんは、聞き返しました。
「いいえ」
「じゃあ、どうしてほしい?」
「山へ行きたいんです。スガンさん」
「だめだ。山にはオオカミがいるんだぞ!」
「大丈夫。ツノで、ついてやります」
「だめだ。だめだったら、だめだ」
「おねがい。どうしても行きたいのです!」
 あんまりききわけがないので、スガンさんは腹をたてると、ヤギをまっ暗な小屋に、おしこめてしまいました。
 けれどスガンさんが戸をしめたときには、すばしこいヤギはまどから外へ逃げ出していたのです。
 ヤギはいちもくさんに山へかけあがると、色とりどりの草を食べて、しげみの中をころげまわりました。
 もう、じゃまなつなも、くいもなければ、毎日、あじけない芝草(しばくさ)をがまんして食ベることもないのです。
 ヤギは岩場に横になると、はるか山すそに見えるスガンさんの家を見おろしました。
「なんてちっぽけな所に、わたしはとじこめられていたんだろう。でも、もう自由だわ。アハハハハ」
 ヤギは、涙が出るほど笑いました。
 ところが、日がくれかかり、あたりが暗くなりはじめますと、
「ワォーーーーン」
 どこからか、オオカミのとおぼえが聞こえてきました。
 谷間からは、スガンさんのヤギをよぶラッパの音がひびいてきます。
 けれどヤギは、二度と小屋へ戻るつもりはありません。
と、そのとき、すぐ後ろにギラギラと光る2つの目玉がせまっていました。
 オオカミです。
 ヤギは夢中でツノを突き立てると、オオカミにいどみました。
 スガンさんのヤギは、良くたたかいました。
 なにしろ、夜明けまでがんばったのですから。
 けれど、朝にはオオカミのえじきになってしまったのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 長良川鵜飼い開き
きょうの誕生花 → やぐるまそう
きょうの誕生日 → 1963年 浜田雅功 (芸人)

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きょうの世界昔話 → スガンさんのヤギ
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きょうの江戸小話 → なまけ者

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5月10日の世界の昔話 カムイルのぼうけん

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5月10日の世界の昔話

カムイルのぼうけん

カムイルのぼうけん
ロシアの昔話 → ロシアの国情報

♪音声配信

 むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
 なに不自由なく、くらしていましたが、ただ悲しいことに、二人には子どもがありませんでした。
 ある日おばあさんが、おまんじゅうをつくっていました。
 おじいさんはそばにすわってながめていましたが、ねり粉をひとつまみちぎりながら、ふと、こんなことをいいました。
「なあ、わしらには息子がない。せめて、このねり粉で子どもをつくろう」
 おじいさんとおばあさんは、ねり粉で小さな男の子をつくって、腰かけの上におきました。
 それから二人は、しごとにかかりました。
 おばあさんは、メスウシの乳をしぼりにいきました。
 おじいさんは、たきぎを切るためにうら庭ヘいきました。
 しばらくして、おじいさんとおばあさんは家にもどってきてビックリ。
 なんとねり粉の男の子が、ほんとうの人間の子になっていたのです。
 ねり粉の男の子はゆかにすわって、子ヤギと遊んでいるのです。
 おじいさんとおばあさんは、夢かとばかり喜びました。
「わたしたちの息子に、なんて名まえをつけましょうかね?」
と、おばあさんがたずねると、
「ねり粉でつくった子どもだ。カムイルという名にしよう」
と、おじいさんがいいました。
 カムイルというのは、タタール語で、ねり粉のことです。
 カムイルは、ズンズンと大きくなり、すごい力もちになっていきました。
 ある日、カムイルはおもてへ遊びにいって、子どもたちとすもうをとりはじめました。
 カムイルは一人の子どもを持ちあげて、木よりも高くほうりあげてしまいました。
 その子は地面におちると、そのまま動けなくなりました。
 怒ったほかの子どもたちは、いっせいにカムイルにとびかかりましたが、ところが反対に、カムイルはみんなをかたっぱしからやっつけてしまいました。
 これを知った村の人たちは、そろって、おじいさんのところへおしかけました。
「こんなおそろしい子は、一日もこの村へはおいておけない。どこかへやっておくれ。さもないと、村じゅうの子どもが、けがをさせられてしまう」
 しかたがありません。
 おじいさんとおばあさんは、カムイルを旅にだすことにしました。
「お父さん、お母さん、心配しないでください。遠くの国へいって、そこの人たちがどんなくらしをしているか見てきます。そうだ、ぼくに棒を一本ください。ほかにはなにもいりませんから」
 おじいさんは、棒を持ってきました。
 ところがカムイルが、その棒をかるく引っぱると、棒はまっぷたつにおれてしまいました。
「これじゃだめです。かじやにたのんで、鉄棒を作ってもらえませんか?」
 やがてりっぱな鉄棒ができてくると、カムイルは、その鉄棒をビュンビュンとふりまわしてみました。
「これならいい。とっても丈夫だ。じゃあ、いってきます」
 おばあさんはお菓子を焼いて、カムイルに持たせました。
 カムイルは鉄棒とお菓子を持って、村からでていきました。
 どんどん歩いていくと、森にでました。
 むこうから一人の男が、ノロノロとやってきました。
 見ると、その男は両足をしばられているので、やっとのことで歩いています。
「どうしたんだい? だれに足をしばられたんだい?」
「自分でしばったのさ。このひもをといたら、鳥だって追いつけないくらい、はやく歩きだしてしまうんでね」
「それで、どこへいくつもりだい?」
「さあて、どこへいくか自分でもわからないんだ」
「それじゃ、いっしょにいかないか?」
 二人は、いっしょに旅をつづけました。
 ドンドン歩いていくうちに、二人はおかしな男にであいました。
 男は道ばたに腰をおろして、指で鼻をおさえているのです。
「きみ、きみ、どうして、鼻をおさえているんだい?」
 カムイルが、男にたずねると、
「鼻をおさえていなかったら、たいへんなことになるんでね」
と、男はいいました。
「なにしろ、片っぽうの鼻の穴をほんのチョッピリでもあければ、おれの鼻息で近くの家のひきうすが、みんなまわりだしてしまうんだ。両方の鼻の穴をあけたりしたら、それこそ大地震がおきてしまうだろうよ」
「それはすごい。ぼくたちといっしょに、旅にいかないか?」
と、カムイルがたずねました。
「ああ、いいとも」
 三人はそろって、旅をつづけました。
 ドンドンいくうちに、白いひげをはやしたおじいさんにあいました。
 そのおじいさんはボウシをかぶっていましたが、ふつうのかぶりかたとはちがって、かたほうの耳にだけ、ボウシを乗っけているのです。
「おじいさん、どうしてそんなかぶりかたをしているんだい?」
と、カムイルがたずねました。
「こういうふうにかぶるより、しょうがないからさ。なにしろボウシを頭にかぶせたりすれば、たちまちふぶきがおこるんでな。ちゃんと深くかぶったりすれば、世界じゅうが、こおりついてしまうんだよ」
 カムイルは、おどろいていいました。
「おじいさん。ぼくたちといっしょにいかないか?」
 四人がいっしょに歩いていくと、弓を持った男にあいました。
 その男は、弓でなにかをねらっていました。
 けれども、なにをねらっているのかけんとうがつきません。
「いったい、なにをねらっているんだい?」
と、カムイルはたずねました。
「ハエだよ」
と、弓をかまえた男はこたえました。
「ハエはここから六十キロメートルさきの、山の木の枝にとまっているんだ。あいつの左の目玉を、いぬいてやりたいのさ」
 カムイルはすっかりおどろいて、その弓を持った男を旅のなかまにいれました。
 五人が歩いていくと、一人のおじいさんにであいました。
 そのおじいさんはしゃがんで、土を、こっちの手からあっちの手へとうつしています。
「おじいさん。なにをしているんだい?」
「わしが土をまけば、まいたところに山ができるんだよ。あっちにも、こっちにもな」
 カムイルは、このおじいさんもなかまにさそいました。
 六人は、大きな町にやってきました。
 この国には、美しいお姫さまがいました。
 一目でお姫さまを好きになったカムイルは、お姫さまに結婚を申しこむために、みんなをつれて王さまのご殿ヘいきました。
 けれども王さまは、どこのだれともわからない若者に、だいじな娘をやりたくはありません。
 そこで王さまは、なんとかしてことわろうと思って、ちえをしぼりました。
 そして王さまはいいました。
「おまえたちの中に、わしの家来のはや足男よりもはやいものがいたら、姫をやることにしよう」
 王さまは家来の中で一番足のはやい、はや足男をよんで、たかい山まで走っていくようにいいつけました。
 はや足男は、むちゅうでかけだしました。
 さて、カムイルのなかまの足じまんは、ゆっくりと足の革ひもをほどいてから、あとを追いかけました。
 ゆっくり追いかけたのに、足じまんは、たちまち王さまの家来を追いこして、ひとっとびに山へつきました。
 足じまんは草むらにねころがって、王さまの家来がくるのをまちました。
 そのうちにまちくたびれて、ぐっすり、ねこんでしまいました。
 王さまの家来は山にかけつけると、さっと、ひきかえしました。
 けれども足じまんは、あいかわらずねむっています。
 やがて、道にほこりがまいあがって、王さまの家来がもどってきました。
 それを見ると、カムイルは心配になって、弓じまんにいいました。
「どうやら、足じまんはいねむりをしているらしい。ぐずぐずしていると負けてしまう。あいつをうって、目をさまさしてやってくれないか」
 弓じまんは肩から弓をおろすと、ねらいをさだめて矢をはなちました。
 矢は、ねむっている足じまんの耳のところを、すれすれにかすめました。
 足じまんはビックリして、目をさましました。
「ありゃ、寝過してしまった。すこし急ぐとするか」
 足じまんはそういうと、庭をさんぽするような足取りで、たちまち王さまの家来を追いこしてしまいました。
 王さまは、せっかくの作戦がしっぱいしたのを知ると、カムイルにいいました。
「よろしい。それではやくそくどおり姫をあげよう。だがそのまえに、風呂にはいってきなさい」
 王さまはカムイルたちを鉄の風呂にいれて、むし焼きにしようと思ったのです。
 カムイルは、そんなこととは知りません。
 なかまたちといっしょに、王さまの鉄風呂にいきました。
 みんながお風呂にはいったとたん、王さまは、外からしっかりとカギをかけました。
 そして山のようなたきぎを、ドンドンくべさせました。
「これで、あいつらも生きてはでてこられないだろう」
 さて、お風呂があつくなってくると、カムイルは白ひげのおじいさんにいいました。
「おじいさん。ボウシをかぶってくれよ」
 おじいさんは、ボウシを頭のてっぺんにかぶりました。
 すると鉄風呂の中で、ふぶきがまきおこりました。
 けれども、ふぶきぐらいでは、まだお風呂はつめたくなりません。
 おじいさんは、ボウシを深くかぶりました。
 そのとたん、お風呂の壁はたちまちこおりついて、厚い氷でおおわれました。
「おじいさん、やりすぎだ! もう少しゆるめてくれ!」
 あくる朝、お風呂のようすを見にきた王さまはビックリ。
 むし焼きにしたはずのカムイルたちが、元気な顔で出てきたからです。
 カムイルは、王さまにいいました。
「王さま、はっきりいってください。お姫さまをくださるんですか? くださらないんですか?」
「やるもんか! おまえなんかにぜったいやらん! とれるものなら、とってみろ!」
 王さまはさけぶと、家来たちにあいずをしました。
 王さまの家来たちは、カムイルとなかまたちにとびかかりました。
 そこでカムイルは、鼻をつまんでいる鼻息じまんに、ちょっと息をふきかけてくれとたのみました。
 するとたちまち、おそろしいあらしがおこって、王さまの家来たちは一人のこらず、ホコリのようにふきとばされてしまいました。
 すると、山づくりのおじいさんがいいました。
「こっちヘぱらぱら山をつくろう。あっちヘぱらばら山をつくろう」
 高い山が二つできて、王さまの家来たちをうめてしまいました。
 それでもまだ、王さまはこうさんしません。
 こんどは、軍隊をよびました。
 おおぜいの軍隊が、カムイルめがけておしよせてきました。
「さて、おれもいいところを見せるか」
 カムイルは鉄棒をビュンビュンふりまわして、軍隊をなんなく追いちらしてしまいました。
 王さまはおそろしくなって、やっとお姫さまとの結婚をゆるしました。
 カムイルは花よめをウマに乗せて、なかまたちといっしょにおじいさんとおばあさんのところへ帰りました。
 それから三十日間も宴会(えんかい)が開かれて、四十日間も結婚式がつづいたということです。

 ※このお話しは、グリム童話の「6人の男が世界をあるきまわる」の原作だといわれています。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 日本気象協会設立記念日
きょうの誕生花 → しゃくなげ
きょうの誕生日 → 1970年 トモ (芸人)


きょうの日本昔話 → あまのじゃくくらべ
きょうの世界昔話 → カムイルのぼうけん
きょうの日本民話 → カッパのトゲぬき薬
きょうのイソップ童話 → ライオンとロバとキツネ
きょうの江戸小話 → うどん

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5月9日の世界の昔話 オオカミと3人の娘

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 5月の世界昔話

5月9日の世界の昔話

オオカミと3人の娘

オオカミと3人の娘
ギリシアの昔話 → ギリシアの国情報

♪音声配信

 むかしむかし、よその村へでかせぎにいっていた、三人姉妹の娘たちがいました。
 ある日、お母さんがおもい病気にかかって死にそうだという知らせがとどきました。
「まあ、どうしましょう?」
と、三人はそうだんしました。
「わたしたち、仕事にやとわれているんだから、みんなででかけるわけにはいかないわ。わたしが一番上のねえさんだから、いってくるね」
 一番上の娘は、お母さんへのおみまいの品にブドウ酒四本と、ほしあんず入りのお菓子を四つ用意しました。
「いってらっしゃい。気をつけてね」
 二人の妹は、ねえさんをおくりだしました。
 お母さんのいるボルゴフォルテ村へいくには、深い森のなかを通らなければならないので、とても心配だったのです。
 深い森のなかの道に、さしかかりました。
 するととつぜん、オオカミがとびだしてきました。
「もしもし、娘さん。そんなにいそいで、どこへいくんだね?」
 オオカミは、立ちすくんでいる娘をこわがらせないように、ネコなで声でいいました。
「ボルゴフォルテ村の、お母さんのところへいくんです。お母さんの病気が、おもいそうですから」
「そのカゴには、なにがはいっているんだね?」
「ブドウ酒四本と、お菓子が四つ」
「じゃ、それをおよこし」
「いいえ。これはお母さんへのおみまいの品。あげるわけにはいきません」
 娘はカゴを、しっかりとかかえました。
 オオカミは、二、三歩、そばへよってくると、こんどはきばをむきだしておどしました。
「くれないのかい。くれなくてもいいが、そのかわりおまえはどうなると思う? カゴのなかみと命の、どっちが大事なんだ!」
 娘はこわくなって、カゴをほうりだして妹たちのところへにげかえりました。
 ねえさんの話をきくと、こんどは二番目の娘がでかけることになりました。
 おみまいの品は、さっきとおなじように、ブドウ酒四本と、ほしあんず入りのお菓子が四つでした。
「では、気をつけていっておいで」
「オオカミに、出あわないようにね」
 一番上のねえさんと、妹がおくりだしました。
 深い森のなかの道にさしかかると、またさっきのオオカミが出てきました。
「もしもし、娘さん。そんなにいそいで、どこへいくんだね?」
 オオカミはネコなで声で、やさしくことばをかけました。
「ボルゴフォルテ村のお母さんのところへいくんです。お母さんの病気がおもいそうですから」
「そのカゴには、なにがはいっているんだね?」
「ブドウ酒四本と、お菓子が四つ」
「じゃ、それをおよこし」
「いいえ。これはお母さんへのおみまいの品。あげるわけにはいきません」
「くれないのかい。くれなきゃ、おまえはわしに食われるんだよ」
 二番目の娘もこわくなって、カゴをほうりだすとにげてかえりました。
 すえの妹は、それをきくと、
「じゃ、わたしがいってくるわ」
と、いいだしました。
「だいじょうぶかい?」
「しんぱいだわ」
と、ねえさんだちがいいました。
「まかせて。わたしには、いい考えがあるの」
 そういうと、すえの妹は台所へいって、カゴの中にブドウ酒四本をいれ、それからお菓子の中に、なにやらたくさんつめこみました。
「じゃ、いっておいで。オオカミに、出あわないようにね」
「ぶじにいっておいで。お母さんにくれぐれもよろしくね」
 すえ娘はカゴをかかえると、元気よくかけていきました。
 うすぐらい森のなかの道にさしかかると、またもオオカミが出てきました。
 でも、すえ娘はわき目もふらずに、ズンズンと足をいそがせました。
 オオカミはそばへくると、また、ネコなで声でいいました。
「もしもし、娘さん。そんなにいそいで、どこへいくんだね?」
「ボルゴフォルテ村のお母さんのところへ。病気がおもいそうですから」
「そのカゴには、なにがはいっているんだね」
「ブドウ酒四本と、お菓子が四つ」
「じゃ、それをおよこし」
「いいえ、あげるわけにはいきません。お母さんへのおみまいの品ですから」
 すえ娘はこわそうなようすも見せないで、オオカミを見つめました。
 オオカミは、きばをむきだしておどすことにしました。
「じゃ、それをよこさねえというのか?」
「ええ、これはあげられないわ」
「よこさなきゃ、おまえはどうなると思う。わしに食われるんだぞ!」
「それなら、しかたがないわ。これをおたべ」
 すえ娘は大きく口をあけているオオカミめがけて、お菓子を一つなげつけました。
 オオカミはそれを、パクリと口でうけとめました。
 そして、
「ウギャーーァ!」
と、さけんで、とびあがりました。
 実はお菓子の中には、クギがたくさんいれてあったのです。
 オオカミは口じゅう血だらけになって、お菓子とクギをはきだしました。
「おぼえていろ。このしかえしは、きっとしてやるぞ」
 オオカミは、森のおくににげていきました。
 でも、ぬけめのないオオカミは森の近道をぬけて、ボルゴフォルテ村に先まわりしました。
 そして、娘たちのお母さんの家にしのびこんで、病気でねているお母さんを、ひとのみにのみこんでしまったのです。
 それからオオカミはお母さんのずきんをかぶり、べッドにもぐりこんで、すえ娘がくるのをまっていました。
 しばらくして、すえ娘はお母さんの家につきました。
「お母さん」
 すえ娘は、ベッドのそばへいってみて、お母さんのあまりの変わりようにビックリ。
 だってお母さんは、色が黒くて、とても頭が大きくなってしまったからです。
 それに、すえ娘にやさしい笑顔を見せてもくれません。
「お母さん、なぜわたしをだいてくれないの?」
 そのとたん、オオカミはバッととびおきて娘をひとのみにすると、そのままおもてにとびだしました。
 でも、畑ではたらいていた村の人たちが、家から出ていくオオカミをみつけました。
 そして手に手に、クワやすきをもってオオカミをおいかけ、たたきころしてしまいました。
 お母さんとすえ娘は、オオカミのおなかの中から、ぶじにたすけだされました。
 それからお母さんは、りこうなすえ娘の看病で、まもなく病気もなおったということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → アイスクリームの日
きょうの誕生花 → クレマチス
きょうの誕生日 → 1970年 テツ (芸人)


きょうの日本昔話 → ばばいるか
きょうの世界昔話 → オオカミと3人の娘
きょうの日本民話 → うでをみがいた兄弟
きょうのイソップ童話 → 水をたたく漁師
きょうの江戸小話 → けはえぐすり

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5月8日の世界の昔話 三人のなまけもの

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5月8日の世界の昔話

三人のなまけもの

三人のなまけもの
グリム童話 →グリム童話の詳細

♪音声配信

 むかしむかし、ある王さまに、三人の王子がいました。
 王さまは三人ともおなじようにかわいがっていたので、じぶんが死んだあとは、どの王子を王さまにしたものかとなやみました。
 そしていよいよ、王さまは死ぬというときになって、三人の王子をまくらもとによびよせると、こういいました。
「子どもたちや、わしはおまえたちのなかで一番のなまけものを、わしの死んだあとの王さまにしようとおもうのだが」
 すると、一番年上の王子がいいました。
「おとうさま、それならばこの国はわたしのものでございますよ。なにしろわたしときたら、これからねようと横になっても、目を閉じるのがじゃまくさくて、そのままねむらないでいるのですから」
 それを聞いた、二番目の王子はいいました。
「おとうさま、この国はわたしのものでございますよ。なにしろわたしは、火のそばにすわってあたっているときに、いくら火があつくても、足を引っ込めるのがじゃまくさくて、足にやけどをしたくらいですからね」
 それを聞いた、三番目の王子がいいました。
「おとうさま、この国はぼくのものですよ。なにしろぼくは、これから首つりにされるとして、もしだれかがよく切れるナイフをもたせてくれて、『これでなわを切るがいい』と、いったとしても、ぼくは手をもちあげてなわを切るくらいなら、だまって首をしめてもらうほうがいいんですからね」
 王さまはこれをきくと、
「三番目の王子よ、おまえがいちばんのなまけものだ。じゃあ、王さまにしてやろう」
と、いったそうです。

 三人の王子のだれが王さまになっても、この国は長くないでしょうね。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 世界赤十字デー
きょうの誕生花 → ふじ
きょうの誕生日 → 1965年 さくらももこ (漫画家)

きょうの新作昔話 → 山姥(やまんば)
きょうの日本昔話 → 牛池
きょうの世界昔話 → 三人のなまけもの
きょうの日本民話 → ならず者と白いヘビ
きょうのイソップ童話 → ネズミとカエル
きょうの江戸小話 → パッと死ぬ

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5月7日の世界の昔話 天の猟師オリオン

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5月7日の世界の昔話

天の猟師オリオン

天の猟師オリオン
ギリシアの昔話 → ギリシアの国情報

♪音声配信

 むかしむかし、ギリシアの海の神さまポセイドンの子のオリオンは、月の美しいある夜、散歩に出かけました。
 オリオンは、ふと足をとめました。
 どこからか楽しそうな音楽と、それにまじって女の人たちの笑い声が聞こえてくるのです。
 オリオンは草のしげみをかきわけて、その声の方へそっと進みました。
 草のしげみのむこうには、森の中の広場がありました。
 そこでは、美しい七人姉妹がおどっています。
 長い髪を月の光にかがやかせ、ほほはバラ色です。
 あまりの美しさに、オリオンはしばらくウットリとながめていましたが、しばらくすると、娘たちを少しからかってやろうと思いました。
 そして、
「ウォーッ!」
と、化物のような声を出し、持っていた太いぼうをふりあげながら、七人姉妹の方へ飛び出して行ったのです。
「きゃあ、こわい!」
 七人姉妹はたちまち青くなり、急いでほら穴へ逃げ込みました。
「助けて! 助けてください!」
 そのほら穴は、月と狩りの女神アルテミスのいる場所でした。
 アルテミスは、銀色の服のすそを広げて、七人姉妹をかくしました。
 七人姉妹は、妖精だったのです。
 そうとは知らないオリオンは、まだふざけて、
「ウォー! ウォー!」
と、ほえながら、ほら穴へはいって行きました。
 すると、
「とまれ!」
 アルテミスが、どなりました。
 その声に、オリオンはドキッとしました。
 強い魔法を持つ、アルテミスだとわかったからです。
 アルテミスを怒らせたら、自分はどんな魔法をかけられるかわかりません。
 オリオンは一歩うしろへさがり、もう一歩さがると、ゆっくりふりむきました。
 そしてそのまま、ほら穴を飛びだし逃げて行きました。
 アルテミスはクスクス笑って、銀色のすその下にかくした七人姉妹に言いました。
「もう怖いことはありません。さあ出ていらっしゃい」
 アルテミスは、銀色のすそを広げました。
 すると、どうでしょう。
 七羽のまっ白いハトたちが、飛びたって行ったのです。
 その美しいハトたちは、月あかりの森へ飛んで行きました。
 この様子を、ゼウスが見ていました。
 そして美しい七羽の白いハトを、いつまでも空にかざりたいと考えて、ハトたちを魔法で星にかえました。
 この星たちが、おうし座の中でキラキラとかがやくスバル座だということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 博士の日
きょうの誕生花 → 薔薇
きょうの誕生日 → 1979年 窪塚洋介 (俳優)


きょうの日本昔話 → あぶらとり
きょうの世界昔話 → 天の猟師オリオン
きょうの日本民話 → 湖山長者
きょうのイソップ童話 → ラクダとゾウとサル
きょうの江戸小話 → かまが大事

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5月6日の世界の昔話 コウノトリ

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 5月の世界昔話

5月6日の世界の昔話

コウノトリ

コウノトリ
アンデルセン童話 → アンデルセン童話の詳細

♪音声配信

 むかしむかし、ある山かげの家の屋根に、コウノトリが巣(す)を作っていました。
  巣の中には、四わのヒナがいます。
  それを、お母さんのコウノトリがだいていました。
  やねの上でお父さんのコウノトリは、一本足でたって見はりをしていました。
  山すその道で、村の子どもたちがあそんでいました。
  やねの上のコウノトリを見て、こんなうたをうたいました。
♪コウノトリ、コウノトリ
♪一本足のたちんぼう
♪おかみさんは、巣のなかで
♪四わのヒヨコをだいてるが
♪一ばんめーは、しめられて
♪二ばんめーは、なぐられて
♪三ばんめーは、まるやきで
♪四ばんめーは、むかれるぞ
  これをきくと、コウノトリの子どもたちはビックリしてしまいました。
「ねえ、お母さん、人間の子が、あんなわるくちをいってるよ」
「ねえ、ぼくたち、ほんとにしめられるの?」
「ほんとにやかれるの?」
  くちぐちに、しんぱいそうにききました。
  するとお母さんは、大きく首を横にふって、
「そんなことが、あるもんですか!」
と、いいました。
「心配しなくていいんですよ。はやく大きくなって、みんなでひろい草原の方へとんでいきましょうね。草原にはね、大きなお池があって、それはそれはたのしいのよ」
「わあ、すてきだなあ」
  ヒナドリたちは、よろこんでいいました。
  つぎの日も、村の子どもはコウノトリを見ると、
♪一ばんめーは、しめられて
♪二ばんめーは、なぐられて
♪三ばんめーは、まるやきで
♪四ばんめーは、むかれるぞ
と、うたいました。
  ヒナドリたちは、それをきくと、
「いやだなあ。またあんなこといって」
「ほんとうに、だいじょうぶかしら?」
と、かおをしかめました。
「あんなわるくち、きかないふりをしておいで」
と、お母さんのコウノトリはいいました。
「それよりも、もうそろそろ、とぶおけいこをしなければいけません。いい。ほら、こういうふうにくびをあげて、こんなふうに足をそろえて、いち、に。いち、に。・・・このれんしゅうをするのです」
「はーい。いち、に。いち、に」
  四わの子どものコウノトリは、お母さんのするようにしてみましたが、なかなかうまくできません。
  ヨロヨロして、巣の外へころがりおちそうになってしまいました。
  でも、毎日毎日れんしゅうしているうちに、うまくできるようになりました。
  そして、ついにとべるようになったのです。
「さあ、ひろい世の中へ、でていくんだ」
  コウノトリたちは、もう村の子どもの歌などなんでもありません。
  みんな目をかがやかせて、パタ、パタ、パタ、パタと、あかるい空へとびたっていきました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ゴムの日
きょうの誕生花 → しゃが
きょうの誕生日 → 1972年 高橋尚子 (マラソン)

きょうの新作昔話 → 娘に恩返しをした水牛
きょうの日本昔話 → 旅人ウマ
きょうの世界昔話 → コウノトリ
きょうの日本民話 → 一日おくれのショウブ売り
きょうのイソップ童話 → キツネとお面
きょうの江戸小話 → いしゃちがい

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5月5日の世界の昔話 スーホーの白いウマ

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5月5日の世界の昔話

スーホーの白いウマ

スーホーの白いウマ
モンゴルの昔話 → モンゴルの国情報

♪音声配信

 むかしむかし、モンゴルの草原に、スーホーという歌の上手な若者がすんでいました。
 スーホーはお母さんと二人で、ヒツジをかってくらしていました。
 ある日スーホーは、ヒツジに草を食べさせにいったきり、日がくれても帰ってきません。
 お母さんが心配していると、スーホーは生まれたての白い子ウマをだいて帰ってきました。
「まあ、きれいな子ウマだね。どうしたんだい?」
 お母さんが聞くと、スーホーはうれしそうにいいました。
「帰るとちゅうで見つけたんです。持ち主もやってこないし、母ウマもいないんです。夜になってオオカミにでも食われたらかわいそうだから、つれて帰ってきました。うちでかってやりましょう」
 スーホーは白い子ウマをとてもかわいがって、だいじにだいじに育てました。
 子ウマはどんどん大きくなり、やがて雪のようにまっ白な、りっぱなウマになりました。
 スーホーと白いウマは、なかのよい兄弟のように、いつもいっしょです。
 ある日のこと、村にすばらしい知らせがつたわりました。
 王さまが若者たちを集めて、競馬(けいば)大会をひらくというのです。
 そのうえ優勝したものは、王女のおむこさんにむかえられるというのでした。
 それを聞いた村の人たちはいいました。
「スーホー、いっておいでよ。おまえならきっと優勝できるよ」
 そしていよいよ、競馬大会の日がやってきました。
 国じゅうから、じまんのウマをつれた若者が集まりました。
 けれど、白いウマにのったスーホーにかなうものは一人もおらず、スーホーが優勝したのです。
「あの若者と白いウマを、ここへよびなさい」
と、王さまはいいました。
 スーホーは、大よろこびです。
 ところが王さまは、スーホーが貧乏(びんぼう)なヒツジ飼いだとわかると、王女のおむこさんにするのがいやになってしまいました。
 王さまは、つめたくいいました。
「その白いウマをおいていけ。そのかわりに、黄金三まいをおまえにやることにする」
 これを聞いたスーホーは、ビックリです。
(この白いウマは家族のようなものだ。それをお金で買おうなんて、なんてひどいことを)
 スーホーは、王さまの命令をことわりました。
 すると王さまは、顔をまっ赤にしておこり出し、
「王のいうことを聞かぬぶれい者め。この者をムチでたたくがよい」
 家来たちはスーホーを、ムチでピシピシうちました。
 キズだらけになったスーホーは見物席の外へほうりだされ、王さまは家来に白いウマをひかせて帰っていきました。
 スーホーは友だちに助けられて、やっと家に帰りました。
 ムチのために、すっかりボロボロになったスーホーは、何日もねたきりでした。
 でも、お母さんのひっしのかんびょうで、だんだん元気になりました。
 ある晩のことです。
 トントンと、門の戸をたたく音がしました。
「だれだい?」
 返事はありません。
「なんの音だろう?」
 外に出たスーホーはビックリ。
 白いウマが、門のそばにたっていたからです。
「お、おまえ、帰ってきたのかい」
 スーホーはかけよって、思わず白いウマをだきしめました。
 ところが白いウマの体には、何本ものするどい矢がつきささっているではありませんか。
「なんて、ひどいことを!」
 スーホーは夢中で矢をひきぬき、お母さんといっしょにキズの手当をしてやりました。
 けれど白いウマは、つぎの日、死んでしまいました。
 やがてスーホーは、白いウマがもどってきたわけを知ることができました。
 王さまは白いウマを手に入れたのがうれしくて、人びとをよんで酒もりをはじめました。
 ところが、おおぜいの人びとのまえで白いウマにのろうとしたとたん、白いウマは王さまをふりおとしてしまったのです。
 おこった王さまは、家来たちにむかってさけびました。
「あのあばれウマをつかまえろ。つかまらなければ、殺してしまえ」
 家来たちは、にげていく白いウマにむかって、雨のように矢をあびせました。
 それでも、白いウマは走ったのです。
 体に矢がささりながらも、なつかしいスーホーの家にむかって、死にものぐるいで走ったのです。
 白いウマは自分をかわいがり、育ててくれたスーホーのそばで死にたかったのでした。
 白いウマが死んでから、スーホーは悲しくて、くやしくて、夜もなかなかねむれない日がつづきました。
 そしてある日、スーホーは弓矢を取り出すと、その弓矢の手入れを始めました。
 白いウマのかたきをうつため、この弓矢で王さまを殺そうと思ったのです。
(白いウマよ、待っていろよ。あしたの朝、あの王さまを殺して、おまえのかたきをうってやるからな)
 その日の晩、スーホーのゆめの中に、白いウマがあらわれていいました。
「スーホーさん、わたしのかたきをうつことを決心してくれてありがとう。ほんとうにうれしいです。でも、もう、わたしは死んでしまっています。王さまを殺しても、わたしが生き返ることはありません。それどころか、あなたも殺されてしまうでしょう。どうか、かたきうちはやめてください。それより、ひとつお願いがあるのです。どうかわたしの体で琴(こと)をこしらえてください。わたしは琴になって、いつまでもあなたのそばにいます」
 つぎの日、スーホーは白いウマの骨としっぽをつかって、琴をつくりました。
 さおの先は、白いウマの頭のかたちをきざみました。
 やがてスーホーは、草原でヒツジのばんをしながら、いつもこの琴をひくようになりました。
 美しい琴の音と、むねにしみるそのしらべは、ほかのヒツジ飼いたちにとっても、このうえないなぐさめとなりました。
 スーホーの琴が聞こえてくると、みんなは一日のつかれをわすれて、じっとしずかにその音色に耳をかたむけるのでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → こどもの日
きょうの誕生花 → おじぎそう
きょうの誕生日 → 1968年 渡部篤郎 (俳優)


きょうの日本昔話 → ちゃくりかき
きょうの世界昔話 → スーホーの白いウマ
きょうの日本民話 → 食わず女房
きょうのイソップ童話 → カエルの医者とキツネ
きょうの江戸小話 → かしわの木

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5月4日の世界の昔話 サルの王さま

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 5月の世界昔話

5月4日の世界の昔話

サルの王さま

サルの王さま
インドの昔話 → インドの国情報

♪音声配信

 むかしむかし、インドのガンジス川のほとりに、たくさんの実がなった一本のマンゴーの木が生えていました。
 そのマンゴーの実のおいしさといったら、一度食べたら一生忘れられないほどです。
 ある時、サルたちがマンゴーの実を食べにやってきました。
「ああ、なんてうまい実だろう」
「こんなにおいしい実は、はじめてだ」
 むちゅうで食べているサルたちを見て、王さまザルは考えました。
(こんなにうまいマンゴーの実が川に落ちて、人間たちのところへ流れていったら、人間たちが取りに来るだろう。それはまずいな)
 王さまザルは、すぐにサルたちを集めて言いました。
「川の上にのびた枝になっている実は、1つ残らず取ってしまいなさい」
「はい、王さま」
 サルたちは、さっそくいわれたとおりにしました。
「よしよし、これで安心だ」
 ところがサルたちは、たった1つの実を見落としていたのです。
 その実はあまくうれて、ある日、ポタリと枝から川へ落ちました。
 マンゴーの実は、そのまま人間がくらしている町まで流れていきました。
「おや? これはこれは、実にみごとなマンゴーの実だ」
 漁師(りょうし)はマンゴーの実をアミですくい上げると、王さまのところへ持って行きました。
「ほう、これはすばらしい。こんなにうまいマンゴーははじめてだ」
 すっかり気に入った王さまは、家来を引き連れてマンゴーの木を探しに行きました。
 いく日かたって、王さまはついに、あのマンゴーの木を見つけました。
「あったぞ。すばらしい、あんなに実がなっている」
 王さまたちは、いそいでマンゴーの木にかけよりました。
 ところが木のそばまで行くと、たくさんのサルがマンゴーの実をおいしそうに食べているではありませんか。
「王さま、どういたしましょう?」
「むむ、サルのくせになまいきな。矢でうちおとしてしまえ!」
 家来たちはさっそく、サルたちめがけて弓矢を放ちました。
 それに気づいたサルたちは、王さまザルのところへ知らせに行きました。
「たいへんです! 人間たちが、私たちを殺そうとしています」
「あわてるな、わたしにまかせなさい」
 王さまザルはマンゴーの木に登ると、飛んでくる矢を長いしっぽと手を使って打ち落とし、仲間のサルたちを助けました。
「さあ、いまのうちに逃げなさい」
 サルたちは、つぎつぎに逃げていきましたが、みんなが逃げるまでは、まだ時間がかかります。
 やがて王さまザルのからだに何本も矢がささりましたが、王さまザルはがんばって、仲間のサルたちを守りました。
 それを見ていた人間の王さまは、家来たちに矢を打つのを止めさせました。
「まて、矢を打つのを止めるのだ。それより、あの王さまザルをここへ連れてきなさい」
 家来たちは、傷ついて動けなくなった王さまザルを連れてきました。
 人間の王さま、王さまザルにたずねました。
「なぜ、自分の体を痛めてまで、仲間を助けたのかね?」
 王さまザルは、苦しい息をはきながら答えました。
「わたしは王です。仲間のサルたちを守るのが、わたしのつとめです」
「おお、なんとりっぱなサルだろう。わたしも見習わなければ」
 感動した王さまは、王さまザルの手当をしてやると、マンゴーには一切手をつけず、そのまま自分の国へ帰っていきました。
 それからは、どんなときでも人びとの幸せを一番に考える、心やさしい王さまになりました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → みどりの日
きょうの誕生花 → やまぶき
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5月3日の世界の昔話 三人の糸つむぎ女

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 5月の世界昔話

5月3日の世界の昔話

三人の糸つむぎ女

三人の糸つむぎ女
グリム童話 →グリム童話の詳細

♪音声配信

 むかしむかし、あるところに、とてもなまけ者の娘がいました。
 娘は糸つむぎが大嫌いです。
 ある日、お母さんがむりやり糸つむぎをさせようとすると、娘は大声で泣き出しました。
 そのとき、この国の女王さまが、娘の家の前を通りかかりました。
 そして、女王さまがたずねました。
「どうして、この娘は泣いているのですか?」
 お母さんは、娘がなまけ者なのを恥ずかしく思い。
「はい。この子は糸つむぎが大好きで、いつも糸つむぎを止めさせようとすると泣くのです」
と、反対のことをいってごまかしました。
 すると女王さまは、
「そんなにはたらき者とは、感心な娘ですね。よろしい。城へ連れて行って、好きなだけ糸つむぎをさせてあげましょう」
と、娘をお城に連れて行ったのです。
 女王さまは、娘を糸つむぎ部屋につれていくと言いました。
「ここには三つの部屋があります。この三つの部屋一杯のアサを全部つむいだら、王子と結婚させてあげましょう」
(そ、そんなの出来ない。三百年かかっても無理だわ)
 一人残されて娘が泣いていると、どこからか、三人の不思議な女の人たちがあらわれました。
 1人は、平べったい大きな足。
 1人は、あごの下までたれ下がった長いくちびる。
 残りの1人は、バナナほどの大きな親指をしていました。
 三人は、娘に言いました。
「おまえを助けてあげよう。ただし、王子との結婚式にわたしたち三人を、おまえのおばとしてよんでくれるならね」
「ええ、約束するわ」
と、娘が言うと、三人はすぐに糸をつむぎ始めました。
 大きな足の女が糸車をふみ、長いくちびるの女が糸をなめてしめらせ、大きな親指の女がその糸を見事につむぎました。
 次の日、女王さまは部屋いっぱいにつみあげられた糸の山を見て、すぐに娘と王子の結婚式の準備に取りかかりました。
「王子や、こんなによくはたらく娘をお嫁さんにもらえて、本当に良かったわね」
「はい、お母さま」
「これからは、毎日お嫁さんに糸をつむいでもらいましょうね」
「はい、お母さま」
 女王さまも王子さまもごきげんでしたが、その言葉を聞いて娘の顔はまっ青になりました。
(ええ、毎日糸をつむがなければならないの! そんなことになったら、わたし死んでしまうかも)
 娘は糸を毎日つむぐぐらいなら、本当のことを話して、王子さまとの結婚はあきらめた方がいいと思いました。
「あの、王子さま。じつは・・・」
と、いいかけたところへ、あの三人の女があらわれたのです。
 王子は、その女たちのきみょうな姿にビックリして、三人にたずねました。
「なぜ、おばさまたちは、そんなに大きな足や、くちびるや、親指をしているのですか?」
「いつも、糸車をふんでいるからだよ」
「いつも、糸をなめるからだよ」
「いつも、糸をつむぐからだよ」
 三人の女の返事を聞くと、王子さまはさけびました。
「いつも糸つむぎをすると、そうなってしまうのですか!」
 三人の女たちは、ニッコリわらっていいました。
「そうだよ。王子さまの花嫁も、そのうちに、わたしたちのようなすがたになるでしょうね」
「それは大変だ! よし、花嫁には糸つむぎを一生させないようにしよう!」
と、言うわけで、糸つむぎのきらいな娘は、糸つむぎを一生しなくてもいいことになり、やさしい王子さまとしあわせにくらしました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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5月2日の世界の昔話 アリババと四十人の盗賊

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 5月の世界昔話

5月2日の世界の昔話

アリババと四十人の盗賊

アリババと四十人の盗賊
千夜一夜物語 → アラビアンナイトの詳細

♪音声配信

 むかしむかし、ぺルシアに、カシムとアリババという兄弟がいました。
 兄のカシムはたいそうお金持ちで、弟のアリババは貧乏(びんぼう)なきこりです。
 ある日、アリババがロバをつれて森へいくと、たくさんの馬の足音が聞こえてきました。
 見ると、馬に乗った男たちが近づいてきます。
(おそろしい顔をしている。きっと、悪いやつらにちがいない)
 アリババはロバをつれて、あわてて物かげにかくれました。
 そっと数えると、男たちは四十人います。
 やがて親分(おやぶん)が、岩のまえにたっていいました。
「ひらけ、ゴマ!」
 すると、大きな岩がスーとひらいたのです。
 男たちはほらあなの中に入ると、もっていた荷物をおいて、また出てきました。
「とじろ、ゴマ!」
 親分がさけぶと、岩はスーと、とじました。
 男たちは馬に乗ると、走りさっていきました。
「これはすごい、魔法(まほう)の呪文(じゅもん)で岩がうごくんだ」
 アリババは、さっそくまねをしてみました。
「ひらけ、ゴマ!」
 さっきと同じようにように、岩がスーとひらきました。
 ほらあなに入ったアリババは、目を見はりました。
「これはすごい! 宝の山だ! そうか、ここは盗賊(とうぞく)たちの宝のかくし場所なんだ」
 アリババは金貨(きんか)をロバにつむと、いそいで家に帰りました。

アリババとロバ

 その夜、アリババはカシムの家に、マスをかりにいきました。
(貧乏人が、何をはかるのだろう?)
 そう思ったカシムは、マスのすみっこに、こっそりとのりをぬっておきました。
 そしてアリババから返ってきたマスには、のりにくっついた金貨が一まいはりついていたのです。
 カシムは、すぐにアリババの家にいきました。
「おい、この金貨をどこで手に入れたんだ! 言わないと、役人にいいつけるぞ!」
 しかたなくアリババは、宝のありかを教えました。
(これはいいことを聞いた。よし、その宝をひとりじめにしてやろう)
 カシムはロバをひいて岩山へ出かけていくと、教えられたとおりに、
「ひらけ、ゴマ!」
と、いいました。
 スーとひらいた岩の中に入っていくと、そこには目がくらみそうなほどの宝が山づみにされています。
「そうだ、岩のとびらをとじてから、ゆっくりとふくろにつめこむとしよう」
 カシムが岩のまえで、
「とじろ、ゴマ!」
と、いうと、岩はスーととじました。
「よしよし、思うぞんぶん、宝をつめこむぞ」
 カシムは夢中で、宝をふくろにつめこみました。
 ところがたいヘんなことに、外に出ようと岩のまえに立ったのですが、出るためのおまじないをわすれてしまったのです。
「ひらけ、マメ。・・・ひらけ、ムギ。・・・ひらけ、トウモロコシ。・・・ひらけ、カボチャ」
 オロオロしているうちに、盗賊たちがもどってきてしまいました。
「こそドロめ、盗賊からドロボウするとはとんでもないやつだ!」
 カシムは、おこった盗賊たちに殺されてしまいました。

 よく似たお話しが、グリム童話にもあります。
→ ジメリのお山

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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5月1日の世界の昔話 ピーター・パン

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5月1日の世界の昔話

ピーター・パン

ピーター・パン
バリの童話

♪音声配信

 ある日の夜、とつぜんウェンディーのへやのまどから、男の子が飛びこんできました。
「あなたは、だあれ?」
「ぼくはピーター・パン。夢の国ネバーランドからむかえにきたんだ。さあ、いっしょにぼうけんに出かけよう」
 いっしょにいた弟のジョンとマイケルも、ぼうけんと聞いて大喜びです。
「ネバーランドって、どうやっていくの?」
「飛んでいくんだ。妖精(ようせい)のティン力ー・ベルの羽の粉をつけると、空を飛ベるんだよ」

ティンカー・ベル ピーターパン

「わあ、ほんとうだ。すごーい!」
「ネバーランドは、二つめの角を曲がって、あとは、どこまでもまっすぐのところさ」
 空高く飛んでいくみんなの目には、家がおもちゃのように小さく見えます。
 いくつもの夜が過ぎ、いくつもの朝がきました。
 とつぜん、ピーターがさけびました。
「みてごらん、あれがネバーランドだ。あの黒い船は、海賊船だよ。そしてあそこにいるのが、恐ろしいフック船長。むかし、フックは腕と時計をワニに飲みこまれたんだ。だからチクタク音をたててワニが出てくると、まっさおになって逃げ出すよ。アハハ」
 島では、子どもたちが待っていました。
「ピーター、お帰りなさい。・・・あれ、この人は、だあれ?」
 子どもたちがかけ寄ると、ピーターはいいました。
「ウェンディーだよ。ぼくたちのお母さんになってくれるんだ」
 ピーターの家は、地面の下にあります。
 せまいけれど、あたたかくて、すてきなところです。
 たっぷり遊んでつかれると、ウェンディーお母さんが、おやすみ前のお話しをしてくれます。
 昼間は、湖や森の探検です。
 でも、海賊船が、いつも遠くからながめています。
 それはフック船長が、子どもたちをねらっているからです。
 ある日、ウェンディーが言いました。
「パパとママに会いたいな。おうちに帰りたい」
「フン! 帰りたいなら、勝手にすればいい!」
 ピーターはすねて、どこかへ飛んでいってしまいました。
「ウェンディー、いっちゃ、いやだ!」
 子どもたちが、泣きだしました。
 その時、突然フック船長が現れたのです。
「フフフフフフッ。ピーターはおらんな。よし、野郎ども、子どもたちをつかまえろ!」
 子どもたちは、つぎつぎにつかまってしまいました。
「大変よ、ピーター。みんながつかまったわ」
 ティンカー・ベルが、大あわてで知らせました。
「よし。ワニになって、フックをおどかしてやる」
 チクタク、チクタク。
 ピーターは時計の音をたてながら、海に飛びこみ、泳ぎだしました。
「フフフフフフッ。もうすぐ、おまえたちは、海の底だ」
 後ろ手にしばられた子どもたちを見て、フック船長はごきげんです。
と、そこにふしぎな音が。
 チクタク、チクタク・・・・・・。
「ワ、ワッ、・・・ワニだあー!」
 フック船長は、あわてて隠れました。
 子どもたちが、こわごわ海をのぞいてみると。
「あっ!」
 船にあがってきたのは、ワニではなくてピーターでした。
 ピーターは、子どもたちをつぎつぎに助け出しました。
 もちろん、たいせつなウェンディーも。
「うぬぬ、ワニかと思えば、おまえだったか」
 おこったフック船長がピーターに飛びかかり、船の上ですさまじいたたかいがはじまりました。
 身の軽いピ一ターが、短剣をビュン!
 それをよけたフック船長が、バランスをくずして。
「うわああー!」
 フック船長は海で大口をあけていたワニに、パクリと食べられてしまいました。
 これで海賊船は、ピーターのものです。
 ティンカー・ベルが妖精の粉をかけると、海賊船はフワリと空に浮かびました。
 いくつもの夜が過ぎ、いくつもの朝をむかえ、船はウェンディーたちの家へと進みました。
 そしてようやく家へ着くと、ウェンディーたちは、まどから子どもベやに飛びこんで、待っていたお母さんにとびつきました。
「だまって出ていって、ごめんなさい。あたしね、ピーターとぼうけんに出ていたの」
 後ろをふりかえると、ピーターと海賊船は、もときたみちを帰るところでした。
 飛んでいくピーターを見送りながら、ウェンディーたちは少し悲しくなりました。

ピーターパン

 そんなウェンディーたちに、ピーターは明るく手をふると、
「ぼうけんをしたいときは、いつでもよんで。すぐにむかえに行くから。では、また会おう」
 ピーター・パンは、今もネバーランドに住んでいます。
 いつの日か、あなたのへやにも飛んでくるかもしれませんよ。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → メーデー
きょうの誕生花 → みつばつつじ
きょうの誕生日 → 1975年 本上まなみ (俳優)

きょうの新作昔話 → 田植え名人
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きょうの世界昔話 → ピーター・パン
きょうの日本民話 → おネズミがお死んでる
きょうのイソップ童話 → 像をこわした男
きょうの江戸小話 → なむあみだぶつ

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